ESG投資
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コロナ禍で広がった賃貸物件の用途に「ゴーストレストラン」や「サテライトオフィス」などがあります。

これらの新しい賃貸物件の用途は一時的なブームで終わるのではなく、引き続きマーケットが拡大していく公算が大きいです。その理由をマーケット予測やアンケート結果などをもとに確認していきます。

目次

  1. 2020〜2021年、認知が広がったゴーストレストランやサテライトオフィスなど
  2. ゴーストレストランなどのニーズがさらに高まる理由
    1. 通常期の約1.9 倍の閉店数…運営コストの抑えやすいゴーストレストランは有利
    2. フードデリバリーサービス市場は直近6年で約 2.4 倍に拡大
  3. サテライトオフィスなどのニーズがさらに高まる理由
  4. ゴーストレストランなどに用途転換したほうがよい賃貸物件の条件は?

2020〜2021年、認知が広がったゴーストレストランやサテライトオフィスなど

新型コロナウイルス感染症拡大によって、賃貸物件の用途に大きな変化が生まれています。賃貸物件のこれまでの用途としては、住宅であればアパートやマンション、商業ビルであればテナント、オフィスビルであれば企業への賃貸というのが一般的でした。

それがコロナ禍によって、「新しい飲食業態に対応する空間」と「新しい働き方に対応する空間」などの用途が広がっています。それぞれいくつかの業態がありますが、定義は次の通りです。

新しい飲食業態に対応する空間

業態 定義
ゴーストレストラン フードデリバリーサービス専門の業態
クラウドキッチン ゴーストレストランの集合体の飲食施設
シェアキッチン 1つの厨房を複数の料理人でシェアする飲食施設

※日本経済新聞の定義をもとに作成

新しい働き方に対応する空間

業態 定義
サテライトオフィス 本拠地と違う場所に設置されたオフィス
シェアオフィス 複数の個人や企業がフリーアドレス形式で利用できるオフィス
コワーキングスペース 様々な属性の人が刺激し合う共創の場

※総務省やウィワークなどの定義をもとに作成

このように賃貸物件の新しい用途が広がった一因は、コロナ禍で通常のオフィスや飲食店のニーズが急減したからでしょう。その代わりに、ゴーストレストランやサテライトオフィスなどのニーズが生まれ、用途変換が進んでいるというのが大きな流れです。

具体的に、用途転換には主に2つの方法があります。1つ目は、オフィスビルやテナントビルの空室をゴーストレストランやサテライトオフィスなどで埋める方法です。大半のケースはこちらになります。

そしてもう1つは、築古マンションなど住居の空室をサテライトオフィスなどに用途転換する方法です。こちらのケースはまだ少数ですが、収益が大幅に改善されるメリットがあるため拡充していく可能性もあります。

このような新しい飲食業態や働き方に対応する用途転換は、一時的なブームではなく2022年以降も広がっていく公算が高いです。その理由となる市場予測やアンケート結果を確認していきましょう。

ゴーストレストランなどのニーズがさらに高まる理由

新しい飲食業態(ゴーストレストラン、シェアキッチン、クラウドキッチンなど)の賃貸ニーズは、直近で見ても2022年以降で見てもニーズが高まる可能性が高いです。

通常期の約1.9 倍の閉店数…運営コストの抑えやすいゴーストレストランは有利

まず、直近で見ると、飲食業界自体がコロナ禍によって疲弊していることが大きいでしょう。これにより、通常の飲食店の継続・新店開設などが難しいため、運営コストを抑えられるゴーストレストランなどへの転換が進みやすいと考えられます。

日本経済新聞が2021年6月に実施した飲食業調査によると、2020年の閉店数は5,230店でした。これは2019年(通常期)の約 1.9 倍であり、リーマンショック時の2008年を大きく上回る数になっています。飲食業界はコロナ禍で疲弊しており、新店などへの設備投資額が大幅減少していることも同調査で確認されています。

なぜ、ゴーストレストランやシェアキッチンだと運営コストを抑えやすいのでしょうか。

一般的な飲食店は、人通りの多い立地や路面店など賃料の高い場所に入らないと集客が難しいのが実状です。しかし、ゴーストレストランであれば、人通りの少ない賃貸物件の2階以上でも経営することができます。

