新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

親の亡き後、住んでいた家を相続したものの、自分は別の場所に家を所有しており、当面その家に住む予定がないなどといった理由で、相続した家がそのまま空き家となっているケースが増えています。

空き家のままにしておくにはリスクが伴いますし、有効な利用方法について頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。実際に、このような空き家の割合は年々増加しており、その対策について真剣に考える必要に迫られています。

今後の少子高齢化により、この問題はますます大きくなっていくことが予想されることからも、空き家の現状や、空き家をそのまま保有しておくことのリスク、さらにはそのリスクをどのように回避していくことができるかについて、理解を深めておく必要があります。

「空き家」の現状

親の亡き後実家をどうする?空き家にしておくリスクとは?
(画像=英輔佐藤/stock.adobe.com)

最新の調査結果である平成30年住宅・土地統計調査によると、2018年10月1日現在における日本の総住宅数は6,242万戸となっており、1988年から2018年までの30年間では2,041万戸(48.6%)の増加となっています。

これに対し、居住世帯の無い住宅のうち、「空き家」は846万戸となっており、1988年からの30年間で452万戸(114.7%)の増加となっています。結果、総住宅数に占める空き家の割合、いわゆる空き家率については13.6%と過去最高となっており、実に日本の住宅における7戸に1戸が「空き家」となっていることが分かります。

空き家になった理由

また、上の調査を基に国土交通省が行っている「空き家所有者実態調査(令和元年)」によると、空き家となった住宅を取得した経緯について一番多いのが相続であり、54.6%と過半数を占めています。建て方についても戸建てが89.6%を占めており、マンションや共同住宅であれば賃貸用として利用できるものの、戸建ての場合は別荘や二次的な住宅としての位置づけが高いことが分かります。

ただし、利用目的が物置であるものや、長期不在、取り壊し予定となっている空き家の割合も多く、それらについては相続における名義変更の登記を行っていない家も多く見受けられます。

腐朽・破損状態について

空き家の状態について、腐朽・破損が見られるものについては全体の54.8%、逆に腐朽・破損がないものは39.2%となっており、利用も目的がある程度明確になっているものについては、管理がなされているものの、利用目的が決まっていない空き家については、約64.2%が腐朽・破損が見られる物件となっています。また、この割合は、建物の建築時期が古いほど多くなっていることが分かります。

空き家の管理者については、所有者やその親族の割合が88.1%を占め、ほぼ親族内で管理を行っていますが、その頻度については月に1度もしくは数回と回答した割合が36.4%と一番大きい割合を占める一方、年に1度もしくは数回と回答した割合が27.4%と、全体の4分の1を占めている点も見逃せません。

「空き家」のリスクにはどのようなものがある?

腐朽・破損状態が進んだ空き家を放置しておくことで、崩壊などの危険性があるほか、以下のようなリスクが指摘されています。

・犯罪の誘発
・衛生面での問題(ごみの不法投棄、害虫の発生など)

さらに上のような状態になった際には、所有者に対して無過失責任が問われる可能性がある点も覚えておきましょう。

特定空家としての認定とペナルティ

「崩壊の危険性がある」、「衛生上有害となる恐れがある」、もしくは「景観を損なっている」などその周辺の生活環境の保全を図るため、その空き家を放置することが不適切だと認められると、その空き家は「特定空家等」に認定されます。認定基準については国土交通省のガイドラインに基づいて、地域の特性に応じて定められています。

管理が行き届いていない空き家については、周りに危険がおよぶ可能性がある一方、個人の所有物であることから行政側としても関与できないという実態が問題視されていました。しかし、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策法)」により、行政が空き家問題の解決に取り組むことが可能となったことは注目すべきといえます。

この法律により、行政側は崩壊の恐れや法律上問題のある管理不全の空き家について、「特定空家等」に指定し、さらに必要に応じて、「撤去、修繕、立木材の伐採等措置の助言、指導、勧告、または命令を行うことができる」とされています。

そして、所有者側がそれに対応しない場合は、強制的な撤去作業である行政代執行による強制撤去(解体)を行うことが可能となり、代執行に要した撤去費用については、所有者が負担することとなります。

また、「特定空家等」に指定され、助言および指導を受けたにもかかわらず、それに従わない場合は勧告を受けることになります。勧告を受けると、固定資産税の負担軽減(住宅用地の軽減特例)の対象から除外され、通常であれば住宅用地における固定資産税において、敷地面積200㎡までは6分の1、1,200㎡を超える部分については3分の1まで減額される特例を受けることができなくなることから、固定資産税が最大6倍となる可能性があります。

