片岡 雄介
片岡 雄介
株式会社シー・エフ・ネッツ
大学卒業後、新築マンション販売営業、賃貸仲介営業を経て、2011年、シー・エフ・ネッツグループへ入社。賃貸不動産の管理業務に従事する。現在、賃貸管理部門であるシー・エフ・ビルマネジメントのリーダーを務める。

コロナ禍の終息が見えない現在、ファクタリングが好調です。

世界のファクタリング市場は、2020年に約3,343億米ドルの規模に達し、2021年から2026年までの間、年平均成長率は約6%で成長すると予測されています。また、日本におけるファクタリングの市場規模は、2020年に約1,300億円と前年比で約1.9倍もの増加でした。

日本において馴染みのないファクタリングですが、その歴史は意外に古く、アメリカでは1960年頃から急成長、日本では1972年に開始されています。

なぜ今、ファクタリングが注目されているのでしょうか。

本記事では、日本のみならず世界で注目を集めるファクタリングとは何か、事業者がファクタリングを利用するメリットとデメリット、そして事業者がファクタリング事業を行う際のメリットとデメリットを解説します。

そもそもファクタリングとは何なのか

世界規模で好調。中小企業の新潤滑油“ファクタリング”とは何か
(画像=wladimir1804/stock.adobe.com)

ファクタリングとは、日本語で売掛債権買取業務と表記し、債権の売買契約、譲渡契約が法的根拠となっています。そしてこの債権の売買契約、譲渡契約を基にして手数料収入を得るのがファクタリング事業です。

ファクタリングを事業として行う際、貸金業や債権回収業と異なり免許・登録は不要ですが、扱う債権の中には必要となるものもあるため注意しなければなりません。

給与などの賃金債権を対象としたファクタリングは貸付に該当するため、もし給与ファクタリングを行うならば貸金業の登録が必要となります(東京地方裁判所令和2年3月24日判決)。

現在の日本においてファクタリング事業を行うにあたり、免許や登録が不要な主な債権は次の通りです。

  • 国内事業者に対する売掛金債権(物品売買、サービス提供)
  • 割賦代金債権
  • 工事請負代金債権
  • 診療報酬債権
  • 運送料債権
  • その他の報酬債権

上記のように免許や登録が不要なファクタリング事業の対象となる債権には、事業者間で行われる大抵の経済取引が含まれています。このように対象となる債権が多いことから、ファクタリングは事業としての成り立ちやすさがあります。

ファクタリングのお金の流れには二通りある

ファクタリングの手続きやお金の流れについて解説します。

ファクタリングには、大きく分けて三者間取引と二者間取引があり、以下の二つの例が一般的です。
(以下、資金調達のためファクタリングを利用する者を「ファクタリング利用者」、ファクタリングを事業として行う者を「ファクタリング会社」とします。)

三者間取引の例

  1. ファクタリング利用者は、Z社に対し、売掛金50万円の債権があるが、弁済期日は1ヶ月先である

  2. ファクタリング利用者は、資金繰りが厳しいため、1ヶ月先まで待つほど手元資金に余裕がない

  3. ファクタリング利用者は、資金調達のため、三者間取引のファクタリングを利用することを決め、ファクタリング会社に相談する

  4. ファクタリング利用者が、ファクタリング会社の審査に通過する

  5. ファクタリング利用者は、Z社に対し、ファクタリング契約を通知し、Z社はこれを承諾する

  6. ファクタリング会社とファクタリング利用者とZ社との三者間で、ファクタリング契約を締結する(=ファクタリング利用者が有する上記1の売掛債権を、ファクタリング会社へ譲渡)

