新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

従来の保険商品販売のビジネスモデルは、あらかじめ決められた保険料を支払うことにより、ケガや入院、手術および事故などの際に、給付金や保険金が支払われるというものが一般的でした。

しかし、スマートインシュアランスというデジタル技術を活用することにより、次世代保険商品といわれるものが登場しつつあります。このスマートインシュアランスの内容、そして次世代保険商品はどのような特徴で、また今後の保険サービスにどのような影響を与えるのかを確認していきます。

スマートインシュアランスとは? 

これからの保険サービスはどうなる?スマートインシュアランスの内容と次世代保険商品のあり方
(画像=chinnarach/stock.adobe.com)

スマートインシュアランスとは、従来の保険商品や保険サービス、保険処理などに対して、最新のデジタルテクノロジーやITを活用した次世代の保険商品、保険サービス、保険処理のことを総称する言葉で、「デジタルインシュアランス」もしくは「インシュアテック」と呼ばれることもあります。

そして、そのカテゴリーの一つに次世代保険商品が存在します。

次世代保険商品とは? 

次世代保険商品は、「デジタル技術を活用した保険商品」と「オンデマンド型の保険商品」の2つに分類することができます。

デジタル技術を活用した保険商品

従来の生保および損保商品は、静的な属性情報にもとづいて保障保険料および補償保険料を決めるものが一般的でした。

例えば自動車保険であれば、車の種類や運転者の年齢、担保すべき補償(対人・対物・車両など)、無事故等級、必要とする保険金額などの情報を基に年間の保険料が決まり、火災保険であれば、建物の構造や立地、家財補償の金額などで火災保険料が決まる仕組みとなっています。

さらに、生命保険や医療保険の場合は、年齢や性別、既往症の有無、健康状態の告知情報、必要とする死亡保障金額や一日当たりの入院もしくは通院給付金の有無やその額などから保険の引き受けについての可否判断が行われ、最終的な引き受け可否および保険料が決まります。

そのような中で、近年におけるコンピュータおよび各種センサーの小型化や高性能化、高速で廉価なデータ通信サービスの普及、大容量データを廉価で容易に保管できる仕組みの拡大、高度なデータ分析を行える人工知能(AI)技術の一般化など、ITデジタル技術の発達は、その先進的なデジタル技術を活用した保険商品の登場を促し、従来の静的および固定的なイメージの保険商品に変化をもたらしつつあります。

具体的には後述のような、人や物の状態をデジタル技術で定期的にモニターし、その活動状況によって保険料が変動する商品や、使った分だけ保険料が課金される従量課金型の保険商品、さらには個々の物の状態や人の生活状況および健康状態に応じて最適な保険料を適用する「リスク細分型の保険商品」など、従来の静的な属性情報に基づいて規定リスクをカバーする伝統的な保険商品とは異なる性質の保険商品が登場してきています。

オンデマンド型保険商品

これまでの一般的そして伝統的な保険商品は、保険期間が1年や数年、もしくは数十年という単位で保険契約を締結していました。しかしデジタル技術が普及してきた現在では、必要な時に即座に必要なリスク(イベント)に対して、「必要な期間だけ保険の申し込みを行う」ということが可能になってきています。

テレビコマーシャルでもよく目にする、スマートフォンから簡単に申し込めるネット保険は、その代表的なものだといえるでしょう。

デジタル技術を活用した保険商品の例 

従来の保険商品販売のビジネスモデルは、あらかじめ決められた保険料を支払うことにより、必要に応じて給付金や保険金が支払われるというものでした。しかし、デジタル技術を活用することにより、給付金や保険金支払い以外の新しいサービスを提供するビジネスモデルも登場し始めています。

これらのデジタル技術を活用した保険商品の分野には、「自動車保険」「貨物保険」「火災保険」「生命保険」などがあります。ではそれぞれの保険商品の特徴を見ていきましょう。

自動車保険

自動車保険は、自動車を運転しているときの自己リスクに対する保険であることから、走行距離や場所、運転の仕方などによって保険料が変わるという点は非常に合理的な考え方なのですが、これまではそのデータを把握する技術がなかったため、毎日車を利用する人、週末しか利用しない人、さらには運転技術に関係なく、車の種類や年齢条件、そして過去の無事故等級歴などだけで一律に同一の保険料がかかる仕組みが一般的でした。

しかし、最近発売されている自動車は、カーナビゲーションシステムやドライブレコーダー、各種センサーそしてテレマティクスなどの運転情報を記録するコンピュータの搭載が標準となりつつあります。そして、これらの機器が判断し、記録する走行時の各種データ(走行時間や場所、スピード、急発進や急ブレーキの使用状況、燃費など)を使って保険料を決める自動車保険が誕生しています。

