新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

暗号資産は価格の変動が大きく、場合によってはかなりのリターンを得ることができますが、きちんと仕組みを理解しておかないと大きな損失を招くことにもなりかねません。暗号資産を投資先に加えることを考える際には、その仕組みや注意点をしっかりと理解してから行う必要があります。

暗号資産とは 

投資先に暗号資産を加える際に注意しておきたいポイント
(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

暗号資産はブロックチェーン技術を使ったサービスのなかで最も普及したサービスで、電子データのみで主にインターネット上でやりとりされるデジタル通貨のことを指します。現在、暗号資産にはさまざまな種類がありますが、最も有名なものはビットコインといわれています。

暗号資産の取引においては、その全ての内容がインターネット上のブロックチェーンに記録されます。そして、その取引データは全てのネットワーク関係者に公開されることになっています。

ブロックチェーンは分散管理していることから、ネットワーク障害にも強く、データが改ざんされにくいという面がありますが、ハッキングにより取引所が破綻するリスクも併せ持っていることに注意する必要があります。

暗号資産と法定通貨の違い

暗号資産は、原則として円やドル、ユーロといった法的通貨のような強制通用力(通貨の額面価値の保証や金銭債務の弁済手段として用いられる法的効力)を持たず、国や中央銀行のように特定管理者もいない点が特徴です。ただし、商品の購入や送金が可能で、通貨のような決済機能を持っています。

しかし、暗号資産における法的な位置付けは各国曖昧で、日本の法律では通貨ではなく、「もの(資産)」として取り扱われています。

暗号資産の取引はレバレッジ取引が主流

暗号資産の取引は、レバレッジ取引が主流であることも特徴です。つまり、暗号資産の取引は、ほぼ投機目的の取引であるといえます。そしてこの投機性の高さが暗号資産の価格の乱高下を生む要因となっていることに注意が必要です。

このようなレバレッジ取引は、価格が上昇しているときは良いのですが、価格が下落した場合、強制的に売却させられたり、追加証拠金(追証)を求められたりすることから、価格の引き下げをさらに加速させる要因となることを覚えておきましょう。

暗号資産の取引における注意点 

暗号資産の取引がレバレッジ取引であることからも、取引の大半が投機目的であり、純粋な送金や決済目的の利用は極めて限定的であることが実態となっています。そして現在では、暗号資産の取引が「マネー・ロンダリング」や「テロ資金供与」の目的で行われている点に警戒感が持たれています。

暗号資産の不正流出

世界各国で多額の暗号資産の不正流出事件が多発しています。これは暗号資産の口座の構造に起因している問題なのですが、暗号資産の口座は「公開鍵」といわれるものと、「秘密鍵」といわれる2種類のカギで管理されています。

一般的にこれらの鍵はパソコンやスマートフォン内に保存していますが、不正にアクセスされることで、簡単に暗号資産が盗まれてしまうのです。2018年1月に、ある取引所から約580億円相当の暗号資産が不正送金されたニュースは記憶に新しいのではないでしょうか。

このような不正流出を防ぐ目的で、現在ではインターネットと切り離した「コールドウォレット」に暗号資産を保管するなどの対策が行われています。

ブロックチェーンの改ざん

暗号資産で利用されるブロックチェーンは、現時点ではセキュリティ要件の確保まで至っておらず、データの改ざんが不可能とは言い切れない状況です。実際に悪意のある第三者によるブロックチェーンのデータ改ざん事件も起こっており、今後の対策が重要視されています。

暗号資産の脆弱点に対する今後の対応 

暗号資産は、上で紹介したようなさまざまな問題点を抱えています。そしてそれを解決するために、日本では暗号資産交換業者に関する内閣府令により、暗号資産交換業者への規制を強化し、以下のような対策を取ることとしています。

  1. セキュリティ強化や内部管理・ガバナンス体制の構築
  2. レバレッジ規制の導入
  3. 情報開示の強化および自己資本比率規制の導入
  4. 不公正取引防止規制の導入
  5. ハッキング被害における損失をカバーする基金の創設
  6. 本人確認の強化
  7. ICOへの規制

7番目のICOとは、企業がプロジェクトを実行するために、暗号資産を活用して行う資金調達のことで、具体的には「トークン」と呼ばれるデジタル権利証を発行し、それを購入した投資家はその「トークン」が取引所に上場されることで、暗号資産と同様に取引を行うことができる仕組みとなっています。

しかし、このトークンは情報開示の義務がないことから、詐欺的な要素が混ざりやすいという問題があり、世界各国でも規制が強化されている背景から、日本においても規制を強化する動きを取り入れているという実態があります。

暗号資産で得た利益は雑所得 

日本において、暗号資産の売却益は雑所得となり、他の所得と合わせて所得税の対象となります。したがって最高税率は45%となり、株式の売却益や配当などに課税される20%の分離課税と比較するとかなり高くなることが分かります。

この課税の仕組みをよく理解しておらず、確定申告における申告漏れが多発している点も問題視されています。利益を確定申告しなかった際には脱税とみなされ、指摘された際には重加算税の対象となりますので、暗号資産の取引で利益を得た場合については必ず確定申告を行うようにしてください。

今後における国際的な規制強化の動き 

暗号資産の取引については、国境がありません。したがって、規制の実効性を高めるには、日本だけではなく、世界ベースで規制を行う必要があります。

しかし、従来の暗号資産はG20 の場ではマネー・ロンダリングの観点から規制することを検討するまでに止まっています。また、日本では暗号資産交換業に焦点を当てており、ICOの規制に最も注目しているアメリカと足並みが揃っていないことから、世界的な観点からの規制導入には至っていないのが現状です。

ただし、2019年6月に福岡で行われたG20においては、暗号資産交換業者に免許制もしくは登録制を導入することで合意するなど、国際的な枠組みが前進したこともあり、今後さらに検討が進むことが予想されています。

暗号資産のリスクの理解および確認を怠らないことが大切 

上述のとおり、暗号資産は法定通貨とは異なり、価値が保証されるものではありません。また、価格の変動が激しい点もその理由と合わせて理解しておく必要があります。

加えて、仮想通貨の取引を行う際には、必ず金融庁のホームページをチェックし、そこに登録されている事業者かどうかを確認するようにしましょう。暗号資産の取引事業者は利用者に対して「取り扱う暗号資産の仕組み」や「暗号資産の持つリスク」さらには「取引の際の手数料」について説明する義務を負っています。

したがって、口座開設の際にきちんと説明があるかどうかも確認する必要があります。また、自分の取引状況についても定期的なチェックを行い、自分の許容するリスク内で活用することを忘れないようにしてください。