新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

介護保険に基づく介護(介護予防)サービスは、65歳以上(特定の疾病に限り40歳以上)の方が、「介護が必要である」と認定された場合に受けることができます。

利用の際には、まず自分が住んでいる市区町村や地域包括支援センターに要介護および要支援を認定してもらうための申請を行う必要がありますが、介護保険制度の仕組みや申請から利用までの流れを事前に把握しておくことは大切です。

今回は、介護保険の制度の仕組みやどのようなサービスがあるのかについても解説します。

介護保険制度とは 

どう使う?介護保険制度
(画像=japolia/stock.adobe.com)

介護保険制度が創設されたのは、約20年前の2000年です。それ以前の日本においては、「介護は家族が担うもの」という意識が強くありましたが、1990年代後半に入ると、「高齢者の増加」、「核家族化」、「共働き世帯の増加」、さらには「介護離職者の増加」といったことが社会問題となってきたため、「家族を社会全体で支える」という考えのもと、この介護保険制度が誕生したという背景があります。

制度が創設されてからまだ20年と歴史が浅く、また、制度創設時と比べて高齢化がより一層進んでいることから、3年ごとに行われている制度改正時にはその都度大きな変更がなされています。ちなみに2021年の改正は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、小幅な変更にとどまっています。

介護保険制度の概要

介護保険の被保険者には「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2種類が存在し、さまざまな点で違いがあります。

第1号被保険者第2号被保険者
被保険者資格
(加入する人の要件)
満65歳以上満40歳以上65歳未満で医療保険の加入者
介護保険料前年の課税年金収入および合計所得金額などを基にして計算健康保険組合や協会けんぽの加入者であれば、標準報酬月額を基に決定
国民健康保険被保険者の場合は前年の課税所得金額を基にして計算
介護保険サービスの利用条件原因を問わず、介護や支援が必要となった時国の定める16の疾病が原因で介護や支援が必要となった時

満65歳以上になると、何の手続きをしなくても自動的に第2号被保険者から第1号被保険者へ移行します。ちなみに、法律上満年齢となるのは「誕生日前日の24時」です(民法143条 )。例えば10月1日に65歳になる人と、10月2日に65歳になる人では、前者は10月から、後者は11月からと1ヶ月遅く第1号被保険者になることとなります。また、第2号とは異なり、生活保護を受けている人も加入することとなります。

介護保険料の決定方法

上で述べたとおり、第1号被保険者の介護保険料は前年の課税年金収入および合計所得金額などを基に決定されます。自治体によって計算方法が異なりますが、東京都港区の場合は以下のように区分されています。

第1~3段階本人および世帯員全員が住民税非課税世帯
第4および5段階本人が住民税非課税で、世帯員が住民税課税対象者
第6~17段階本人が住民税課税対象者(所得に応じて保険料段階分け)

各段階の介護保険料は基準額に保険料率を乗じることで求められます。また、第1~3段階の方に対しては、介護保険料の軽減措置が設けられています。

第2号被保険者の場合で、健康保険組合もしくは協会けんぽに加入している場合は、標準報酬月額に介護保険料率を乗じた額で計算されます。介護保険料率については各健康保険組合で異なりますが、負担は半分が事業者となることから、実質の介護保険料の2分の1が徴収されることとなります。国民健康保険被保険者であれば、国民健康保険料と同じ方法で計算されます。

介護保険を利用するには 

介護保険を利用しようと思った際には、住んでいる市区町村や地域包括支援センターに対して申請を行います。その後、介護認定調査員の訪問調査を受け、主治医に意見書を書いてもらう必要があります。さらに、コンピューターによる一次判定を経て、介護認定審査会による二次判定によって、最終的な介護度の判定が行われます。

介護度には、予防的なサービスを受けることができる「要支援1および2」と、介護サービスを受けることができる「要介護1~5」があります。申請すればだれもがいずれかのサービスを受けることができるというわけではなく、判定の結果、介護も支援も必要がないと判断された場合は「非該当」となります。

介護サービスの種類 

介護サービスは大きく以下の3つに分類されます。

1.居宅サービス:自宅に住みながら利用できるサービス
2.施設サービス:施設に入所して利用するサービス
3.地域密着型サービス:原則としてその自治体に住む人だけが利用できるサービス

これらのサービスの利用については、介護される本人が困っていることや、「どのような人生を送りたいか」、また「どこで暮らしたいか」などの希望を基にケアマネジャーと話し合い、それをケアプランに落とし込んで決定します。

