
自身や家族が高齢になった際や介護が必要になった際、どこに住むかを考える人は多いのではないでしょうか。人生の最後となる場所をどこで迎えるかについては、多くの人が抱えている不安ともいえます。
高齢者施設と呼ばれるものには公的機関が運営しているものと、民間企業が運営しているものがあり、それぞれで特徴や入居できる条件が異なります。
本記事では、現在用意されている高齢者施設について紹介するとともに、実際に選ぶ際のポイントについても解説します。
特別養護老人ホーム

公的な高齢者施設として知られているものに「特養」といわれる特別養護老人ホームがあります。分類上は「介護老人福祉施設」とされ、社会福祉法人や地方自治体が運用を行っています。特養では入浴や排せつ、食事などの介護や、日常生活における世話やリハビリ、健康管理や療養上のケアを受けることができます。
ただ、公的機関が運営しているという特性上、比較的費用が安く、一度入居できれば亡くなるまでそこで過ごすことができるといった理由から空きが少なく、待機期間が長い点が問題視されていました。
特養の待機状況
しかし、2015年に制度が改正され、原則として要介護3以上の状態にならないと申請できなくなってからは、比較的入居しやすくなるなど状況に変化が見られています。
なお、特別養護老人ホームには、定員を30名未満として、可能なかぎり自立した日常生活を送ることを目的とした「地域密着型介護老人福祉施設」もあります。
高齢者施設の種類
では、主な高齢者施設にはどのような種類のものがあるのでしょうか。運営主体別にその特徴などを紹介します。なお、表内に記載している費用は、地域や提供している事業者、そして提供しているサービスによって異なります。また、介護保険対象の介護サービスを受ける場合は、介護保険が適用されます。
公的施設
施設の名称 | 特徴・入所条件 | 入所費用(目安) | 月額利用料(目安) |
---|---|---|---|
特別養護老人ホーム | 寝たきりや認知症などで常時介護が必要な状態であり、自宅での介護が難しいと判断される高齢者(原則として要介護3以上であることが要件)が長期的に居住する施設。 | 不要 | 6~23万円程度 (所得により4段階に分類されている) |
介護老人保健施設 | 退院後などで、在宅復帰を目的としたリハビリを行う施設。 原則として65歳以上の要介護度1~5に該当する人が対象。 原則3ヶ月の入所期間が設けられており、期間が過ぎたら退所しなければならない。 | 不要 | 10~25万円程度 |
ケアハウス | 自立型(一般型)と介護型(特定型)に分かれる。 自立型は60歳以上の身寄りのない人もしくは家族との同所が難しい人が対象。 介護型は65歳以上の要介護者1~5の人が対象。 | 0円~数十万円程度 | 自立型:7~20万円程度 介護型:12~25万円程度(所得により異なる) |
民間施設
施設の名称 | 特徴・入所条件 | 入所費用(目安) | 月額利用料(目安) |
---|---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 主に介護を目的に入居する施設。特定施設入居者生活介護の指定を受け、介護職員が常駐している。 認知症や看取りに対応する施設も増加中。 | 0円~数千万円 (一部前払いや一括前払いなどを選択可能) | 13~40万円程度 |
グループホーム | 認知症の高齢者に特化した小規模の介護施設。 利用する際には施設と同一市区町村内に住民票があることが条件。 | 0円~50万円程度 | 10~30万円程度 (介護費用および日常生活費を含む) |
サービス付き高齢者向け住宅 | 見守りや安否確認などの生活相談サービスが付加したバリアフリーの賃貸住宅。 生活費は自宅で過ごす場合と同様にかかり、介護費用も別途必要となる。 | 0円~数十万円 | 10~20万円程度 (家賃や管理費など) 食費などの生活費が別途必要 |
最近注目されているケアハウスとは?
