新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

近年、様々な業界でクラウドファンディングが行われる機会が増えており、映画や食料品など、日常のなかで目にするものの中にもクラウドファンディングによって資金調達をされたものが多数あります。

2020年の日本におけるクラウドファンディング市場規模は1,841億円にものぼり、投資資金の一部もクラウドファンディング市場に流れていることから、今後クラウドファンディング市場においては注意深く動向を見守る必要があります。

クラウドファンディングとは? 

融資型だけではない!購入型・投資型など多岐にわたるクラウドファンディングの特徴とは?
(画像=AndreyPopov/stock.adobe.com)

クラウドファンディングの基本コンセプトは、不特定多数を意味する「クラウド(Crowd)」から「資金調達(ファンディング)」を行うことです。

具体的には、資本提供側となる個人投資家と、事業の実施や商品化などに資金調達が必要な法人もしくは個人事業者を、仲介業者がインターネット上のプラットフォームを介して結び付けることにより成立しています。

クラウドファンディングの仕組み

まず、仲介業者が運営するWebプラットフォーム上で、事業者が「資金調達の告知」を行い、それを見た個人が「資金提供および投資」を行います。そして無事に資金調達が成功すると、事業者は何らかの「還元」を行います。この還元もプラットフォームを介して行い、資金を提供した個人はリターンを得ることができます。

既存の金融業界の仕組みでは、大きな資本を持つ金融機関や投資家のみが、独自の判断で融資や投資を行っていたのに対し、クラウドファンディングはインターネットを介して誰でも小額の資金提供ができる点が特徴となっています。

また、「資金提供者への還元がお金とは限らない」点もクラウドファンディングの大きな特徴の一つです。つまり、資金提供者への還元は「モノ」や「サービス」であっても取引が成立します。このような還元の形の違いなどから、クラウドファンディングについてはいくつかの類型に分類されています。

融資型クラウドファンディング 

融資型クラウドファンディングは、貸付型クラウドファンディングやソーシャルレンディングと呼ばれることもあります。この融資型クラウドファンディングは最も歴史の長いクラウドファンディングの形であり、資金提供者にとってのメリットは案件に応じた利回り分の金銭的な還元を受けることができる点です。

利回りは案件ごとに設定されていますが、年利5%以上に設定される案件もあり、最近の低金利下においては総じて高い金利水準にあるといえます。そのため、資金提供者の中には資産運用の一環として融資型クラウドファンディングを活用しているケースが多いといえるでしょう。

融資型クラウドファンディングでは、資金提供先の社名を含む詳細情報について、資金提供者に明示されません。これは、資金提供者が貸金業法に抵触する可能性があるための措置といえます。そのため、国内における融資型クラウドファンディングは、仲介業者が資金調達の案件別に匿名組合(ファンド)を作り、出資を募る方法がとられています。

また、ファンドの出資先として、複数の資金調達案件がある場合もあり、ファンドの名称のみが資金提供者に開示されています。

購入型クラウドファンディング 

購入型のクラウドファンディングは、資金提供者に対して、事業に関連した製品やサービスといった金銭以外の還元を行う仕組みです。購入型のクラウドファンディングは、案件に対する何らかの教官や賛同を得ることで資金調達を成立させています。

例えば、まだ社会にはないような革新的な製品開発や、社会をより良くするような活動、地域性の高い取り組みなどが挙げられます。資金提供者は、このような内容に対して、共感および賛同することで、小口の資金提供を行う形となります。

購入型のクラウドファンディングの特徴としては、ネットショッピングに近い感覚で行われていることが挙げられます。基本的には資金調達が成立してから製造を開始することになりますが、資金提供側にとっては、予約販売と同じ感覚で捉えることが可能です。

購入型のクラウドファンディングが対象とする案件のテーマは多様であり、これまでの金融の仕組みでは対応できなかった資金調達のニーズに対応しています。例えば、「ゲーム開発」や「アート・ファッション・美容」、「映画製作」のほか、「まちづくり・地域活性化」のような社会貢献度の強いものまで多岐に渡ります。

資金調達者はベンチャー企業や個人事業者が多く、新しい資金調達手段として購入型クラウドファンディングを活用しているといえます。

寄付型クラウドファンディング

購入型クラウドファンディングと似たようなものに、寄付型クラウドファンディングがあります。寄付型クラウドファンディングは、資金提供者への還元が発生しない、もしくはお礼として簡単な還元(関連商品やサービス)によって資金調達が行われる形です。

