リゾート地,地価
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国内リゾート地の2021年の公示地価は、インバウンド客(訪日客)の激減による影響で大半が停滞・下落などの逆境にあります。このような状況の中、長野県の白馬村と軽井沢町は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を感じさせない地価上昇を見せました。両町村の地価上昇の背景とコロナ収束後の行方を探ります。

目次

  1. 沖縄の平均地価は1974年以降、2番目に大きい下げ幅に
  2. 白馬村と軽井沢町ともに2021年公示地価(住宅地)が6%台のプラス
  3. 白馬村と軽井沢町の地価好調の背景を探る
    1. 白馬村の地価好調の要因 人気スキーリゾートとして投資が進む
    2. 軽井沢町の地価好調の要因 富裕層向けの幼小中一貫校の誕生で人口増加
  4. 白馬村は「ニセコに比べると割安感がある」との声も

沖縄の平均地価は1974年以降、2番目に大きい下げ幅に

新型コロナウイルス感染症拡大の影響でインバウンド客数が激減している状況が続いています。日本政府観光局(JNTO)によると、2021年5月のインバウンド客数は「2019年同月比で99.6%減」と凄まじい落ち込みを見せました。

このインバウンド客数の激減の影響を大きく受ける観光都市の1つが沖縄でしょう。地元メディアの Web 版「沖縄タイムス プラス(2021年3月24日付)」によると、沖縄県内の公示地価(全用途平均)は8年連続で上昇となったものの、前年のプラス10.9%からプラス1.2%と上昇率が大幅に鈍化しました。今回の上昇鈍化は「1974年の調査開始以降2番目に大きい下げ幅」とのことです。

一方、同じリゾート地でも地価が好調だったエリアもあります。その一例が長野県の白馬村と軽井沢町です。なぜ、これらの町村はインバウンド客数が激減したにも関わらず、地価が好調だったのでしょうか。

白馬村と軽井沢町ともに2021年公示地価(住宅地)が6%台のプラス

はじめに「白馬村と軽井沢町の地価がどれくらい上昇したのか」をデータで確認したいと思います。

まず白馬村の2021年の公示地価ですが、住宅地がプラス6.3%、商業地がプラス6.9%と新型コロナウイルス感染症拡大の影響を感じさせない上昇率を見せています。もう1つの軽井沢町の2021年の公示地価は、住宅地が白馬村に匹敵するプラス6.0%。商業地は大幅な上昇とまではいきませんが、それでもプラス2.7%になっています。

公示地価の2021年地価上昇率

市町村名 住宅地 商業地
白馬村 6.3% 6.9%
軽井沢町 6.0% 2.7%

出典:長野県「令和3年地価公示(長野県分)の概要」)

長野県のなかでも、この2つの町村の地価の上昇率は際立っています。大半の市町村の平均変動率がマイナスとなっており、地価が上昇している一部のエリアでも松本市0.1%、安曇野市0.2%など微増にとどまっています(いずれも住宅地の公示地価)。

白馬村と軽井沢町の地価好調の背景を探る

同じ長野県内の「地価が好調なリゾート地」の白馬村と軽井沢町。両町村に共通するプラス材料は、「地方への移住ニーズ」「国内回帰の観光客」などです。

一方、両町村には大きな背景の違いもあります。白馬村は「スノーリゾートとしての国際的な注目度」、軽井沢町は「富裕層向けの幼小中一貫校の誕生」が地価に大きな影響を与えていると考えられます。この部分にフォーカスすると、両町村のコロナ収束後の行方が考えやすくなります。

白馬村の地価好調の要因 人気スキーリゾートとして投資が進む

白馬村といえば、ニセコと並んで海外で認知度の高いスキーリゾートです。1998年の長野オリンピック会場としても知られています。国際的に知名度が高く、雪質がよいことからインバウンド客が数多く訪れ、それを見込んだ投資が進んでいます。

なお、2019年段階の白馬村など周辺3市村の10スキー場などから構成される「ハクババレー地域」のスキー場利用者は年間約135万人で、このうち約35万人がインバウンド客でした。