ケアハウスとは、「軽費老人ホーム」の一つに位置付けられている施設です。経費老人ホームとは、厚生労働省により、「無料または低額な料金で身体機能の低下などにより自立した日常生活を送ることについての不安があると認められる人で、家族による援助を受けることが困難な人を入所対象とし、食事の提供や入浴等の準備、さまざまな相談および援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上必要な便宜を提供する」施設と定義されています。
軽費老人ホームには、大きく分けて「食事サービスの提供があるA型」、「自炊するB型」、そして「食費および生活支援サービスの付いたケアハウス」の3つのタイプがあり、都市部では、低所得者を対象とした居室面積を狭くして利用料を抑えた「都市型軽費老人ホーム」も増えています。
また、ケアハウスには「自立型(一般型)」と「介護型(特定型)」があり、無料または比較的低額な料金で利用できる点が特徴となっています。したがって、年金収入の少ない低所得者や、身寄りのない高齢夫婦、単身者などが向いているといえるでしょう。
自立型(一般型)
自立型は主に自立した一人暮らしの生活に不安のある高齢者を対象としています。したがって、介護が必要となった際には訪問介護や通所介護などの在宅サービスを利用することが原則とされており、介護度が進むと施設から退去せざるを得なくなります。そうなると改めて施設を探す必要が発生する点には注意が必要です。
介護型(特定型)
介護型は、「特定施設入居者生活介護」または「介護予防特定施設入居者生活介護」の指定を受け、65歳以上かつ要介護1以上の高齢者を受け入れています。
また、数は少ないものの「自立型」と「介護型」両方の特徴を兼ねた「混合型」といわれるケアハウスもあります。混合型であれば、自立から要介護まで一貫して住み続けることができるため、今後ケアハウスの利用を考えているならば、ぜひ知っておきたい情報です。
ケアハウスのデメリット
一見メリットばかりが目立つケアハウスですが、デメリットも存在します。それは居住空間が狭いということです。ちなみにケアハウスの居室の設置基準は単身者で21.6㎡以上、都市型軽費老人ホームでは7.43㎡以上となっています。
また、60歳からの入居が可能とはいえ、利用者の年齢が比較的高いことから、60代の人にとっては暮らしにくいといった点もデメリットといえるでしょう。
多様化する高齢者施設
民間企業が運営する「有料老人ホーム」にも、「住宅型(在宅型)」と「介護付」があります。住宅型有料老人ホームは、介護が必要になった際には別途介護サービスを契約する必要があります。これはシニア向けマンションも同様です。これに対し、「介護付」の場合は介護サービスを一定の上乗せ費用で受けることができ、認知症や看取りまで対応してもらえます。
そして、認知症の人が共同で暮らせるのがグループホームです。介護保険上では「認知症対応型共同生活介護」と位置付けられており、認知症の高齢者が5~9人の少人数で共同生活を送りながら、身体介護や機能訓練などを受けることができます。
しかし、定員が少ないため、待機期間が長い点がデメリットであり、施設の規模が小さいことからも、介護や医療の面での充実度は介護付有料老人ホームの方が勝っています。
また、最近急速に増えてきた高齢者向けの住宅が、サービス付き高齢者向け住宅です。ただし、シニア向けマンションと同様にあくまでも「住宅」としての位置づけであることから、介護が必要になれば別途介護費用が発生する点は覚えておきましょう。
介護付有料老人ホームよりも初期費用が安く抑えられ、比較的施設数も多いことから待機期間もなく入居ができるといった理由で、特養やケアハウスの待機期間中の一時的な入居先としての候補の1つになるといえそうです。
高齢者施設を選ぶ際のポイント
高齢者施設は多様化の一途を辿っており、住み替えの際の費用面だけでなく、その施設の情報収集をしっかり行っておくことが大切です。インターネット上でも高齢者施設の検索が可能で、希望条件を入力することで施設情報を絞り込むことができます。
施設を選ぶ際、多くの人は「介護にどれだけ対応してくれるか」を一番に考える傾向がありますが、医療面の充実さを見落とさないようにすることがポイントです。医療行為が必要になった際、どのように対応してくれるのかを確認することも忘れないようにしましょう。
そして、介護度が進んだ場合や医療の対処が必要となった場合、さらには看取りまでを希望する場合など将来のケースを想定して情報を収集し、最終的に利用する施設を家族と相談しながら選ぶことが大切です。