J-REIT
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「持ち株が値上がりする株式の醍醐味も魅力だが、不動産の安定感も捨てがたい」。そんな投資家に人気なのが、株と不動産のメリットを兼ね備えたJ-REIT(上場不動産投資信託)です。株式とどのような共通点があるのでしょうか。J-REITの魅力である高利回りの理由と併せて解説します。

目次

  1. J-REITとはどんな投資商品か
  2. 回復基調強まるJ-REIT市場
  3. J-REITは株と不動産の魅力を併せもっている
    1. 利益還元
    2. 優待制度
    3. 総会
    4. 自社株買い
    5. TOB(公開買い付け)
  4. J-REITの魅力は高利回り
  5. J-REITが高利回りなのには理由がある
  6. J-REITの重要投資指標「NAV倍率」とは何か
  7. J-REITの物件を見る方法
  8. J-REITにデメリットはあるのか?
  9. 海外投資家が日本の不動産を狙っている?
  10. J-REIT市場の今後の見通し
  11. 新規上場銘柄「東海道リート投資法人」の概要
  12. J-REITの保有が現物不動産投資へのモチベーションアップにつながる

J-REITとはどんな投資商品か

J-REITとは、東京証券取引所に上場しているREIT(不動産投資信託)のことをいいます。REIT(Real Estate Investment Trust)は米国で生まれた不動産投資信託で、日本(Japan)で販売される上場REIT と区別するためJ-REITと呼んでいます。

上場しているので株式と同じように売買することができ、投資家から集めた資金で不動産投資を行い 、物件の運用で得られる賃料収入や売却益を投資家に分配する投資商品です。

J-REITは1口あたりの分配金が高水準なため投資口価格が高く、最も安い銘柄でも2万円以上します。そのため株式の売買単位が100株なのに対し、J-REITは1口から売買できます。

回復基調強まるJ-REIT市場

東京証券取引所に上場しているREIT全体の値動きを示す「東証REIT指数」が上昇を続けています。日経平均株価が3万円を超えてから足踏みが続いているのとは対照的に、J-REITは一本調子に値上がりしています。これまで株式に比べて割安にあったことで修正買いが入ったという側面があるようです。

出典:Kabutan
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東証REIT指数は、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2020年2月21日には2255.72ポイントを付けていました。ところがコロナショックによって起こった株式市場の暴落と歩調を合わせるように急落し、2020年3月19日に1138.04ポイントと実に半値近くまで売り込まれました。

その後は日米の株式市場の反騰とともに上昇局面に入ります。しかし、オフィス空室率の悪化もあり一時低迷を余儀なくされました。それが2020年の年末から上昇局面に入り、2021年6月9日には2167.78ポイントとコロナ前の高値まであと少しという水準まで回復しています。高値奪回は時間の問題でしょう。

J-REITは株と不動産の魅力を併せもっている

J-REITは株式と同じようなメリットがたくさんあります。いわばJ-REITは株式と不動産の魅力を併せ持った投資商品といえるのです。項目別に比較してみましょう。

利益還元

株式の代表的な利益還元は配当金ですが、J-REITの投資主には分配金が支給されます。株式は業績悪化により無配になる銘柄もありますが、J-REITはおもに家賃収入から分配金を支払うという性質上、無配銘柄はありません。単にインカムゲインを目指す場合は確実に分配金収入が見込める点でJ-REITのほうが有利といえそうです。

優待制度

個人投資家に人気の高い「株主優待」ですが、J-REITにも「投資主優待」という制度があります。株式会社が行う株主優待はさまざまな業種の企業が行っているため優待内容が多彩ですが、J-RETの投資主優待は不動産という性質上、ホテル宿泊料金割引や、有料老人ホームなどの入居金割引など優待内容が偏っているのがデメリットです。優待を目的に投資するメリットは少ないといえます。

総会

「株主総会」への出席は個人株主にとって楽しみの1つですが、J-REITの投資法人も「投資主総会」を開催しています。製造業の企業では株主総会で自社製品をお土産に配布するケースがありますが、J-REITは企業ではないので、自社製品の配布は期待できません。

自社株買い

米国市場では自社株買いは有力な株主還元として頻繁に行われています。自社株買いが行われると市場の流通株式が減り、1株あたりの利益が向上します。自社が購入した株式には配当金を支払う必要がないため、株主への増配余地が増えることになります。

J-REITで自社株買いに相当するのが「自己投資口の取得」です。2017年6月に「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」が初めて自己投資口の取得を行いました。発行済み口数の1.23%にあたる1万口を上限に実施しています。購入後に償却することで投資口あたりの分配金引き上げや、需給の改善につながる効果が期待されます。

J-REITは取得した投資口を相当の時期に処分または償却しなければならないと投信法第80条2項で規定されているため、株式会社のように金庫株として保管しておくことはできません。そのような事情からJ-REITの自己投資口の取得は確実に1口あたりの価値が上がるので、投資家としては歓迎すべき施策といえます。

TOB(公開買い付け)

株式市場ではTOBが行われるのは珍しくありません。TOBでは買い手が市場よりも高い株価で買い取るため、提示した株価にサヤ寄せして価格が急騰する場合が多く見受けられます。

