新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

2008年度の税制改正により導入された寄付金控除制度である「ふるさと納税」。導入当初の2009年度の控除適用者数は約3万となっていましたが、2021年度は552万人にのぼり、特にふるさと納税の制度改正が行われた直後の2016年度から急増しています。

それだけ、人々の関心が高まっているといえる「ふるさと納税」ですが、「ふるさと納税は節税になるのか」、さらには「住宅ローン控除との併用は可能なのか」といった質問もよく見られます。
そこで本記事では、ふるさと納税の仕組みや、住宅ローン控除との関係について、事例を用いて解説します。

ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合 

ふるさと納税とそれに関わる税制の知識について
(画像=umaruchan4678/stock.adobe.com)

まず、住宅ローン控除の適用を受けている期間中に、ふるさと納税による寄付金控除の適用も受けることができるのでしょうか。例として、以下のケースで考えてみましょう。

(例)
45歳男性
給与収入:700万円(他の収入はなし)
社会保険料控除額:105万円
今年の住宅ローン控除額:30万円
ふるさと納税額:7万2,000円
扶養控除:配偶者控除のみ
生命保険料控除および地震保険料控除については上限額まで利用するものとする。

なお、ふるさと納税を行った場合の寄付金控除は、所得税では「所得控除」、住民税では「税額控除」となり、控除の対象が異なる点に注意が必要です。

所得税

所得税における寄付金控除の額は、寄付金額の7万2,000円からふるさと納税の自己負担額である2,000円を引いた7万円となります。この金額を含めた所得控除を行った場合、最終的な課税所得金額は以下のとおりです。

1.給与収入700万円-給与所得控除額180万円=給与所得額520万円

2.給与所得額520万円-所得控除(社会保険料控除105万円+生命保険料控除12万円+地震保険料控除5万円+基礎控除48万円+配偶者控除38万円+寄付金控除7万円)=課税所得金額305万円

3.課税所得金額305万円に適用される税率は10%。さらに9万7,500円の控除があるため、最終的な税額は20万7,500円です。

住宅ローン控除額30万円はまず、所得税の税額から控除されるため、20万7,500円は全額控除となり、引き切れなかった部分については、住民税から引かれることになります。

住民税

住民税の計算は、給与所得金額および社会保険料控除までは所得税と同じです。ただ、それ以外の所得控除の額が所得税とは異なります。

1.給与所得額520万円-所得控除(社会保険料控除105万円+生命保険料控除7万円+地震保険料控除
2万5,000円+基礎控除43万円+配偶者控除33万円)=課税所得金額329万5,000円

2.住民税における所得割率は10%なので、課税所得金額329万5,000円×10%=32万9,500円が所得割額となり、そこから所得税で引き切れなかった住宅ローン控除額9万2,500円を差し引きます。
(実際の住民税額は所得割額に均等割額である5,000円が加算されますが、ここでは割愛します。)

そして、その後にふるさと納税における寄付金控除額が税額控除されます。その際の計算は「基本分」と「特例分」に分けられます。

まず、基本分はふるさと納税額から自己負担額を引いた額に、10%を乗じて計算するため、7万円×10%=7,000円となります。そして、特例分の計算は、ふるさと納税額から自己負担額を引いた額に、90%から適用された所得税の税率10%を引いた80%を乗じて計算することから、7万円×80%=5万6,000円になります。

最終的な住民税額は、32万9,500円からまず住宅ローン控除の残額9万2,500円を引き、さらにふるさと納税における控除額(基本分と特例分の合計6万3,000円)を差し引いた17万4,000円になります。

計算の中で、ふるさと納税における所得税での所得控除額(7万円×10%=7,000円)と、住民税の税額控除額(6万3,000円)を合計すると7万円となり、ふるさと納税の寄付金控除(自己負担額を除いた額)と一致することがお分かりいただけると思います。

住民税における控除額の計算

住民税におけるふるさと納税の寄付金控除の計算において、注意しなければならない点があります。

まず、基本分の計算においては、控除対象となる寄付金額に条件が設けられており、総所得金額等の30%が限度となっています。また、特例分の控除額については、住民税の所得割額の20%以内である必要があります。

上のケースの場合、給与所得などの所得の合計である総所得金額等の30%は156万円(520万円×0.3)ですので、上限以下となります。さらに、住民税の所得割額(課税所得金額329万5,000円×10%=32万9,500円)の20%は6万5,900円ですので、こちらについても上限以下に収まっています。

総所得金額の30%以上の寄付を行うケースあまりないと思いますが、住民税の所得割額の上限20%には要注意です。もしも上のケースで8万5,000円のふるさと納税を行っていた場合、特例分の控除額は((8万5,000円-自己負担分2,000)×80%)の6万6,400円となり、上限である6万5,900円を超えてしまいます。

ここまでの計算内容の詳細について、以下のとおり表にしてみました。

項目所得税額住民税(所得割額)
給与収入700万円700万円
給与所得控除額180万円180万円
給与所得金額520万円520万円
所得控除社会保険料控除105万円105万円
生命保険料控除12万円7万円
地震保険料控除5万円2万5,000円
基礎控除48万円43万円
配偶者控除38万円33万円
寄付金控除7万円0円
課税所得金額305万円329万5,000円
税額20万7,500円32万9,500円
税額控除住宅ローン控除20万7,500円9万2,500円
寄付金控除0円6万3,000円
差引税額0円17万4,000円

このように、住民税の所得割額から住宅ローン控除額とふるさと納税による寄付金控除額を差し引く場合はそれぞれ上限額が設けられているため、一定額までであれば重複して適用できます。

所得税から差し引けなかった住宅ローン控除額も住民税から差し引くことができ、さらにふるさと納税による控除も適用されることから、本来であれば32万9,500円だった住民税額が約半分の17万4,000円まで下がっていることが分かります。

ふるさと納税の真の意味

ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付を行い、その後寄付金控除にて寄付金額から自己負担額を差し引いた金額が税金から控除される制度です。したがって、節税になるわけではなく、しかも2,000円の自己負担が生じることになります。ただし、寄付をした自治体からの返礼品を受け取ることができるため、その返戻金の価値が2,000円を超えていれば得をしたと考えることができます。

真の意味からみると、ふるさと納税は節税ではなく、あくまでも住民税の先払いと考えれば納得できるのではないでしょうか。

確定申告を行う際の注意点 

ふるさと納税による寄付金控除を受けるためには、原則として確定申告を行う必要があります。しかし、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内であれば、寄付先の自治体に申請書を提出することで、確定申告不要で寄付金控除が適用される「ワンストップ特例」を利用することができます。

ただし、給与所得者など、そもそも確定申告の必要のない人が対象です。給与所得者であっても、医療費控除や雑損控除などを受ける場合は確定申告が必要ですので、その場合はワンストップ特例を利用することができません。

寄付金控除を受ける際の確定申告書の記載方法

所得税の寄付金控除については、確定申告書(第1表)の所得控除を記載する欄に、寄付金控除の金額を記載することで、寄付金控除を受けることができます。

ただし、住民税の寄付金控除については、確定申告書の第2表にある「寄付金控除に関する事項」と「住民税に関する事項」の該当欄「都道府県、市区町村への寄付(特例控除対象)」への2カ所に寄付金の金額を記入する必要があります。この2カ所への記入漏れがあると、住民税における寄付金控除が適用されない点に注意が必要です。

この第2表への記載を忘れていたために、住民税の税額控除を受けることができなかったというケースが散見されます。確定申告にてふるさと納税における寄付金控除を申告する際には、第2表の該当する2カ所への記入を忘れないようにしてください。