貨物保険

トラックや船舶などが運搬する貨物の損害を補償する貨物保険は、運搬物の内容や数、そして運搬方法、運送機関などで保険料が決まるのが一般的ですが、貨物にタグセンサーを付けることにより、自動で正確に実際の運搬物品数を把握することができるようになるとともに、運搬中の振動や温度および湿度、さらには実際の移動距離やルートも把握できるようになるため、美術品やワインなどの飲料や食料品、その他薬品などの運送条件の厳しい貨物を対象とする特別な保険商品やサービスが提供可能となってきています。

火災保険

上で少し述べた、従来では建物の構造や立地そして補償の範囲によって保険料が決まっていた火災保険についても、昨今のテクノロジーの進化により、新しい保険の概念が生まれることとなりました。

電力自由化に伴って各戸に設置されているスマートメーターは、その家屋の時間ごとの電気使用量を把握することができます。また、AIロボット掃除機は部屋の間取りや部屋の中の家具を認識でき、スマートスピーカーで家電機器をコントロールすることもできるため、これらのデジタル関連機器を活用することで、総合的に家電の使用状況や居住者の生活スタイル、嗜好などを把握できることにつながります。

そして、これらのデジタル関連機器で蓄積される情報を火災保険に活用することで、そこに住む人の「ライフスタイルやワークスタイルも加味したリスク」をカバーする新しい概念の保険商品が誕生する可能性は十分にあるといえるでしょう。

生命保険

これまでの静的な属性情報に基づいて保険料が決まる生命保険商品分野においては、近年の健康医療機器やセンサー類の発達そして普及により、小型の家庭用の医療関連機器やスマートウォッチなどのウェアラブル端末を使って、体温や心拍数、血圧、血糖値、さらにはストレス状態などのバイタルデータを定常的にモニターできるようになってきています。

このような背景から、これらのデジタル機器で記録された体調や健康状態のデータを活用して、その時々の健康状態に応じて保険料が変わる、新しい生命保険商品の提供が可能となっています。

オンデマンド型保険商品の例 

スマートフォンなどのモバイル機器、そしてSNSの普及により、必要な時に必要な期間だけ保険に加入するという、従来の保険商品とは性質の異なる保険が登場しました。

例えば「LINE」はSNS上で「LINE保険」を提供しており、ハイキングや登山、海水浴やスキーなどのスポーツイベント参加時や旅行の際のケガや身の回り品の破損、盗難などを補償しています。契約できる保険商品の数は50数種類にものぼり、保険料は100円から、1日単位で加入することができます。

このような「必要な保険に」、「必要な期間だけ」、「簡単に」加入したいというニーズに対しては、スマートフォンは最適な申し込みツールであるといえます。将来は一日単位ではなく、時間単位で身の回り品に保険を掛けることができる保険商品が普及する可能性もあります。この場合、保険の加入申し込みはもちろん、事故の報告や保険金請求まで全てをスマートフォンで完結できるようになることが求められます。

つまり、従来のような紙の申込書を使って保険会社やその代理店、もしくは金融機関経由で対面形式によって申し込みを行うという手続きの形が、大きく変わりつつあるといえるでしょう。

新しい保険サービスの登場 

デジタル技術を活用した保険商品の登場により、新しい保険サービスが出現したことも見逃せません。

例えばデジタル技術を使って自動車保険契約者の自動車運転の癖や習性をモニター化することにより、自動車事故を起こさないような運転の仕方をアドバイスする運転診断サービスや、スマートフォンやウェアラブル端末で記録した日々の運動情報や健康診断データを活用して、保険契約者に対して健康増進支援や生活習慣病予防サービスを提供するなどです。

このような新しい保険サービスの出現は、今後の私たちの保険商品選択の際に重要な役割を持つといえるでしょう。

変化する保険処理の流れ 

現在、一般的な各種保険の手続きは以下のような流れとなっています。

  1. 契約者が保険を申し込む
  2. 保険会社が引き受けの査定、そして保険料の算定を行い、契約を締結する
  3. 契約者は決められた保険料を支払い、事故や病気の際にはその報告を保険会社に対して行い、その報告内容に基づいた保険金や給付金が支払われる
  4. 保険会社は報告を受けた際、必要に応じて事故調査や保険金の査定を行い、最終的な保険金もしくは給付金を支払う

そして、これらの手続きの多くは書類ベースでの事務処理が多く、書類の作成、送付、とりまとめ、検証、さらには書類の更新、保管といった多くの人手が介するものとなっています。

今後は、このような保険事務処理が、デジタル技術の発達そして普及に伴い、大きく変わろうとしています。例えばAIが人に代わって保険処理を自動化することが現実的となり、保険処理の効率化、省力化、高度・高速化が可能となってきています。