持ち株がTOBされてストップ高になることもあるので、株式投資のメリットの1つといえます。ただし、TOBされた株式は一定期間後に上場廃止となり、売買できなくなるため注意が必要です。

これまでJ-REITでTOBが行われる例はありませんでしたが、後で紹介するスターウッド・キャピタル・グループによる「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」へJ-REITで初めてTOBが行われ話題となりました。

TOBが行われればJ-REITでも価格上昇のメリットを受けることができますが、上場廃止のデメリットも同じくあることを心得ておく必要があります。

以上のようにJ-REITは株式投資に極めて近い投資商品といえ、単純な相場の動きだけで利益を上げるしかない金投資、FX(外国為替証拠金取引)、暗号通貨(仮想通貨)などとは大きな違いがあります。

J-REITの魅力は高利回り

J-REITの最大の魅力は分配金の高利回りです。2021年6月11日時点の日経平均配当利回りが1.83%なのに対し、J-REITの平均分配金利回りは3.32%(2021年6月11日時点)あり、下表のように利回り上位10銘柄は4%を超えています。特筆すべきは上場されている61銘柄のうち、57銘柄が日経平均配当利回りを上回っていることでしょう。

利回りが高い銘柄は、長期投資を目指す投資家にとって落ち着いて投資できるメリットがあります。例えば、利回り5%の銘柄を10万円保有して5,000円の分配金を得られる場合、9万5,000円までの下落は容認できるため、目先の下落で慌てて売却することがなくなります。

一時的に下落した銘柄もやがて価格が回復するため、買値を上回れば分配金利回りと運用利回りで二重の利益を享受できるでしょう。

【総合利回りの計算例】買値10万円、利回り5%の銘柄が10万5,000円に値上がりした場合
・分配金 5,000円÷10万円=5%
・含み益 (10万5,000円-10万円)÷10万円=5%
・総合利回り 5%+5%=10%

▽J-REIT高利回り上位10銘柄(2021年6月11日時点)

順位 銘柄 利回り
1 3451 トーセイ・リート投資法人 5.04%
2 3470 マリモ地方創生リート投資法人 4.96%
3 3476 投資法人みらい 4.85%
4 3492 タカラレーベン不動産投資法人 4.84%
5 2971 エスコンジャパンリート投資法人 4.80%
6 3468 スターアジア不動産投資法人 4.78%
7 3453 ケネディクス商業リート不動産投資法人 4.74%
8 3488 ザイマックス・リート投資法人 4.62%
9 3290 Oneリート投資法人 4.49%
10 3455 ヘルスケア&メディカル投資法人 4.43%

J-REITが高利回りなのには理由がある

J-REITが高利回りであるのには特別な理由があります。J-REITは株式会社ではなく投資法人であるため、税金を免除されているのがその理由です。

ただし、免除には条件があり、「当期利益の90%以上を投資家に分配することで税金が免除される」という仕組みになっています。株式会社の場合は会社が税金を払ったあとの残りから配当金が支払われるのに対し、J-REITでは法人税がかからず全額を分配金に回せるため高利回りになるのです。

したがって、J-REITは企業のように内部留保として利益を貯めこむことがありません。利益に応じてきちんと投資主に還元されるので安心して投資することができます。その意味でJ-REITは当たりはずれが少ない投資商品といえます。

J-REITの重要投資指標「NAV倍率」とは何か

分配金利回りに次いで重要なJ-REITの投資指標に「NAV倍率」があります。NAVとは、不動産の含み益を考慮した純資産価値のことです。株式投資の重要指標であるPBR(1株純資産)と似た指標といえます。NAV倍率が1倍以下なら割安、1倍以上なら割高と判断することができます。

純資産に対する割安度を測る指標として役に立つPBRとNAVですが、純資産の価値において異なる部分があります。「1株(1口)あたり純資産」とは、その企業(ファンド)が解散した場合に換金して株主(投資主)に分配される数値を表します。したがって、1倍以下で購入していれば万一解散しても損はしない計算になります。

ところが、株式会社が保有する資産のなかには売却できない不良資産も存在するため、解散価値に誤差が生じる場合があります。

一方のJ-REITは、保有している資産のほぼすべてが現実に稼働している収益不動産であるため、仮に投資法人が倒産した場合でも資産をすべて売り払うことができます。同じ純資産でも確実に換金できるという意味でNAVのほうが指標としての信頼性が高いといえるのです。

J-REITの物件を見る方法

投資家にとって、投資したいJ-REITがどのような物件を保有しているのか気になるところでしょう。保有している物件は簡単に見ることができます。東京証券取引所が製作している「投資物件を見て分かるJリート投資の魅力」という動画がYouTubeで公開されており、各投資法人が保有する代表的な物件をレポートしています。

動画では原則として2つの物件レポートと、投資法人代表者による事業方針などが紹介されるので、投資を考えているJ-REITがあれば、あらかじめ視聴してみるとよいでしょう。

もちろん、現地に出向いて物件を直接視察する方法もあります。ただ、商業ビルやホテルは問題ありませんが、オフィスやマンションは物件によっては内部の視察が難しい場合があるので注意が必要です。

J-REITにデメリットはあるのか?