2021年の公示地価が好調だった白馬ですが、先行きを考えると未知数の部分もあります。「一般社団法人ハクババレーツーリズム」が2021年6月に発表した予測によると、周辺エリアを訪れるインバウンド客数が「2019年水準に回復するのは2025年頃」と見込まれています。

このように、直近の地価でみると好調な白馬も、スキーリゾートとしての本格的な復活はまだ先のため、「その間ずっと地価好調を維持できるのか」「新型コロナ感染の再拡大が起きたらどうなるか」などネガティブ要因もあります。

参考までに、同じ長野県内にある「Mt.乗鞍スノーリゾート」の売却検討が信濃毎日新聞(2021年6月9日付)に報じられるなど、新型コロナウイルス感染症拡大によるスキー場への影響ははかり知れません。

軽井沢町の地価好調の要因 富裕層向けの幼小中一貫校の誕生で人口増加

軽井沢町といえば、歴史のある富裕層の避暑地として知られています。加えて、新型コロナウイルス感染症拡大以前から「テレワークのできるリゾート」として首都圏にPRしていたこともあり、ワーケーションのできる場所としてメディア注目度が高まっています。

ただ、好調の地価を支える要因はワーケーションだけではありません。軽井沢町役場の担当者にヒアリングすると、「軽井沢風越(かざこし)学園の影響も大きいのではないか」とのことでした。

軽井沢風越学園は、楽天の創業メンバーだった本城慎之介氏が2020年4月に開校した幼小中一貫校です。小学校、中学校の年間の学費が70万円超(入学金20万円別)の設定を考えると、高額所得者または富裕層向けの学校の部類に入るでしょう。

この学校の開校は軽井沢町の人口増加にどれくらい貢献しているでしょうか。同校の2021年5月段階の生徒数は計263人。本城氏のインタビューを参考にすると、この約4〜5程度の子どもが家族とともに移住してきたと見られ、同校の開校が軽井沢町の人口増加に大きく寄与していることは間違いありません。

軽井沢風越学園が開校する直前の1年間で軽井沢町の人口は約500人増えていますが、このうちかなりの割合が学園の関係者や生徒、その家族と考えられます。

軽井沢町の地価の気になる点としては、商業地が住宅地ほど伸びていない(2021年公示地価ではプラス2.7%)ことが挙げられます。ただ、2021年5月に地元メディアで「コロナ収束後を見据えて、軽井沢周辺に有名店の新規出店や店舗拡充が検討されている」ことが報じられており、2021年後半以降の動向が期待されます。

白馬村は「ニセコに比べると割安感がある」との声も

このように、同じ長野県内の「地価好調のリゾート地」である白馬村と軽井沢町でも、背景が大きく違うことがご理解いただけたと思います。さらに、この背景の違いによって、コロナ収束後の見方も変わってきます。

端的にいえば、白馬村は「新型コロナウイルス感染症拡大の状況」や「インバウンド客がどのタイミングで戻るか」などの不確定要素が大きいため先読みしにくい面があります。対極的に、軽井沢町は「新設された学校による人口流入」「それに伴う住宅需要の高まり」など実需の要素が大きいため、先読みしやすい面があります。

このことを表すように、白馬村と軽井沢の公示地価(住宅地)を2020年と2021年で比較すると以下のように対照的な結果になっています。

市町村名 2020年 2021年 増減率
白馬村 10.4% 6.3% マイナス4.1%
軽井沢町 5.2% 6.0% プラス0.8%

出典:長野県「令和3年地価公示(長野県分)の概要」

ただし、地価上昇のペースが鈍化してきた白馬村も今後の地価動向を考えると、「投資妙味がある」との声もあります。スキーリゾートとして認知度の高いニセコなどと比べると、不動産に割安感があるといわれ、日本経済新聞(2021年3月25日付)では白馬について「インバウンド向けの投資が再び本格化すればさらなる上昇も見込める」と述べています。

インバウンド客に支えられてきた観光地やリゾートは、多かれ少なかれ白馬村と同じような状況にあるでしょう。「どのタイミングでインバウンド客が戻るか」を注視しながら、地価動向、不動産マーケットに向き合っていきましょう。