
海外だけでなく、国内の投資家の間でも広がりはじめたサステナブル投資(ESG投資)。「気になっているけど実際にやったことがない」という方も多いのではないでしょうか。
本稿では、サステナブル投資を始めるきっかけになることを目的に、サステナブル投資とは何か、一般的な投資とは何が違うのか、具体的にどんな投資手法があるのか、などを解説していきます。
目次
世の中を席巻する「サステナブル」のキーワード
「サステナブル(「持続可能な」の意)」は今、注目されているキーワードの1つです。
2021年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付では「サステナブル商品」が東の横綱、つまり、直近でもっともヒット、注目された商品になるなど、「サステナブル」という価値観に多くの人たちが共感しています。このほか、サステナブルを冠したキーワードは数多くあり、「サステナブル住宅」「サステナブルファッション」「サステナブル経営」などが使われています。
今回テーマとする「サステナブル投資」も同様、ここ最近、国内の投資家の間で注目されています。サステナブル投資とは、「投資を通して社会や環境の持続的な発展」を目指すものです。
サステナブルというキーワードが、これほどまでに注目される背景にはSDGs(持続可能な開発目標)の浸透が大きいでしょう。 加えて、次のような要素も影響していると考えられます
- 環境重視の政策を進めるバイデン政権の誕生
- 日本政府が打ち出した「2050年温室ガス排出量実質ゼロ」
- 新型コロナウイルスの感染拡大によるライフスタイルの見直し
サステナブル投資の盛り上がりは一時のトレンドではない
このような世の中の盛り上がりを見ていると「サステナブル投資は一時のトレンドではないか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、日本の年金を運用するGPIFをはじめ、数多くの巨大ファンドがサステナブル投資を推進している実情見ると、この投資手法はスタンダードになっていると考えられます。さらにサステナブル投資は個人投資家の間でも急速に広まりつつあります。
GSIA(世界持続的投資連合)によると、2018年段階のグローバルのサステナブル投資残高は、2016年の22兆8,380億ドル(約2,500兆円)から30%以上増加。2021年7月に最新の投資残高が発表されますが、かなりの伸びを示しているのではないかと期待されています。
サステナブル投資が成長し続けている理由
ちなみに、サステナブル投資に近いニュアンスで使われているキーワードに「ESG投資」「インパクト投資」があります。それぞれの定義は以下の通りです。
名称 | 一般的な定義 |
---|---|
サステナブル投資 | 長期的な発展の持続可能性にフォーカスした投資戦略 |
ESG投資 | 環境(Environment)・社会(Social)・組織統治(Governance) に配慮している企業を重視して行なう投資戦略 ※ESG投資=サステナブル投資と解釈することもあります。 |
インパクト投資 | リターンに加えて社会的・環境的インパクトを生み出すことを目的にする投資戦略 |
定義の表現はそれぞれ違いますが、これら3つの投資手法に共通する要素は「環境・社会への影響」と「持続可能性」です。これほどまでにサステナブル投資が注目され、投資残高を増やしている理由については次の3つの理由が考えられます。
サステナブル/ESGに基づいた企業評価がリスクやリターンと関連しているという理解が深まっているから
企業に対して短期的なリターン創出ではなく、持続可能な活動による長期的なリターンを求めている投資家が増えているから
当局や規制において、投資判断にサステナブルの要素を組み込むケースが増えているから
なお、一般的な投資とサステナブル投資の大きな違いは、前者(一般的な投資)は財務情報をもとに分析・投資判断されるのに対し、後者(サステナブル投資)は非財務情報や無形資産も含めて投資判断される点にあります。
わかりやすくいえば、サステナブル投資の場合、結果的に大きなリターンを得られても環境・社会・組織統治の面で悪影響を及ぼした企業に投資をすれば、失敗したことになります。
サステナブル投資と富裕層の人たちの関係
富裕層の人々がサステナブル/ESG投資を率先すべき理由としては、資産運用に投じる金額が多いため、投資活動により社会や環境に及ぼす影響が大きいことが挙げられます。
富裕層の人たちがリターンのみを重視して投資をすれば、社会や環境に悪影響を及ぼす企業が成長して世界の持続可能性が危ぶまれる可能性があります。逆に、こういった企業への投資を控えて、社会や環境の持続可能性に貢献する企業に積極的な投資を行えば、世界の流れがよい方向へ変わってくる可能性があります。
個人投資家のサステナブル投資の主な選択肢
個人投資家向けのサステナブル/ESG投資商品の例としては以下のようなものがあります。
投資商品例1.サステナブル/ESGをテーマにしたファンド(投資信託)
最近では、サステナブル/ESGをテーマにした投資信託が増えています。2021年6月現在で純資産額の多い投資信託としては、バランス型の「アムンディ・サステナブル・インカム・ファンド」、先進国株式を中心に投資を行う「ブラックロックESG世界株式ファンド」、国内株式を中心に運用する「日本ESGオープン」などがあります。
サステナブル/ESGの関連銘柄を探したい方は、「サステナブル 投資信託」「ESG 投資信託」などのキーワードで検索・スクリーニングをしてみましょう。
投資商品例2.サステナブル/ESGに取り組む企業の株式投資
サステナブル/ESGに積極的に取り組む企業の株式に投資する方法もあります。ただし、企業が「サステナブル/ESGというテーマでどんなことに取り組み、どんな効果を上げているのか」については個人投資家では情報収集に限界があるため、公的あるいは民間の評価を参考にするのがよいでしょう。
公的な評価としては、環境省が主催する「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」があります。このアワードはESGに取り組む金融機関、環境サステナブル経営に取り組む国内外の企業を評価・表彰するものです。
また、民間の評価では、サステナ株式会社が運営する「SUSTAINA ESG AWARDS」があります。このアワードでは、ESGスコアと財務スコアを組み合わせた総合スコアで評価をして上位企業を表彰しています。
投資商品例3.再生可能エネルギーのインフラファンド(ETF)
個人投資家がはじめやすいサステナブル/ESG投資にETF(上場投資信託)のインフラファンドもあります。上場株式やJ-REITと同様、証券口座さえあれば東証市場が開いている間などに手軽に売買できます。
ETFのインフラファンドの大半が現時点では太陽光発電を中心に運用していますが、風力やバイオマスなどへの進出を表明しているファンドもあります。
ウォッシュ(見せかけ)企業への投資に要注意
サステナブル/ESG投資の株式投資で注意したいのは、「ウォッシュ企業に投資をしないこと」です。
ウォッシュ企業とは、SDGsやESGに取り組んでいると見せかけている企業のことです。ウォッシュ企業に投資をしてしまうと、見せかけが発覚したときに株価が暴落する可能性があります。
しかし、実際に個人投資家レベルでウォッシュを判別するのは難易度が高いでしょう。見せかけ行為だけでなく、ほかの分野ではしっかりSDGsやESGに取り組んでいても、一部の企業活動がサステナブルに反していれば糾弾されるケースもあるからです。
そのため、現時点でSDGsやESGへの取り組みが評価されている企業に投資をする場合でも、複数の企業に分散投資をするのがおすすめです。あるいは企業のリスクを避けるのであればETFの選択が無難でしょう。