居宅サービスの例

・訪問介護(ホームヘルプ)
ヘルパーの方に自宅に来てもらい、食事や入浴、排せつの介助や通院などといった外出時の付き添い、食事の準備、掃除などを行ってもらいます。ただし、「本人の生活に必要な範囲」での利用となるため、家族分の食事の準備や洗濯などは対象外となります。

・通所介護(デイサービス)
通所介護施設に通い、そこで食事や入浴、レクリエーションなどを行います。希望者には送迎サービスもあります。

・短期入所生活介護(ショートステイ)
介護施設などに短期間宿泊し、生活の援助を受けることができるサービスです。本人のための利用に限らず、普段介護を行っている家族が家を空ける時や、介護疲れによる休息を取りたい場合(レスパイト)も利用することができます。

・福祉用具貸与および購入
車いすや歩行器、介護ベッドなどをレンタルすることができます。ただし、介護の必要性が比較的低い方が日常的に車いすなどを使う状況は考えにくく、また、それをすることによって運動能力の低下を招く原因にもなることから、原則として、車いすや介護ベッドなど一部のものについては要介護度の低い方は利用できません。

ポータブルトイレや、入浴補助用具(浴室内で使う椅子や浴槽に取り付ける手すりなど)の衛生用品については、レンタルではなく購入することになります。費用については年度合計10万円となっており、一部の費用は自己負担となります。さらに、壊れたり、介護状態が変化したといった理由がない限り、同じものを複数購入することは基本的には不可となっています。

・住宅改修
自宅での生活に転倒の不安などといった暮らしにくさを感じる場合は、住宅改修のサービスを利用することで生活環境を整えることができます。

対象となる工事は、「手すりの取り付け」や「開き戸から引き戸への変更」、「スロープ設置」などがあります。限度額は1人20万円(一部自己負担あり)となっていますが、引っ越したり、要介護度が3段階以上高くなるなど、条件がリセットされればさらに20万円まで利用することができます。

ただし、このサービスを利用するためには、事前に市区町村の窓口に対して工事内容などの申請を行う必要があります。そのうえで保険給付可能と判断されてから工事に取り掛かる必要があり、工事着工後に申請を行っても全額自己負担になってしまう点に注意が必要です。

施設サービス

自宅での生活が難しい場合、介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設(老健)に入所して生活することができます。この場合の自己負担は以下のとおりとなります。

介護サービスの自己負担額+食費+部屋代+日常生活費

このうち、食費や部屋代については低所得の方における負担額の上限が設けられているほか、食費・部屋代・日常生活費については施設によって金額が異なり、保険対象外となる点に注意しましょう。

地域密着型サービス

高齢になっても住み慣れた地域で暮らし続けられることを目的としていることから、原則としてその自治体に住む人だけが利用することができます。

具体的には、認知症のための介護が必要な方が暮らす認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や、訪問介護および通所介護などの役割を併せ持つ小規模多機能型居宅介護などがあります。いずれも定員は比較的小人数で、柔軟なサービスを提供する点が特徴となっています。

気になる自己負担割合は? 

介護サービスを利用した場合の自己負担割合は、第1号被保険者と第2号被保険者で以下のように異なります。

・第1号被保険者:サービス利用にかかった費用の1割、2割、3割のいずれか(前年の所得により決定)
・第2号被保険者:サービス利用にかかった費用の1割

介護サービスの現状と今後 

終の棲家といわれる介護老人福祉施設(特養)への申込者は約30万人にも上っています。しかし、原則として要介護3以上の方が対象であることから、なかなか入所できないという現実もあるようです。

そのため、本来であれば「入院などにより、一時的に自宅での生活が難しくなった方が在宅復帰を目指す」という位置付けである介護老人保健施設(老健)が「第2の特養」となりつつあるといった問題も浮上しています。ちなみに特養の入所については申し込み順ではなく、認知症の有無や家族状況などを総合的に判断して入所順位を決めることとなっています

介護保険制度はまだ成長途中であり、次回の制度改正(2024年)には大きな改正があるかもしれません。現在の介護保険制度の仕組みや問題点を知ることは、今後どのような形で制度を利用していけばよいか、さらに現在介護サービスの利用を考えている家族がいる際に非常に役立ちます。

自分もいずれは利用するかもしれない介護サービスの内容や、手続きの仕組みについてしっかりと理解しておきましょう。