さらに、命令に従わない場合は最大50万円の罰金が科され、それでも改善されない場合は行政代執行となり、緊急性が高いとみなされた家屋は解体されることになります。その際の費用はその家屋の所有者に請求される点については上で述べたとおりですが、従わない場合は資産が差し押さえられる可能性もあります。

これらのことから、空き家の所有者は自分の所有する空き家が「特定空家等」に指定されないよう、その管理を怠らないことを考える必要があります。

「空き家」を有効活用するための制度

現在、高齢者や低所得者、さらに災害の被災者や子育て世帯など、いわゆる要配慮者の中には、常に一定の住宅の確保が必要な人が存在します。

住宅セーフティネット制度

そこで始まったのが「住宅セーフティネット制度」です。2017年10月から始まったこの制度は、住宅の確保が必要な要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を登録し、都道府県などが住宅の確保を必要とする要配慮者に対して情報提供を行う仕組みとなっています。さらに、登録した住宅に対しては改修を支援し、さらに入居者に対しても家賃補助を行うなど経済的支援も行っています。

また、賃貸住宅への入居に係わる情報提供や相談、見守りなどの生活支援もこの制度の柱の一つとなっており、都道府県が、居住支援活動を行うNPO法人などを居住支援法人として指定できることになっています。

このような制度を利用し、改修費の支援を受けて幅広く借り手を募るという考え方も、空き家の活用を促す選択肢となるといえそうです。

「空き家」のリスクを回避するための相続対策

冒頭で述べたように、全国の「空き家」の数は増加の一途をたどっており、周辺の生活環境への影響が社会問題になりつつあります。また、最近の傾向として、子どもがそれぞれ独立して家を購入し、親の亡き後にその家が空き家になるというケースが目立っています。

このような問題対策の一環として、2016年度税制改正において、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されたことは注目すべき点といえます。

「空き家」の売却に関する特例

親の家を相続したものの、そこに住む予定はないという場合であれば、その「空き家」を売却した際には譲渡所得の特例控除を受けることができます。この特例は、相続した空き家とその敷地を売却した時に生じる譲渡益について、3,000万円まで所得税および住民税が控除されるというものです。

この特例が適用された際の譲渡所得の計算については、以下のとおりとなります。

譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用(取り壊し費用など)-特別控除3,000万円

なお、取得費が不明の場合は、譲渡価格の5%で計算されます。

特例の適用要件とは?

主な適用要件については、以下のとおりです。

・売却する「空き家」が被相続人の自宅であり、亡くなった日以降継続して「空き家」であること
・被相続人が一人で暮らしていた家であること
・区分所有登記がなされていないこと(戸建物件であること)
・その家屋が1981年5月31日以前に建築されたこと
・その家屋を耐震リフォームするか、更地にして譲渡すること
・売却価格が1億円以下であること、
・亡くなった日から3年後の年末までに売却すること
・家屋が空き家であったことを、市区町村によって証明できること

特例を利用する際の注意点

上の適用要件を満たしたとしても、以下のケースに当てはまる場合は特例が適用されない、もしくは適用されない可能性が高くなりますので注意が必要です。

・被相続人が老人ホームなどに入居しており、亡くなる前から空き家になっていたケース
・その家が賃貸併用住宅で、現在賃借人が居住しているケース
・区分所有の二世帯住宅となっているケース
・譲渡した相手が配偶者および直系血族、生計を共にする親族、もしくはそれらの人が株主の会社であるケース

実際にこの特例を利用したケース

(事例)
・高齢(80代)の母親が実家で一人暮らしをしているが、母親が亡くなった後は、実家に誰も戻る予定もなく空き家になることが分かっている。
・実家は築40年の戸建てで売却予定価格は6,000万円。(売却における譲渡費用は250万円を想定。
取得価格については不明であるため、売却価格の5%を適用。さらに建物取り壊し費用として200万円を想定。)
・母親の資産は預貯金600万円のみ(別途年金収入が10万円程度ある)。
・父親は既に亡くなっており、母親が死んだ後の相続人は子ども2人である。

この場合で、母親の死後に子ども2人が相続し、建物を取り壊して売却することで、特例を利用する際の要件を満たすこととなります。その場合のそれぞれの譲渡所得については、以下のとおりとなります。

  1. 売却価格:6,000万円×持分(1/2)=3,000万円
  2. 取得価格:6,000万円×5%×持分(1/2)=150万円
  3. 譲渡費用:(250万円+200万円)×持分(1/2)=225万円