寄付型クラウドファンディングは、社会性の高い分野の案件を対象としており、2011年の東日本大震災後の復興支援に関連する案件などが該当します。

それ以外では、医療や環境保全、国際協力といったテーマで行われています。このような性質から、寄付型クラウドファンディングは、主にNPO法人や、自治体、学校法人といった非営利団体の資金調達に活用されているという特徴があります。

非営利団体は、これまで団体の賛助会員からの寄付を中心として資金調達を行ってきましたが、クラウドファンディングの仕組みを活用することで、インターネットを介して活動に共感する賛同者を多く集めることができるようになった点は注目すべき点といえるでしょう。

つまり、活動資金はもちろんのこと、多くの方に関心を持ってもらう機会を得ることができるという点が、クラウドファンディングならではの特徴といえます

投資型クラウドファンディング 

投資型クラウドファンディングは、資金提供者への還元を、事業の利益に応じた配分をして行うものです。また、融資型クラウドファンディングとの違いとしては、「資金提供先が明確である」ことが挙げられます。具体的に、「どの事業者が」、「どのような目的で」資金調達を行いたいのか、その点を明示した形で資金を調達する仕組みとなっています。

そして、投資型クラウドファンディングは、大きく「ファンド型」と「株式型」に分類されます。

ファンド型クラウドファンディング

ファンド型クラウドファンディングとは、その名前のとおり、案件ごとにファンドを作り、一口当たりからの出資を募ることで資金調達を行います。会計期間および損益分岐点、売上金額、分配金などの情報を事前に設定し、事業実施後に売り上げに応じた分配金が資金提供者に還元されます。

詳細な事業内容や資金調達の背景を開示していること、さらには環境に配慮した商品やサービス、地域活性化につながる事業といった面がアピールされることも多く、事業性と共感性のバランスを取った案件も多く見られます。

還元方法としては、分配金だけではなく事業に関連した商品やサービスが設定されることもあり、購入型クラウドファンディングで取り扱っているような案件もあるケースが見られる点も特徴となっています。

株式型クラウドファンディング

株式型クラウドファンディングは、未上場企業が株式を発行し、インターネット上のプラットフォームを通して不特定多数の投資家から出資を募る方法です。つまり、未公開株を誰でも購入できる手段といえるでしょう。

この株式型クラウドファンディングで投資家が得ることができるものは、「株式」です。事業業績に連動した配当金を得ることはもちろん、投資家が将来IPOやM&Aといった事業展開ができれば、その株価は上がり、その売却益も期待できる点が資金提供者にとってのメリットといえます。

クラウドファンディングに関する法規制 

ここまで説明したようにクラウドファンディングにはさまざまな類型が存在します。そして、その類型によって仕組みが異なることから、事業を行う仲介業者や資金提供者に対する法規制も異なっています。

金融商品取引法

クラウドファンディングに関連する最も重要な法規制として、「金融商品取引法」が挙げられます。

金融商品取引法の規制は、第一種および第二種に分類され、第一種は有価証券を始め、店頭デリバティブ取引などの引受業務やシステムの運営、管理業務の実施など、いわゆる証券会社を対象とした規制となっています。そして第二種は、集団投資の仕組みなどの募集といったファンド運営を実施する際に対象となる規制です。

2014年に改正された金融商品取引法では、クラウドファンディングがインターネットを介して資金提供者を募る点や、小口の資金提供であるという点から、「第一種・第二種少額電子募集取扱業」という新しい区分が設けられることとなりました。

これにより、仲介業者に求められる最低資本金額の低減や兼業規制などの規制緩和が進むこととなり、仲介業者にとっての参入ハードルが下がることで市場の活性化を図ることができたといえるでしょう。

融資型クラウドファンディングにおける法規制

国内の融資型クラウドファンディングは、仲介業者が案件別にファンドを作成し、出資を募る方法がとられています。

そのため、仲介業者は「第二種金融商品取引業」もしくは、クラウドファンディングに限っては「第二種少額電子募集取扱業」に登録する必要があります。そして第二種少額電子募集取扱業では、1案件あたりの資金調達金額が1億円未満、さらに資金提供者1人当たりの投資額が50万円以下という条件を満たす必要があります。

また、融資型クラウドファンディングのプラットフォームが、国内の事業者の資金調達に用いられる場合、仲介業者は貸金業に登録している必要もあります。貸金業への登録は、純資産額などの面でも第二種少額電子募集取扱業よりもハードルが高くなります。

さらに、金融商品に関する業界団体である「日本証券業協会」の自主規制にも従う必要があり、対面勧誘の禁止や、適切な情報開示、さらには案件の適合性の確認を行わなければなりません。

