新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

現在、急激なスピードでデジタル革命が進行しています。モノのインターネットと呼ばれる「IoT」で蓄積されたビッグデータはAIによって分析され、物流や情報そして私たちの日常生活などにも大きな変化をもたらしていますが、これらの変化により、損害保険業界も変革を余儀なくされています。

このようなデジタル革命によって、今後の損害保険の内容はどのように変化していくのでしょうか。

デジタル革命によって影響を受けるもの 

デジタル革命の進展と今後の損害保険について
(画像=onephoto/stock.adobe.com)

デジタル革命によって影響を受ける分野については、以下のように分類することができます。

スマートシティ

スマートシティとは、市民自らの主体的な取り組みや、各自治体の連携、そしてビジョンの実現といった基本理念や、公平性や透明性、プライバシーの確保などといった基本原則を基に、ビッグデータを活用して土地や地域が抱える問題を解決し、それによって生み出された新たな価値を維持し続ける都市や地域のことです。

そして、これらによって私たちの「生活」や「教育」、「交通」、「経済」、「環境」そして「行政」などにおける幸福度の向上を目指しています。

自動運転自動車

近年の自動運転自動車の開発は目まぐるしいものがあり、自動ブレーキ機能や車間距離制御装置などを装備したASV(先進安全自動車)が普及し始め、自動車事故は減少の傾向にあります。

そしてその先にあるものは、自動運転レベル5といわれる「完全自動運転車」の実現であり、日本ではまだレベル3の実現止まりとなっていますが、アメリカでは2020年にレベル4を実現しており、レベル5に達する時期もそう遠くないといわれています。

デジタル革命がもたらしたサイバー攻撃の拡大 

最近では、企業における情報漏洩やサイバー攻撃によるリスクが高まっています。近年、サイバー攻撃の手口が高度化・悪質化するとともに、旧来の無差別攻撃から特定の組織や業種などに狙いを定めた標的型攻撃に移行している点も特徴となっています。この被害拡大の背景には、あらゆるモノがネットワークにつながるIoTの進展があるといわれています。

さらに問題となっているのが、ランサムウェアによる被害です。メールに添付されたファイルや、Webに仕掛けられた改ざん部分から感染し、ファイルを全て暗号化されるなどの特徴があります。また、その被害範囲は社内のイントラネットを通じてグループ会社にまで及ぶこともあり、その危険性はかなりのものと認識されています。

特に日本国内では、標的型攻撃による情報漏洩が1位を占めているほか、ランサムウェアによる被害も目立っています。

サイバー攻撃における政府の対策

サイバー攻撃はその規模が大きくなればなるほど、電気や通信、交通網を始めとした重要なインフラを止め、その結果社会不安を引き起こしたり、時には人命を脅かす被害を人工的に作り出すことになりかねません。

そのため、日本政府は「内閣サイバーセキュリティセンター」を設置し、その後サイバーセキュリティ基本法が施行されています。この法律では、サイバーセキュリティの確保に必要な注意を払うことを国民の努力義務としていますが、企業は営業秘密保護や事業継続性の観点からもサイバーリスクを重要な課題と認識しており、その対策を進めています。

そして、損害保険会社も同じく専門家を加味した徹底的なリスクマネジメントを行い、この分野における補償に関する商品を開発しています。

デジタル革命によって生まれた新たな損保商品 

このようなデジタル革命により、スマートシティを基盤とした個人向けそして企業向けの商品として新たに以下のような損保商品が生み出されています。

個人向け

上述のような自動運転機能の普及に伴い、「テレマティクスサービス」が新たに登場しています。テレマティクスとは、通信機器と情報処理手段を併用したもので、その人の年間の走行距離や、走行場所、運転の危険度合いなどを総合して判断し、事故のリスクが少ないと判断された契約者に対しては保険料が安くなるという仕組みを取っています。

ただし、自動車事故の原因が、通信回線の故障や不正アクセス、さらには自動車メーカーの過失によるケースも増える可能性も無視できないことから、最近では現行の自動車保険の枠を超えるような「被害者救済費用補償特約」も誕生しています。

この特約を付けることで、運転者に法律上の賠償責任がないと判断された場合には、被害者を救済するための費用が支払われ、さらにノーカウント事故として取り扱われるというものです。

企業向け

企業において、企業が原因で第三者に被害が及ぶような事故を起こした際には、その企業活動が滞るばかりか、事業の継続までを脅かすことになります。そのような背景から、企業向けの保険商品としては、テレマティクスサービスの一環として車両管理や安全運転管理支援を行うものが用意されているほか、サイバー保険、海上保険なども登場しています。

特にサイバー保険には、損害賠償責任のほか、事故対応に要する費用やサイバー攻撃によって被った損害や今後における営業継続のための費用などが補償されることから、企業としては一番に備えておきたい保険商品といえるのではないでしょうか。

損害保険ビジネスにおけるデジタル技術の活用 

デジタル技術の進展は、損害保険のビジネスにとって追い風といえますが、その進展が家庭や企業、そして社会を取り巻くリスクをどのように変えていくのかを考える必要があります。

そのための取り組みとして、保険と技術を組み合わせた「インシュアテック」という言葉が聞かれるようになってきたとおり、損害保険会社は先端のIT技術を積極的に活用した、新たな商品やサービスを開発していることが分かります。

ビッグデータとAI

ビッグデータの活用としては、詳細に区分された地域ごとの自然災害データを利用することで、災害の頻度や損害の程度を予測するなど、災害リスクを管理しています。また、AI分野においては、コンタクトセンターでの活用に加え、自動車保険証券や車検証を読み取り、保険料計算システムに接続して保険見積もり作成に利用するシステムが開発されています。

自動車保険

上述のテレマティクスサービスの開発のほか、個人や企業向けのIoT活用による安全運転支援サービスの展開を行っています。そして、顧客との接点強化への取り組みとして、自動車保険以外についても、個人が所有するスマートフォンを使った事故時や緊急時のナビ機能や事故予防サービスなどが急速に広まっています。

ドローン

地震や風災などの広域災害において、ドローンを用いることで、立入困難な場所の調査を行うだけでなく、迅速な調査と保険金支払いにもつなげています。さらに今後の防災のために、3次元データの取得や動画による事故状況の再現なども行っています。

このような調査におけるドローンの活用は、自治体や企業と連携することで、災害の発生が危ぶまれる地域の地形観測など、災害発生予防の支援につながっています。

このように損害保険会社では、新たな補償やサービスの提供に加え、将来に備えた試行的な取組体制強化を積極的に行っています。生産性の向上や業務改善にとどまらず、新たな付加価値を創造することができるかどうかが、今後の損害保険におけるキーポイントになるといえるでしょう。