デメリットを探すほうが難しいJ-REITですが、1つ挙げれば値下がりリスクがあることです。現物不動産の場合、家賃が暴落することはほとんどありません。新型コロナウイルス感染拡大によるコロナショックがあったときも賃貸マンションの家賃には影響がありませんでした。

東京カンテイの「市況レポート」によると、2020年1月の首都圏マンション平均賃料は2,874円/㎡でしたが、半年後の7月の賃料は3,101円/㎡と、むしろコロナ前よりも高くなっています。オフィスビルの空室率が悪化したのとは対照的です。

しかし、先に紹介したようにJ-REITは株式と同じように大幅な下落を余儀なくされました。やはり生活必需品の「居住用不動産」と、オフィスビルの保有が多いJ-REITでは影響の受け方がまったく異なることがわかります。一般的に個人投資家が行う不動産投資の対象はマンションですので、現物不動産投資の安全性を改めて確認できた出来事ともいえます。

海外投資家が日本の不動産を狙っている?

2021年4月、J-REIT「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」に対し、米国の資産運用会社、スターウッド・キャピタル・グループがTOBを実施しました。買付価格は2万円です。

海外の投資ファンドがTOBを仕掛けたのは、海外投資家が日本の不動産に関心を持っているという背景があります。不動産はインフレヘッジに最適なので、割安に放置されているJ-REITをポートフォリオに組み入れる動きが広まっているという見方もあります。

スターウッド・キャピタル・グループが出したTOBの成立条件は、同社が保有する投資口とTOBに応募した投資口を合わせて全投資口の2/3以上になることです。買付価格の2万円という金額は「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」の2020年10月期の1口あたりNAVにあたる1万7,684円より13.1%プレミアを加えた数字になっています。

しかし、このTOBはかなり難航しており、公開買い付け期間は2021年5月24日まででしたが、投資法人側のプレスリリースによると、2021年6月11日現在でまだ決着していません。

「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」の2021年6月11日現在の投資口価格は2万2,510円となっており、当初の提示価格を上回っています。これはスターウッド・キャピタル・グループが買付価格を2万2,500円に引き上げたことにサヤ寄せしたためです。

J-REIT市場の今後の見通し

好調が続くJ-REIT市場ですが、このままさらに上昇を続けるのでしょうか。世界各国は金融緩和で金余りの状態が続いており、J-REIT市場にも余剰資金が向かっているとみられています。東京証券取引所の資料によると、2021年3月には外国人投資家がJ-REIT市場で810億円を超える買い越しを行っています。

J-REITは大半が半年ごとに決算を発表していますが、業績予想も当期と次期をまとめて公表します。投資家としては見通しを立てやすいのも買いを集めている要因です。

株式会社の業績予想開示が5月頃から行われるため、先に見通しが出されているJ-REITが先行して買われているという事情もあるようです。J-REITはビジネスモデルが不動産を貸し出して賃料を得るというスタイルで共通しているため、ネガティブサプライズが少ないことから、今後も緩やかな上昇が期待できます。

ただし、度重なる緊急事態宣言により賃貸収益の落ち込みがこれから表面化する可能性もあることから、業績予想の下方修正や分配金の減額リスクがないとはいえません。また、価格が上昇して分配金利回りが低下するとJ-REITの魅力が薄れるため、利回りの動きに注意して投資に臨むことが大事です。

新規上場銘柄「東海道リート投資法人」の概要

2021年はJ-REITの新規上場があり、注目されています。「2989 東海道リート投資法人」は、名前の とおり東海道地域および東海道周辺地域に着目し、産業が集積する静岡を中心に重点投資する総合型のリート投資法人です。

物件は愛知・三重・静岡の3県に取得予定価格で303億3,000万円規模のポートフォリオを構築しています。メインスポンサーはJASDAQ上場企業のヨシコンです。ほかに静岡銀行、中部電力ミライズなどがスポンサーとして参加しています。上場日は2021年6月22日、売出価格は10万円です。

特定地域を投資エリアとして運用する総合型REITとしては、これまでに関西を主体とする「阪急阪神リート投資法人」や九州が主体の「福岡リート投資法人」が上場していますので、比較して判断するのも1つの方法です。

J-REITの保有が現物不動産投資へのモチベーションアップにつながる

J-REITの大きな魅力は、個人で購入することが難しい都心のビルや一棟マンションを間接的に保有できることです。たとえ1口であってもオーナーには違いありません。

家賃収入(分配金)を得ることもでき、総会に出席して事業について質問することもできます。オーナーを擬似体験することによって、将来の現物不動産投資に対するモチベーションが上がるかもしれません。

投資主に送付される「資産運用報告」(株式会社の「株主通信」に相当するもの)を見ると、賃料収入による不動産投資の安定感を実感できることでしょう。J-REITは10万円以下から手軽に購入できるので、不動産投資の入門編として投資を検討するのもよいのではないでしょうか。

※本記事は2021年6月11日時点の情報を基に構成しています。J-REITの魅力について紹介するものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。