  7. ファクタリング会社は、ファクタリング利用者に対し、50万円に対する手数料3%を差し引いた額の48万5,000円を売掛債権譲渡の対価として支払う

  8. Z社は、ファクタリング会社に対し、弁済期日に売掛金50万円を支払う

  9. ファクタリング会社は、1万5,000円の利益を得る

ファクタリングの三者間取引はこのような流れで進みます。

もしZ社がファクタリング会社に対し、8の売掛金50万円を支払わなければ、ファクタリング会社はZ社に対し、譲渡された売掛債権を基に債権回収を図ります。

※金額とパーセントは仮

二者間取引の例

  1. ファクタリング利用者は、Z社に対し売掛金50万円の債権があるが、弁済期日は1ヶ月先である

  2. ファクタリング利用者は、資金繰りが厳しいため、1ヶ月先まで待つほど手元資金に余裕がない

  3. ファクタリング利用者は、資金調達のため、二者間取引のファクタリングを利用することを決め、ファクタリング会社に相談する

  4. ファクタリング利用者が、ファクタリング会社の審査に通過する

  5. ファクタリング会社は、上記1の売掛金50万円を、ファクタリング利用者から買い取る

  6. ファクタリング会社は、ファクタリング利用者に対し、50万円に対する手数料15%を差し引いた額の42万5,000円を、上記5の売買代金として支払う

  7. ファクタリング会社とファクタリング利用者との間で、売掛金50万円の集金代行委託契約を締結する

  8. ファクタリング利用者は、Z社から、弁済期日に上記1の売掛金50万円を回収する

  9. ファクタリング利用者は、ファクタリング会社に対し、回収した売掛金50万円を支払う

  10. ファクタリング会社は、7万5,000円の利益を得る

ファクタリングの二者間取引はこのような流れで進みます。二者間取引は、三者間取引に比べて手続きが簡便ですが、手数料が割高になっているのはなぜでしょうか。

※金額とパーセントは仮

二者間取引の手数料が高い理由はリスクヘッジ

もしZ社がファクタリング利用者へ8の50万円を支払わなければ、ファクタリング利用者はファクタリング会社へ50万円を支払う必要はありません。

このときのファクタリング利用者は、ファクタリング会社から売掛金50万円の集金代行を委託されている存在に過ぎないからです。

二者間取引は、三者間取引のような売掛債権の債権譲渡ではありません。ファクタリング会社が売掛金を売買契約によりファクタリング利用者から買い取っているのです(民法第555条)。

そのためファクタリング会社は、ファクタリング利用者とZ社に対し債権を有しておらず、両者どちらに対しても回収を図ることが出来ません。するとファクタリング会社は、6で支払った42万5,000円の損失を抱えることになります。

このように二者間取引の場合、ファクタリング会社が損失を被る可能性が三者間取引と比較して高いことから、手数料が割高となっているのです。

ファクタリング会社にとって、三者間取引は低リスク・低リターン、二者間取引は高リスク・高リターンだと言えます。

コロナ禍の日本の倒産件数は57年ぶりの低さ

2022年1月13日付の日本経済新聞に、「2021年の企業倒産、57年ぶり低水準22%減の6030件」との記事が出ました。

新型コロナウイルスの拡大当初、リーマンショック並みの企業倒産件数が予想されていましたが、なぜこのような結果となったのでしょうか。

それは国が、コロナ禍による倒産件数を出来る限り抑えようとしているためです。日本政策金融公庫の無担保低利率の貸付や、事業者に対する助成金・給付金によって57年ぶりの倒産件数の少なさとなっています。

しかし、このコロナ禍からくる国の支援制度もいつかは終わりを迎えます。

日本企業の起業5年以内の生存率は約80%

2017年の中小企業庁のデータによると、日本企業の廃業率は他の先進諸国(米・英・独・仏)と比較して低いものの、起業後5年後には約20%もの企業が廃業しています。

このデータは、株式会社帝国データバンクの調査を基にしているため、廃業届を出していない事業者や同社のデータにない事業者を加えれば、廃業率はさらに高くなるでしょう。

この高い廃業率からも分かるように、コロナ禍の終わりが見えない今、国の支援制度で持ちこたえている事業者は少なくないはずです。厳しい資金繰りに耐えている事業者の中には、売掛債権を弁済期日よりも前に即現金化したいと強く思う者も数多くいるのではないでしょうか。

このときの資金調達の一つとして注目されているのがファクタリングなのです。

ファクタリング利用者 ファクタリングのメリットとデメリット

今すぐの資金調達に迫られている事業者が、ファクタリングを利用する主なメリットとして以下が挙げられます。

  • 借入金ではないため、信用情報に傷がつかない
  • 二者間取引の場合、取引先に資金繰りが厳しいことを知られない
  • 銀行と比較して、審査から入金までが迅速なため急場を凌ぎやすい

反対にデメリットとしては以下が挙げられます。

  • 手数料が高額なファクタリング会社を利用すると、資金繰りが余計に悪化する
  • 三者間取引の場合、取引先に資金繰りが厳しいことを知られる
  • 詐欺に遭う可能性がある

ファクタリング会社の中には、手数料を当初の設定金額よりも大きく値上げするなど、ファクタリング利用者の弱みに付け込む悪質業者が存在するのも事実です。

またファクタリング会社が手続きに不慣れな場合、ファクタリング利用者が二者間取引を希望したにも関わらず、手違いから三者間取引の手続きを取られてしまい、結果、取引先に資金繰りの悪化を知られてしまうということもあります。

ファクタリングを利用するメリットはあるものの、こういった更なる事態悪化を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。

万一のときに備えてファクタリング会社を事前にピックアップ

ファクタリング会社と一言でいっても、その規模や信頼性は様々です。

今後、資金繰りが厳しいことが予想される事業者は、前もってファクタリング会社の中から信頼できる会社を抽出しておき、いざという時に備えて即依頼できる準備を整えておくと良いでしょう。

