新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

2021年6月に公布された法改正により、2022年4月1日よりその内容が段階的に施行されます。特に大きな注目を集めているのが、2022年10月より導入される男性の産休制度ではないでしょうか。
本記事では、出産や育児関連の制度、現状の利用状況を踏まえ、今後の変更点について解説します。

日本における少子化の現状 

男性の育児休業の取得加速となるか?改正育児・介護休業法のポイント
(画像=siro46/stock.adobe.com)

厚生労働省が発表している「人口動態統計(2020年)」によると、2020年の出生数は約84万人と、前年比で約2万4,000人の減少となり、調査が開始された1899年以来で最低水準になったことが分かりました。

2021年には80万人を下回るのではないかとの声も上がっており、この状況が長びくほど日本経済の低迷や、社会保障制度の行き詰まりなどといったさまざまな影響が出る可能性があります。

また、労働政策研究・研修機構が発表している労働統計(2022年2月22日更新データ)によると、共働き世帯は1,247万世帯に上っており、専業主婦世帯の566万世帯を大きく上回っています。

このような背景から、現在では男女ともに仕事と子育てを両立できるよう、労働基準法と育児・介護休業法のそれぞれで制度の整備が進んでいます。自身のライフプランを考えるうえで育児休業は大切な項目であることからも、制度の内容を十分に理解しておく必要があるといえるでしょう。

現行の育児・介護休業法の概要 

現行の労働基準法、そして育児・介護休業法の制度はどのようになっているのでしょうか。それぞれについて見ていきましょう。

労働基準法

労働基準法においては、まず妊娠が判明した際にはできるだけ軽易な業務への転換を行うこととしています。さらに時間外や休日労働、深夜業務の制限が行われます。そして、産前(出産予定日)6週間前から産前休業に入ることができます。

産後8週間は産後休業の取得が認められており、子どもが1歳になるまでは1日2回、各30分以上の育児時間を請求できることになっています。また、子どもが1歳になるまで時間外や休日労働、深夜業務の制限は続きます。

育児・介護休業法

育児・介護休業法では、出産後から育児休業が認められています。これは、原則として子どもが1歳に達する日(誕生日の前日))まで認められている、「子どもを養育する労働者が取得できる休業制度」で、男性、女性ともに原則1回までの取得が可能です。

なお、子どもが1歳に達する日に「保育所に入所できない」などといった理由がある場合は、1歳6カ月(再延長で2歳)まで延長することができます。

さらに子どもが3歳になるまでは、「所定労働時間の短縮措置」や「所定外労働の制限」が認められ、子どもが就学するまでは「子の看護休暇」や「時間外労働や深夜業務の制限」が認められています。

子の看護休暇とは、就学前の子どもが病気やケガなどの場合や、予防接種や健康診断を受けさせる場合に、年次で定められている有給休暇とは別に取得できる休暇です。

以前は、取得単位が半日だったり、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できないといった状況にありましたが、2021年1月より、時間単位での取得が可能となったほか、労働時間による制限がなくなったことにより、全ての労働者が取得できることになりました。

そして、「パパ休暇」や「パパ・ママ育休プラス」といった制度も設けられています。パパ休暇とは、原則1回までの育児休業の取得において、子どもが産まれた後、父親が8週間以内に育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても再度育児休業を取得できる制度です。

そして、パパ・ママ育休プラスとは、両親がともに育児休業を取得する場合、一定の要件を満たした際には子どもの年齢が1歳2カ月まで取得期間が延長されるといった制度です。

育児休業取得の現状

上で説明した通り、育児休業は男女ともに取得が可能です。しかし、厚生労働省が発表している「雇用均等基本調査(令和2年度)」をみると、2018年10月1日から2019年9月30日までの1年間に在職しており、在職中に出産した女性のうち、2020年10月1日までに育児休業を開始した人(申し出も含む)の割合が81.6%であるのに対し、男性は12.65%にとどまっています。

また、このうち、育児休暇期間が5日未満の取得者の割合は28.33%となっており、男性の取得率がいかに少ないかが分かります。

とはいえ、男性の育児休暇取得率は前年度よりも5.17%増加しており、これまでの推移からみてもかなりの上昇率となっています。そして、政府は2025年には男性の育児休暇取得率が30%になることを目標にしています。

改正育児・介護休業法のポイント 

育児休業取得の現状を受け、この度2021年6月に公布されたのが「改正育児・介護休業法」です。この趣旨は、労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児を両立可能にするため、子どもが産まれた直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設や、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備にあります。

雇用環境整備と労働者に対する周知などの義務化(2022年4月1日施行)

これまでは個別周知の努力義務のみだったものが、以下のとおり改正されました。

  1. 育児休業の申し出および取得を円滑にするための、雇用環境整備に関する措置を講ずることを事業主に義務付け

  2. 妊娠および出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対し、個別の制度周知および休業取得意向のための措置を講ずることを事業主に義務付け

また、有期雇用労働者の要件も以下のとおり緩和されることになります。
これまでは「引き続き雇用された期間が1年以上あること」と、「1歳6カ月までの間に契約が終了することが明らかでない」ことが要件でしたが、

  1. 有期雇用労働者が育児休業を取得する際の要件である「引き続き雇用された期間が1年以上」を廃止する

ことが決定しました。

男性の育児休業取得促進のための取り組み(2022年10月1日施行)

子どもが産まれた後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組みを創設することとし、具体的に以下のような取り組みが盛り込まれています。

  1. 休業の申し出期限を原則として休業の2週間前までとする
  2. 分割して取得できる回数を2回とする
  3. 労使協定を締結している場合には、個別合意によって事前に調整したうえで休業中の就業を可能とする
  4. 男性の育児休業取得促進のため、育児休業給付の規定を整備する

これによって、これまで分割取得が原則不可とされていた育児休業の分割取得が可能となったほか、休業中にも就業が可能となることから、男性も育児休業を取得しやすい環境になることが予想されます。

育児休業取得状況公表の義務化(2023年4月1日)

これまでは子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受けている企業の一部が公表の対象となっていましたが、2023年4月からは労働者数が1,000人を超える事業主全てに義務付けられます。

  1. 常時雇用する労働者数が1,000人を超える事業主に対し、育児休業の取得状況について公表することを義務付け

今後の給付制度についても確認が必要 

今回の法改正を受け、雇用保険の育児休業給付についても検討が行われています。育児休業給付については、既に2021年9月より、被保険者期間の計算の起算点に関する特例が設けられていますが、今後は今回の改正内容が育児休業給付の対象(給付率について、180日間までは67%)となるように、雇用保険上の手当ても行われることになっています。

現時点ではまだ正式な発表はありませんが、規定整備については2022年10月1日施行となっているため、それまでの動向をチェックしておく必要があるといえそうです。