新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

会社員の方であれば、年末調整で、自営業者であれば確定申告時に行う所得控除の中に「生命保険料控除」があります。この生命保険料控除については、2012年の改正により、「旧契約」そして「新契約」に分けられることとなりました。この2つは、控除額の計算において影響を及ぼすことから、しっかりと理解しておくことが大切です。

「旧契約」の制度内容

旧契約・新契約の生命保険料控除の計算方法
(画像=umaruchan4678/stock.adobe.com)

原則として、2011年の12月31日までに契約した生命保険を「旧契約」といいます。そしてこの「旧契約」には、「一般の生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2つが存在します。

一般の生命保険料控除

2011年の12月31日までに契約した、保険金および給付金の受取人が本人もしくは配偶者、その他親族である生命保険契約です。入院給付金やケガ、障害に関する保険金、所得補償保険金などが支払われる特約についてもこの「一般の生命保険料控除」の対象となります。

個人年金保険料控除

上の「一般の生命保険料控除」と別枠で適用される控除です。そしてその適用を受けるためには、以下の要件を満たし、さらに「個人年金保険料税制規格特約」が付加されたものである必要があります。

  1. 年金の受取人が保険料などの払込をする人、またはその配偶者であり、被保険者と同一人物であること

  2. 保険料などについては、年金の支払いを受けるまでに10年以上の期間に渡って定期的に支払う契約であること

  3. 年金の支払いについては、年金の受取人の年齢が、原則として満60歳以後になってから開始される10年以上の定期または終身年金であること(ただし、終身年金については支払い開始年齢に制限はありません)

個人年金保険において、一時払いの契約は個人年金保険料税制規格特約が適用されませんが、保険料の払込期間が10年以上であれば「前期前納」については、他の要件を満たせば適用されます。主契約については、この要件を満たした個人年金保険料控除を適用し、医療関連の特約を付加した場合の特約部分については、一般の生命保険料控除の対象となります。

控除額

旧契約における「一般の生命保険料控除」および「個人年金保険料控除」の所得税・住民税の控除額は以下のとおりとなっています。

(所得税)

年間の正味支払保険料控除額
2万5,000円以下支払保険料全額
2万5,000円超5万円以下支払保険料×1/2+1万2,500円
5万円超10万円以下支払保険料×1/4+2万5,000円
10万円超一律5万円

(住民税)

年間の正味支払保険料控除額
1万5,000円以下支払保険料全額
1万5,000円超4万円以下支払保険料×1/2+7,500円
4万円超7万円以下支払保険料×1/4+1万7,500円
7万円超一律3万5,000円

「新契約」の制度内容 

原則として2012年の1月1日以降に契約したものを「新契約」といいます。「新契約」においては、従来の「一般の生命保険料控除」および「個人年金保険料控除」に加え、「介護医療保険料控除」が導入されている点が特徴となっています。

一般の生命保険料控除

生命保険契約の内容については、旧制度と同じですが、障害特約や傷害特約、障害入院特約のような、不慮の事故による死亡保険金や障害保険金、入院給付金などが支払われる生命保険商品については、控除の対象外となる点に注意が必要です。

個人年金保険料控除

こちらも旧制度の個人年金保険料控除における契約内容と要件は同じです。ただし、傷害および障害関連の特約を付加した場合、その特約については一般の生命保険料控除の対象外となります。

介護医療保険料控除

2012年1月1日以降に締結された、医療保険や介護保険、所得補償保険などといった、病気やケガによる入院や手術、介護、就業不能を補償する生命保険商品の保険料が対象となります。これらの保険商品は「第三分野」と言われており、損保会社が引き受けているものも生命保険料控除の対象となります。

死亡保障と一体となっている契約については、死亡給付金が入院給付金日額の100倍以下、または保険料積立金または保険料累計額以下などの要件を満たせば、介護医療保険料控除の対象となります。したがって、3大疾病保障保険や死亡保険金と介護保険金が同額であるなどの介護保障保険については、介護医療保険料控除は適用されず、一般の生命保険料控除の対象となる点に注意が必要です。

控除額

これらの新制度の3つの保険料控除における、所得税および住民税における控除額は以下のとおりです。ただし、それぞれの控除額の上限については、所得税が4万円、住民税の場合は2万8,000円となることから、3つの保険料控除合計額は、所得税が12万円、住民税は7万円となります。

※住民税の上限はそれぞれ2万80,000円ですが、合計した場合は7万円が限度額となります

(所得税)

年間の正味支払保険料控除額
2万5,000円以下支払保険料全額
2万円超4万円以下支払保険料×1/2+1万円
4万円超8万円以下支払保険料×1/4+2万円
8万円超一律4万円

(住民税)

年間の正味支払保険料控除額
1万2,000円以下支払保険料全額
1万2,000円超3万2,000円以下支払保険料×1/2+6,000円
3万2,000円超5万6,000円以下支払保険料×1/4+1万4,000円
5万6,000円超一律2万8,000円