またシェアキッチンは、複数の料理人で店舗を共有するため、おのずと賃料が下がります。昼のみ、夜のみなど時間帯ごとに借りるケースも多く、運営コストを大幅に圧縮することも可能です。

フードデリバリーサービス市場は直近6年で約 2.4 倍に拡大

長期的な視点で見ても、ゴーストレストランなどの新しい飲食業態は拡大していく公算が大きいです。理由はフードデリバリー市場が大きく成長していくと見込まれているからです。

日本能率協会総合研究所が2021年4月に発表した「フードデリバリーサービス市場規模・予測」によると、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年段階で1,700億円だったフードデリバリーサービス市場は、2022年には2倍近くに迫る3,300億円規模に拡大。さらに2025年には4,100億円規模まで成長していくと見込まれています。これは2019年と比較すると約2.4倍の市場規模になります。

出典:日本能率協会総合研究所「フードデリバリーサービス市場規模・予測」
(画像=出典:日本能率協会総合研究所「フードデリバリーサービス市場規模・予測」)

ほかの調査では、フードデリバリーサービス市場がもっと大きな規模になっていることを示すデータもあります。調査会社のエヌピーディー・ジャパンでは、2020年のフードデリバリー市場規模を6,264億円と試算しています。これは前年比で約50%増の急拡大です。

フードデリバリーサービス市場拡大の懸念材料としては、手数料が高く飲食店の負担が重いことが指摘されてきました。しかし、出前館とウーバーイーツの2強に加えて、新規参入が相次いでいるため、競争激化によって手数料の負担が緩和してマーケット拡大に弾みがつく可能性もあります。

なお、後発の新規参入組には、アメリカでシェアトップのドアダッシュ、北欧系のウォルト、中国系のディディなどがあります。

サテライトオフィスなどのニーズがさらに高まる理由

新しい働き方に対応する用途(サテライトオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなど)についての関連データを見ていきましょう。

はじめにコロナ禍で「テレワークがどれくらいオフィスワーカーに広がったのか」を確認します。ザイマックス総研が2020年11月に発表した「首都圏オフィスワーカー調査2020」では、「完全テレワーク(6.4%)」と「両方使い分けている(56.3%)」を合わせると6割超になります。この割合が高いか低いかについては議論の余地がありますが、一定割合に広がったといえるでしょう。

ただ、「コロナ禍が収束したらオフィスに大勢が集まる働き方に戻るのではないか?」との意見もあります。これについては短期的には揺り戻しがあると思われますが、長期的にはテレワークは今後も普及する可能性が高いと考えられます。

現在、グーグルやフェイスブックなどのグローバル企業はテレワークや在宅勤務を推奨する環境づくりを進めています。この戦略については「優秀な人材を獲得するため」という目的もあり、グローバル企業との採用競争から国内の大手企業、さらには中堅企業もテレワークや在宅勤務を導入・定着させる流れが強まっていく可能性があります。

ただ、日本の狭い住環境だと「在宅勤務がしにくい」との声も目立つことから、サテライトオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなどの潜在的なニーズはかなりありそうです。

「首都圏オフィスワーカー調査2020」では、在宅勤務をしている人のうち半数以上が「運動不足になりやすい(56%)」「仕事のオン・オフが切り替えづらい(50.7%)」といったデメリットをあげています。

ゴーストレストランなどに用途転換したほうがよい賃貸物件の条件は?

ここまで見てきたように、ゴーストレストランやサテライトオフィスなどの賃貸物件の新しい用途は可能性を秘めています。ただし、誤解していただきたくないのは通常の賃貸物件の用途は、コロナ前も後も「従来のオフィス、飲食店、住居などが中心」ということです。

ゴーストレストランやサテライトオフィスなどのための空間に用途転換したほうがよいのは、「十分な賃料がとれなくなった」「長期空室が増えている」といった事情を抱えた賃貸物件に限ります。このような逆境にある賃貸物件にとっては「大きなビジネスチャンスが到来している」といえるでしょう。