購入型クラウドファンディングにおける法規制

購入型クラウドファンディングは、仕組み上では金融商品として規定されていません。したがって、金融商品取引法の法規制はありません。

しかし、仲介業者のプラットフォーム運営においては、資金提供者から資金を預かり、手数料を差し引いて資金調達者に支払っていることから、為替取引を担っているといえます。こうした為替取引を行う場合は、その事業者は資金移動業の登録もしくは代金決済代行サービスとして行う必要があります。

また、資金調達者にとっては、何かしらの商品やサービスを提供することになるため、「特定商取引法」が適用されます。具体的には、プラットフォーム上に掲載される案件の表示内容について、変更ができないなどの制約を受けることとなります。

寄付型クラウドファンディングについては、資金提供者からの資金を寄付とみなし、所得控除(寄付金控除)とするため、還元の際には過剰なものにならないようにするといった注意が必要です。また、寄付を受けた資金調達者は贈与税や法人税といった該当項目での処理が求められることとなります。

投資型クラウドファンディングにおける法規制

投資型クラウドファンディングのうち、ファンド型については「第二種金融商品取引業」もしくは「第二種少額電子募集取扱業」の登録が必要となります。ファンド型は融資型と同様、仲介業者が案件別にファンドを作成し、出資を募る方法をとっています。

株式型については、「第一種金融商品取引業」もしくは「第一種少額電子募集取扱業」の登録が必要となります。プラットフォーム上での未公開株式の売買という仕組みを実現するためには、いわゆる証券業に準じた業者登録が必要となるのです。

株式型については、2015年の金融商品取引法改正により、未公開株の個人購入が解禁されたことから、これまで一般個人向けの未公開株の購入については、さまざまな制約がある都合上行われていませんでしたが、クラウドファンディングの仕組みの上においてのみ個人も購入することができるようになった点は注目すべきといえます。

クラウドファンディングが持つ側面 

クラウドファンディングが新しい資金調達手段として注目される理由の一つとして、クラウドファンディングが資金調達機能以外の側面を持っていることが挙げられます。クラウドファンディングによって成功している案件は、その企画に賛同もしくは共感してくれる資金提供者のSNSなどを介して、より多くの人へのプロモーションを行うことができます。

また、資金調達者が持っていない人材を補充する機能を持ったプラットフォームも存在しており、多方面から資金調達者の事業を支援する仕組みとして成立している点も注目されています。

こうした側面は、特に購入型クラウドファンディングにおいて顕著に見られています。これは購入型クラウドファンディングが金融商品としてではなく、ECサイトのような物品販売に近いことから、仕組みとして自由度が高く、仲介業者がプラットフォームとしての独自性を出しやすいという理由があるためといわれています。

商品およびサービス開発

クラウドファンディングを利用することで、資金調達を行う事業者はプラットフォームを通じて対象とする商品やサービスの改善に繋げることができます。実際に購入型クラウドファンディングのプラットフォームでは、商品やサービスのアイデアを投稿し、そのアイデアに対するコメントをもらい、具体化するプロセスを提供するサービスも存在します。

このような商品およびサービス開発の側面は、クラウドソーシングにも似ているといえます。購入型のクラウドファンディングが、新しい事業の成功を目的としているため、目的達成のために資金調達以外の支援にも拡大した形として捉えることができるのではないでしょうか。

プロモーション効果

クラウドファンディングのプラットフォームは、資金調達者および資金提供者のコミュニケーションの場ともいえます。

特に資金提供者はその事業でつくる製品やサービスの初期利用者となる可能性が高く、さらに、ユーザーとして、共感や賛同した製品およびサービスについて、自身のSNSなどのツールを通して情報を拡散することがあります。これがいわゆる口コミ効果としてプロモーションとなり、新たな共感者を増やすことにつながります。

一般的に、新しく事業を始める事業者にとって、販促および広告宣伝費まで手が回らないことは少なくありません。事業者にとって、こうしたクラウドファンディングのマーケティングプロモーションへの期待は大きいといえるでしょう。

インターネットの普及により実現したクラウドファンディングですが、多様な資金調達のニーズに対応するべく、いくつかの類型に分かれ、法整備と並行しながらさまざまな仕組みを確立しています。

今後もさらに身近なものにおけるクラウドファンディングの活用が進むことにより、今まで繋がっていなかった人とのつながりも進むでしょう。また、資金面の問題で達成できなかったイベントの開催や製品およびサービスの向上も期待できます。クラウドファンディングが当たり前のように使われる時代もそう遠くないのではないでしょうか。