具体的に、デジタル技術を活用した保険手続きで利用が始まっているものについては、以下のようなものがあります

ドローンの利用

地震や台風による広域災害時の被害調査や企業保険の工場や建物の損害調査、海上保険の船舶の損害調査の際に、ドローンを使って上空や海中から遠隔で損害調査を行います。

ブロックチェーンの利用

貿易など、多くの国や当事者が関与する取引の情報共有のインフラとして、ブロックチェーンが注目されています。貨物保険や海上保険において、情報共有と改ざん防止に優れた特徴を持つブロックチェーンを使い、保険会社や荷主、海運会社や貿易会社間での情報の格納、参照、共有が容易に行われる仕組みづくりの開発が進められています。

人口知能(AI)

AIが人に代わって、保険金の不正請求を検知したり、あるいは自動車事故の画像データと過去の事故事例から損害保険金の算定や過失割合の判定をしたりするようになってきています。

スマートフォンなどのモバイル機器

自動車事故を起こした場合、スマートフォンのアプリが事故現場を特定し、保険契約者がスマートフォンで撮影した車両事故画像を送信することによって、保険会社での事故受付手続きを簡便化する仕組みも登場してきています。

さらに前述のAIによる自己査定処理と連動させることにより、従来であれば保険金の支払いに2~3週間かかっていたものを、最短で保険金を即日払いする取り組みも始まっています。

スマートインシュアランスと対面販売保険商品の違い 

保険会社や代理店もしくは金融機関の窓口における、一時払い終身保険や年金保険などの典型的な対面販売保険商品と、スマートインシュアランスのような新しいタイプの保険商品には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

スマートインシュアランスと呼ばれる最新のデジタル技術を活用した次世代型の保険は、コンピュータやデジタル機器、センサーなどで物や人の活動および状態を記録し、そのデータを活用することによって、それに関連するリスク内容と活動時間、活動状況に応じて保険料が変動するリスク細分型の保険商品となります。

したがって、従来から対面販売で取り扱われてきた終身保険や年金保険などの貯蓄型保険や、性別、年齢、既往症の告知情報などの既知の属性のみで保険料が決まる生命保険および医療保険とは大きく性質が異なります。

また、スマートフォンのアプリやSNSを使って、簡単に安く加入できるオンデマンド型保険商品については、スマートフォンからいつでも非対面で加入できる性質の保険という点でも、従来の対面型販売の保険とは販売方法が根本的に異なります。

これからの対面型の保険販売に求められるもの 

消費者が対面型で保険会社やその代理店もしくは金融機関などで保険を購入するニーズとして一番大きいものは、保険機能と貯蓄機能を兼ね備えた年金保険や終身保険、介護保険などの貯蓄型保険商品です。その際の保険購入者の関心事は退職金などのまとまったお金を運用するための貯蓄機能であり、運用利回りや節税効果にあるといえます。

特に金融機関が窓口となる場合は、投資信託や国債などと同じく、金融運用商品の一つとして保険商品が検討されるため、インターネットや保険ショップで保険商品を検討もしくは購入する場合とは性格が異なり、金融機関の窓口販売の方が選択肢となるといった優位性があります。

そして、保障の色合いが強い生命保険、医療保険、がん保険なども消費者の関心およびニーズの高い保険商品ですが、保障性保険商品単独の相談相手および購入場所で対面販売が選択される優位性は、そこまで期待できないといえます。

したがって、対面販売の強みでもある貯蓄型保険とともに、顧客のニーズに合った保障性保険商品も同時に提案、助言できることが、ワンストップサービスとしての対面販売の価値となりそうです。

では、従来の貯蓄型保険や保障性保険商品とは性質の異なるスマートインシュアランスは、保険会社やその代理店、金融機関における対面販売ではどのような位置付けになるのでしょうか。

スマートフォンやSNSの普及によって誕生したオンデマンド型保険は、スマートフォンからの保険加入や必要な時にすぐに保険に入れるという商品特性から、対面販売の保険とは明らかに異質のものとなります。

一方で、物や人の状態、ライフスタイルに対応したリスクをカバーするリスク細分型保険や、使用した分だけ保険料を払う従量課金型保険、健康増進支援や生活習慣病予防サービスなどの付加価値提供型保険など、デジタル技術を活用した次世代の保険商品は今後も進化し、多様化する消費者のニーズに応えていくものと思われるとともに、対面販売の保険商品のバリエーションに追加されることもあり得ます。

このように保険サービスを取り巻く環境が変化する時代において、保険商品をワンストップで提供できる保険会社やその代理店もしくは金融機関の対面販売は、顧客のライフスタイルやライフイベントに合わせて、従来型の貯蓄性保険や保障性保険だけでなく、スマートインシュアランスのような新しいタイプの次世代保険商品も包括的に提供していくことが期待されます。

そして同時に、顧客の状況とニーズに合った最適な保険商品を組み合わせ、提案していく能力の向上も求められることになるといえそうです。顧客側もそのような対面販売のあり方を理解し、提案された商品の中でどれが自分に最適な商品なのかを判断する力をつける必要が、今後は今以上に求められることになるでしょう。