近年、少額短期保険市場が成長し続けています。新規参入が相次ぎ、事業者数も増え、それに伴って保有契約件数や保険料収入も右肩上がりとなっています。

このコロナ禍においても、社会の変化に合わせて消費者の心をつかむ商品が発売されるなど、その存在感は高まる一方ですが、新規参入だけではなく保険会社を保有する企業グループによる少額短期保険会社の設立や買収などの動きも注目されています。

今回は少額短期保険の概要や現状、そして具体的にどのような商品があるのかをお伝えし、利用の際の注意点についても解説します。

少額短期保険の概要 

右肩上がりで成⾧を続ける少額短期保険とは?
(画像=naka/stock.adobe.com)

少額短期保険とは、保険業のうち、一定の事業規模の範囲内において、保険金額が少額であり、保険期間についても1年(損害保険分野については2年)以内の保険で、保障性商品の引き受けのみを行うものを指します。

したがって、開発や販売できる保険商品の保障内容による制限は多いものの、一般の保険と比べると参入障壁が低く、商品開発から販売までのスピードが早い点が特徴となっています。

一般の保険との違いは?

少額短期保険と一般の保険の内容を比較すると、以下の表のとおりとなります。

少額短期保険一般の保険
1被保険者について引き受ける保険金額の上限下記あわせて1,000万円以下
・疾病による死亡または重度障害:300万円以下
・疾病または傷害いよる入院給付金など:80万円以下
・傷害による死亡:300万円以下(ただし、調整規程付き障害死亡保険は600万円以下)
・傷害による重度障害:600万円以下
・損害保険:1,000万円以下
(注意点)
1.個人賠償責任保険については、上と別枠で上限1,000万円となる。
2.一部の業者においては、一定条件のもとに上限金額が2~5倍となる、激変緩和措置(2023年3月31日まで)が設けられている。
制限なし
参入要件他最低資本金1,000万円10億円
参入要件財務局への登録金融庁長官からの免許取得
生保および損保兼業営業可能不可
商品の審査事前届出制
(届出の60日後(短縮および延長可能)より発効)
認可制
営業保証金の供託あり
(前事業年度の年間収受保険料×5%+1,000万円)
なし
保険契約者保護機構対象外対象
保険料控除対象外対象

少額短期保険業者で取り扱いできない商品

年金保険などの生存保険や、満期返戻金を支払う保険、他にも外貨建ての保険や収入保障保険など、数年にわたり分割で保険金を支払う商品については少額短期保険業者の取り扱い不可商品となっています。つまり、取扱できる商品は「保険期間が2年以内の掛け捨て型の保険商品」となります。

少額短期保険業界の現状 

少額短期保険業とは、2006年の保険業法改正によって生まれた業態です。この業態が誕生した背景には、根拠となる法律をもたない共済団体が増加していることを受け、金融庁が監視を強化する目的で登録制の「少額短期保険業」を新設したことにあります。

日本少額短期保険協会の資料によると、2020年12月時点で少額短期保険会社は108社となっており、直近5年間の事業者数、保険契約件数そして収入保険料の推移については以下のとおりとなっています。

事業者数保有契約件数収入保険料(中間値)
2016年度末時点88社685万件385億円
2017年度末時点97社753万件442億円
2018年度末時点101社831万件487億円
2019年度末時点103社883万件513億円
2020年中間値108社914万件565億円

この表を見ても、保有契約件数そして収入保険料共に増加の一途をたどっており、中でも保有契約件数や収入保険料はこの5年間で約2倍程度の増加率であることが分かります。とはいえ、事業者の中には利益が上がらず赤字が続くところや、商品の販売停止をせざるを得ないところもあるようです。

少額短期保険の商品と特徴

少額短期保険には、「保険期間が短い掛け捨て型」という特徴があり、それを活用できる商品と相性がいいことが挙げられます。したがって、被害を受けた金額を補償する家財保険や費用保険といった実損補填型の商品を多く発売している傾向があります。

中でも家財保険の契約件数については、2020年の中間決算時点には全体の84%を占めており、収入保険料も全体の67%と、少額短期保険業界をけん引している商品といえるでしょう。

家財保険のほかには、死亡保障や入院保障などの「生保・医療保険」や、ペットの通院や入院および手術費用を補償する「ペット保険」、そして地震や遭難などのトラブルによって発生する費用を補償する目的の「費用・その他保険」が存在します。

事業者数でみると、家財保険を提供しているのは51社、ペット保険については11社、生保・医療保険は36社、費用・その他保険は36社が提供しています。

販売方法としては代理店がメインとなっており、不動産業者が家財保険や地震保険を取り扱ったり、葬儀業者が葬儀保険を取り扱うなど、提供する保障内容と関りが深い事業者が代理店となって販売しているケースが多く見られます。

また、特定の需要に限って販売する商品や、通販やインターネットなどを利用して販売する会社も多い点が特徴となっています。

個性的な保険商品

少額短期保険の中には、少額短期保険だからこそ提供できる以下のような個性的な保険商品も見られます。

1.ブライダル総合保険
入院や自然災害などにより、結婚式を中止した場合の費用および会場や衣装の修理費用のほか、招待客の救急搬送費用などを補償

2.ストーカー対策総合保険
警護サービス費用、セキュリティ機器の購入費用、ストーカーから逃れるための引っ越し費用などを補償

3.不使用チケット費用補償保険
購入したチケットのキャンセル代、急な病気やケガ、交通機関の遅延などで旅行に行けなかった場合のキャンセル代などを補償

4.通信端末修理費用補償保険
スマートフォンなどの通信機器の破損や損壊、水漏れや盗難によって負担した修理費用などを補償

5.弁護士費用等特約付き個人賠償責任保険
痴漢などの冤罪に巻き込まれた際の弁護士費用を補償

6.特定感染症保険
新型コロナウイルス感染症または1類〜3類の感染症に罹患したと医師により診断されたときに、特定感染症一時金が支払われる

少額短期保険の加入における注意点 

このように市場の拡大がみられる少額短期保険ですが、メディアに取り上げられることは少なく、認知度という点ではまだ低いと言わざるを得ません。

少額短期保険への加入を考える際には、自身のライフプランや価値観に見合うことが前提ですが、現在加入している保険商品の中に少額短期保険商品を組み入れることで家計の支出における固定費の見直しにつなげることができるほか、現在加入している保険の保障内容ではカバーできない点を比較的低い保険料で追加できる点がメリットといえます。

注意したいのは、少額短期保険は保険契約者保護機構制度や保険料控除の対象外であることです。保険契約者保護機構制度とは、「万が一加入している保険会社が破綻したとしても、将来支払う予定の保険料の積立金とされる責任準備金の90%を補償する」というもので、生命保険会社および損害保険会社に加入が義務付けられています。

少額短期保険にはこのような補償制度が存在しない点について、しっかりと理解しておく必要があります。

少額短期保険は参入しやすく保険販売もしやすいという特徴がありますが、その特徴ゆえに利益が上がらずに商品が販売停止になったり、他社に買収もしくは吸収されるケースもあります。事業者によっては、財務情報が公式サイトに掲載されていない場合もありますので、どの会社のどの保険を選ぶかについては慎重に検討するようにしてください。