「新契約」の留意点

上で述べたとおり、2011年12月31日以前に契約したものについては、「旧契約」の生命保険料控除が適用されます。しかし、その契約について2012年1月1日以降に転換および主契約や特約の更新、アカウント型商品の保障の全部または一部見直し、特約の中途付加を行った契約については、その契約全体が「新契約」の保険料控除の適用対象となります。

ただし、障害特約や災害割り増し特約、災害入院特約のようなケガのみを保障する特約については、更新後に「新契約」となった後であれば、生命保険料控除の適用対象外となる点に注意が必要です。

また、契約者の名義変更や特約の中途付加でも、リビング・ニーズ特約や指定代理請求特約、保険料払込免除特約、個人年金保険料税制適格特約など、保障の無いものについては「新契約」とはみなされません。そして、特約の付加によらない保険金額の増減額や、契約者の名義変更についても「新契約」とはみなしません。

団体保険や団体年金については、その団体契約単位でいつ契約が行われたかで「旧契約」もしくは「新契約」の適用が判断されることとなります。したがって、団体年金の場合であれば、2012年の1月1日以降に新しく契約した人であっても、その生命保険料控除については「旧契約」が適用されるケースもあり得ます。

「旧契約」と「新契約」が混在する場合

現在加入している保険契約において、「旧契約」と「新契約」が混在する場合は、考え方が若干複雑になります。

これら2つの契約が混在している場合であっても、「旧契約」のみで控除額が所得税で5万円、住民税で3万5,000円を超えた場合は、それぞれ5万円および3万5,000円が適用され、2つの区分の合計控除額は所得税で10万円、住民税で7万円が限度となります。

それ以外のケースであれば、「旧契約」の控除額の算式で計算した控除額と、「新契約」の控除額の算式で計算した控除額を合計することとなります。その額は所得税で4万円、住民税で2万8,000円を限度とし、3つの区分の合計控除額は、所得税12万円、住民税は7万円が限度となります。

「旧契約」と「新契約」が混在する場合の所得税の計算例

2021年1月1日時点で、以下の保険に加入しているとした場合における、控除額の計算は以下のとおりとなります。ポイントはそれぞれの保険契約の契約年、更新や特約の中途付加内容です。

  1. がん保険(2000年に契約、年間保険料:3万6,000円、契約内容の変更なし)
  2. 終身保険(2004年に契約、年間保険料:6万円、契約内容の変更なし)
  3. 定期保険特約付終身保険(2005年に契約、年間保険料:24万円、2015年に更新し、年間保険料の内訳が終身保険:9万6,000円、定期保険特約部分:12万円、医療特約部分:2万4,000円に変更)
  4. 医療保険(2013年に契約、年間保険料:1万8,000円、特約なし)
  5. 個人年金保険(2000年に契約、年間保険料:6万円、税制規格特約付き)
  6. 個人年金保険料(2015年に契約、年間保険料:6万円、税制規格特約付き)

(旧契約:一般の生命保険料控除)
1のがん保険と2の終身保険が該当するため、これらの年間保険料合計額である9万6,000円を用い、旧契約の計算方法によって算出します(控除額:4万9,000円)。

(新契約:一般の生命保険料控除)
3の保険が2015年に更新されていることから、新契約に当てはまります。そしてそのうち、一般の生命保険料控除の対象となるのは終身保険部分と定期保険特約部分になります。これを新契約の計算式に当てはめて控除額を計算すると4万円が控除額となり、旧契約の方が控除額が多いため、旧契約の控除額である4万9,000円を適用します。

(旧契約:個人年金保険料控除)
5の保険が該当し、控除額は4万円となります。

(新契約:個人年金保険料控除)
6の保険が該当し、控除額は3万5,000円となります。この場合も旧契約の方が控除額が多いため、旧契約の控除額である4万円が適用されることとなります。

(新契約:介護医療保険料控除)
3の保険が2015年に更新されていることから新契約となり、入院給付金が支払われる特約が付いていることから介護医療保険料控除の対象となります。また、4の医療保険についても介護医療保険料控除の対象となるため、2つの年間支払保険料を計算式に当てはめ、控除額を算出します(控除額:3万500円)

これらの3つの控除額の合計
①4万9,000円(旧契約の一般の生命保険料控除)
②4万円(旧契約の個人年金保険料控除)
③3万500円(新契約の介護医療保険料控除)
である、11万9,500円が2021年度の生命保険料控除額となります。

生命保険料控除が拡大される?

2022年の税制改正の要望の中で、生命保険料控除の拡大が盛り込まれています。内容は、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除それぞれの限度額が現在4万円となっているところを5万円に拡大するというものです。

もし、この改正が認められれば生命保険料控除の控除額合計が現在の12万円から15万円となり、所得控除の枠が拡がることになります。その際の新旧制度の計算方法がどのようになるのかはこれから整備されていくと思われますが、今後において生活保障の準備としての保険の必要性が一層高まっていくと言えるのではないでしょうか。