新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

低金利が長期化していることに伴い、金融商品においては各種の外貨建てのものが多く見られるようになってきています。しかし、実際に投資をする側においては、外貨建て商品で運用することのリスクを十分に理解しておらず、こんなはずではなかったと後悔するケースも後を絶ちません。

外貨建て商品に投資する際に心がけておくべきリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。

外貨建て商品への投資の基本的な考え方 

外貨建て商品に投資する際に気をつけたいポイント
(画像=cassis/stock.adobe.com)

外貨建て商品だけではなく、全ての投資に通用する考え方の一つに「分散」があります。外貨建て商品を購入する際はリターンのみに注目していることが多く、そのため投資する商品が偏り、ハイリスクな投資になってしまうケースが見られます。

外貨建て商品への投資を行う際は、投資全体の利回り(リターン)アップを目的とすると同時に、いかにリスクを軽減するかを意識することを忘れない点が一番重要なポイントといえます。

外貨建て商品におけるリターンとリスク 

外貨建て商品に投資する際に知っておきたいリターン、そしてリスクには以下のものがあります。

外貨建て商品投資におけるリターン

外貨建て商品におけるリターンは、

  1. キャピタルゲイン
  2. インカムゲイン

の2つです。

キャピタルゲインとは、その商品を売却することで得られる利益のことです。外貨建て商品の価格は日々変動していますので、安い時に購入し、値上がりした時に売却することで値上がり益を得ることができます。

そしてもう一つのリターンであるインカムゲインとは、その外貨建て商品を保有している間に得ることができる利益のことをいいます。例えば外国株式によって得る配当金や、海外の債券を保有することによって得られる利子などがあります。

外貨建て商品投資におけるリスク

通常、投資におけるリスクには、

  1. 価格変動リスク(株式など)
  2. 金利変動リスク(債券の価格変動など)
  3. 流動性リスク(取引ができない、もしくは通常よりも低い価格での取引など)
  4. 信用リスク(保有している株の会社の倒産など)

といった主なリスクが存在します。
そして外貨建て商品に投資する際には、さらに以下のリスクがあることを理解しておく必要があります。

・為替変動リスク
・ソブリンリスク
・カントリーリスク

為替変動リスクとは、円とその外貨との為替相場が変動することにより、保有している外貨建て商品の価格に影響が出ることです。つまり通常の円だけの投資では発生しない、外貨建て商品ならでは価格の変動が発生するということです。

ソブリンリスクとは信用リスクの一つで、国家(国)や地域に対するもので、国債や政府機関などが発行する債券の格下げやデフォルト(債務不履行)についてのリスクをいいます。また、カントリーリスクとは投資先が民間であっても、ソブリンリスクによって債務不履行に陥るリスクです。

大暴落が起こり大きな損失を負うリスクも 

為替変動や高金利などにより、リターンが大きくなる可能性があることに魅力を感じる投資家も多い外貨投資ですが、当然その分リスクは大きくなります。さらに上記のリスクは複雑に絡み合って連動しているため、時として暴落などが起こり大きな損失に繋がる恐れがあることに注意しておく必要があります。

アルゼンチン債の債務不履行

2020年に史上9回目のデフォルト(債務不履行)を起こしたアルゼンチンですが、2001年にデフォルト(債務不履行)を起こした際には日本の個人投資家の多くがアルゼンチン国債を購入していました。理由は円建てであるサムライ債であり、国家の破たんはあり得ないと考える人が多かったためだと言われています。

後日、債務再編が実施され交換債券が発行されましたが、旧債券の取得価額を100とすると、交換により取得する新債券発行時の時価は20とされました。

当時はFX取引などで直接アルゼンチンペソの為替売買を行う個人投資家はまだいませんでしたが、当然のことながら、当時アルゼンチンペソも為替市場で暴落していました。このアルゼンチン債はサムライ債(円建て商品)でしたが、高金利が魅力に見えるマイナー通貨建ての外債は現在も多く販売されています。