ファクタリングの利用を迫られる段階になると、限られた時間と追い詰められた精神状態で、多くのファクタリング会社から適切な会社を選択することは困難です。

またファクタリング利用者が、自身に適したファクタリング会社を選択したとしても、ファクタリング会社の審査を通過しないこともあります。

不適切な会社を選択しないよう、そして審査に落ちたときのため、事前に候補となるファクタリング会社を複数社リストアップしておくことが望ましいでしょう。

ファクタリング会社 ファクタリングのメリットとデメリット

続いてファクタリングを事業として行う側であるファクタリング会社のメリットとデメリットについて見ていきます。

現在、ファクタリングを規制する法律はなく、貸金業や債権回収業と異なり免許や登録が不要なため、資金とノウハウさえあれば誰でもすぐに事業を開始できるメリットがあります。

そして二者間取引の場合、貸金業や三者間取引と比べて、一度の取引で多くの手数料収入を得ることが可能です。一方、三者間取引は手数料収入が二者間取引より少ないものの、回収不能となる可能性は低く安定した収入を得られるメリットがあります。

しかし、ファクタリング会社も詐欺に遭う可能性があります。特に二者間取引の場合、ファクタリング利用者が初めからファクタリング会社へ支払うつもりはなくそのままお金を持ち逃げしてしまうこともあります。

またファクタリングは、主に資金繰りの厳しい中小企業や個人事業主を相手にする事業です。そのため、回収が出来ず焦げ付きが発生する可能性もあります。

このような損失を出さないためには、銀行のように審査に時間をかけてファクタリング利用者と売掛先を調査する必要がありますが、ファクタリングのメリットの一つが迅速な資金調達です。

もし審査に何日も要してしまうとファクタリング利用者から断りが入り、スピード審査を売りにする競合他社に後れを取るでしょう。

ファクタリング会社には、手数料収入と損失額それぞれのバランスを考慮しての速やかな審査が求められるのです。

日本は国を挙げてファクタリングを推奨

先に述べたように現在の日本のファクタリング市場は活発ですが、なぜ市場が盛り上がっているのでしょうか。

それは国の後押しがあるためです。

三者間取引は民法第466条債権の譲渡性が根拠となっていますが、改正前民法の第466条2項には、「当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。」との規定がありました。

この条文に基づき、三者間取引においては、事業者間の取引に債権譲渡禁止特約が付されている場合や、売掛先がファクタリングを拒んだ場合は、ファクタリングが成立しないという状況だったのです。

法改正によりファクタリング市場は活発化

2018年12月8日、経済産業省中小企業庁は、中小企業者に対し資金調達の一つとしてのファクタリングの普及を進めるため、下請中小企業振興法を一部改正し施行しました。

事業者間で債権譲渡禁止特約を締結していたとしても、一定の基準を満たせば、債権譲渡を禁止しない内容にするよう努めるとするものです。ただし、この改正下請中小企業振興法はあくまで努力義務に過ぎず、売掛先が債権譲渡を断ることも出来ました。

しかし2020年4月1日の民法改正により大きく変わります。民法改正前は、債権譲渡制限特約が付されていた場合、債権譲渡は無効とされ、これがファクタリング事業の大きな障壁となっていました。それが民法改正後は、債権譲渡制限特約が付されていたとしても、債権譲渡が原則有効となったのです(改正民法第466条2項)。

この一連の法改正の流れは、国がファクタリングの推進を意図したものと言っても過言ではないでしょう。

コロナ禍ではファクタリングも一つの手段

現在の日本は、倒産件数が大きく抑えられていますが、日本政策金融公庫の貸付金の返済期日の到来、国の助成金や給付金の有無等で、中小事業者の行く末はまだまだ多難です。この混迷の中、突如脚光を浴びたファクタリングは経営難に陥っている事業者にとって一つの明かりとなっています。

そしてファクタリングは国が推進していることから更なる普及と市場の拡大が見込まれ、ファクタリングを事業として行う者にとっても良い傾向が見られます。

今後、資金繰りに悩む事業者、また新規事業の展開を考える事業者は、それぞれの立場からファクタリングを検討することも一つの手段ではないでしょうか。

ただし、ファクタリングを利用するにあたっては、双方共に慎重な見極めが求められることを留意しておかなければなりません。

ファクタリングに関するよくある質問

Q.ファクタリング事業とは?

日本語で売掛債権買取業務と表記し、債権の売買契約、譲渡契約が法的根拠となっています。そしてこの債権の売買契約、譲渡契約を基にして手数料収入を得るのがファクタリング事業です。

Q. ファクタリング市場が盛り上がっている背景は?

2018年12月8日、経済産業省中小企業庁が、中小企業者に対し資金調達の一つとしてのファクタリングの普及を進めるため、下請中小企業振興法を一部改正したことにより、市場が活性化してきています。