これを上で紹介した計算式に当てはめると、子どもそれぞれの譲渡所得は
3,000万円-150万円-225万円-3,000万円の0円となります。

もし、相続人が子ども1人であった場合であれば、譲渡所得は
6,000万円-300万円-450万円-3,000万円=2,250万円となり、この額に譲渡税が課税されることとなります。

この特例を利用する際には、相続する子どもの人数や、実際に住んでいる人の要件などを考慮して考える必要があるといえるでしょう。

実家を売却する際に考えておくべきこと

また、実際に売却を考えるにあたり、被相続人が生存している間に行っておくべきことがあります。それは生前整理です。人間、いつ亡くなるかは誰にも予想はできません。だからこそ生前整理についてはできるうちに準備しておくことが大切です。

特に高齢になると、整理すること自体が負担となることから、動けるうちに少しずつ行っておく必要があります。実際に生活している家の中には、多くの物が存在します。それぞれどのような処分方法があるのか、以下にまとめてみましたので参考にしてください。

  1. 写真やアルバム:処分、もしくはデジタル化を行う方法があります。デジタル化を行う際にはそのようなサービスを行う業者に依頼してみましょう。

  2. 仏壇:お寺に対して「閉眼供養」や「魂抜き」も合わせて依頼することで、仏壇を引き取ってくれるケースがあります。また、仏壇に対して一括して供養処分を行ってくれる業者もありますので、そのような業者を探して依頼する方法もあります。

  1. 大きな家具:古い家であれば、家具も大きく重いものです。重い家具については自治体の大型ごみで処分する他、アンティーク家具などであれば、ネットオークションやフリマサイトなどを利用することで売れることがあります。

  2. 収集品:こだわりの収集品で、程度が良いものであれば、ネットオークションやフリマサイトを活用することで現金化できる可能性があります。記念硬貨など値が上がっているものもありますので、その品物ごとに対処法を考えてみましょう。

  1. 衣類:サイズが合わなくなったものなどは思い切って処分することを考えましょう。また、物を少なくすることを考え、衣類については必要最低限の量に留めておくことが大切です。

  2. その他:着物などが多ければ、買い取ってくれる業者に頼んでみましょう。早めに形見分けをしておくことも一案です。また、大量の消耗品ストックなどについては、親戚で分ける方法もありますが、それも難しければ処分する方がいいでしょう。

相続以外にできる対策

相続した「空き家」の売却に抵抗がある場合は、賃貸することで維持管理コストを賄い、収益物件化することも選択肢の一つです。その際には、「空き家」の有効活用を後押しする観点から国土交通省が支援している「全国版空き家・空き地バンク」を利用して賃貸する方法があります。

基本的には自治体が実施していますが、改修費の補助やお試し暮らしの助成金のほか、家賃補助などの支援策について多くの空き家バンクが取り組んでいます。

その他、空き家ビジネスとして「空き家の管理代行」、「空き家の仲介」、「空き家野賃貸物件化支援」などを行う業者も出てきています。また、民泊や時間貸し、移住促進の一環など、空き家の活用にはさまざまな方法があることを知っておきましょう。

空き家を作らない事前対策が大切

高齢化が進んだ現代では、親の死亡などで「空き家」の管理が必要になる頃には、自分自身もリタイアし、年金が主たる収入源となっている例も多く、そうなると「空き家」の維持管理などについては資金面でも大きな負担となります。住めない家は財産ではなく、むしろ自分たちのお金を奪っていく存在にもなりかねません。

親の亡き後に実家を相続したものの、子どもの頃に住んでいたこともあって愛着もあり、さらに家財道具や仏壇の処分方法についても悩ましいといった理由から売却への決断を先延ばしにしてしまい、その結果、空き家のまま放置しているといった状態が、空き家問題を悪化させている原因といえます。

まずは空き家のリスクを十分に理解するとともに、空き家になった際には速やかに取り壊すか流動化させることを考えましょう。一人暮らしの老人が亡くなった後、すぐに流動化できるよう事前登録を促す自治体もありますので、親の住んでいる自治体がどのような対策を取っているのかを知っておくことも大切です。

親の家が将来「空き家」になる可能性がある場合は、その対策について、家族で事前によく話し合っておきましょう。その際には、被相続人である親の意見をくみ取り、家の立地なども考慮に入れ、修繕および再活用することでその家が財産になる可能性があるかどうかも見据えたうえで、親や自分たちにとってどれが最善な方法なのかを決めることが大切です。