ここでいうマイナー通貨とは、南アフリカランドやトルコリラなど流通量の少ない通貨のことで、逆に外国為替市場での流通量が多い米ドル、ユーロ、円、ポンド、スイスフラン、オーストラリアドル、カナダドルなどはメジャー通貨と呼ばれることも知っておきましょう。

高利回りの新興国の国債

新興国が高金利の国債を発行しているような場合、その背景には「インフレ気味である」、「財政状況が良くない」、「場合によっては政情が不安である」などということもありえます。国として借金が必要な状況だと、その国債における元本保証や利払いに関する能力の格付けであるソブリン格付けも低めとなり、おのずと高金利になります。

急激にインフレが進行することを防ぐために急な利上げをすることもあり、そうした利上げは「悪い利上げ」といわれます。先進諸国が景気回復期の利上げ(良い利上げ)をする理由とは異なることが多いことも覚えておきましょう。

マイナー通貨への投資は特に注意

上で述べたソブリンリスクの高い国の通貨であるマイナー通貨は、ソブリンリスクに係わる出来事(戦争や政情不安など)があればたちどころに急落し、最悪、値が付かなくなる恐れがあります。そのようなリスクがあるにもかかわらず、外国株式に比べれば安全であることや、債券なので満期を迎えれば満額戻るから安心というイメージで保有してしまうこともあるでしょう。

しかし、満期時に為替レートがどうなっているのか、そもそもきちんと満期を迎えられるのか、というリスクは米ドル建てやユーロ建て、かつ高格付け債のものとは大きく異なるため、「外国債券」とひとくくりにしないよう注意したいところです。

為替ヘッジの活用 

外貨建て商品におけるさまざまなリスクを少しでも回避する方法として、「通貨の分散」、「商品の分散(株式、債券、投資信託など)」なども効果がありますが、為替リスクについてはそのリスクを抑える方法に「為替ヘッジ」があります。

為替ヘッジとは?

為替ヘッジとは、為替予約や為替スワップ取引、通貨オプション取引などにより為替変動リスクを回避することを目的として行われるものです。外貨預金で為替予約がつけられるものもありますが、一般的には投資信託などの「為替ヘッジ付」となっている商品を購入することでその恩恵を受けることができます。

為替ヘッジの仕組み

では、簡単に為替ヘッジの仕組みについて説明します。以下の条件(分かりやすくするため、実際の市場レートからは乖離したレートを例に考えます)を前提とし、仮定の数値で試算してみましょう。

(条件)
米ドル円直物為替レート=100円
市場における1年物金利=日本:0%、米国:1%

(試算例)
10,000円を円と米ドルに1年間預金(税金などは一切考慮しません)
現在 10,000円  → 1年後 10,000円
現在  100ドル  → 1年後  101ドル

1年後に為替レートが現在と同じ1米ドル=100円であれば、米ドル預金を日本円に戻すと10,100円になります。しかし、1年後に100円の為替レートであることが決まっていれば、誰もが米ドル預金を選択することになりますので、100円という為替レートは市場では存在しえません。

合理的に為替ヘッジを行うのであればレートは99.01円(10,000÷101)にならなければなりません。この0.99円のディスカウントこそが1年分の金利差調整分、つまり為替ヘッジです。そして、この2通貨間の金利差が理論的には為替ヘッジのコストとなります。

つまり、為替ヘッジは、為替レートが大きく変動し、例えば円安になったタイミングでヘッジコストを支払っても預入時より有利な為替レートを得られるような場合や、円高に振れそうで為替差損を少なくしたい場合に、利用価値があるといえます。

現在は通貨によってはヘッジコストがかなり低くなっています。ポートフォリオ全体の為替リスクを軽減する選択肢の1つとして、「為替ヘッジ付」の投資を組み入れることを検討してみましょう。