新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

地震保険料については、2017年、2019年、2021年の3段階で合計14.7%の値上げとなっていましたが、2022年10月に0.7%の引き下げを行うことが決まっています。本記事では、これまでの保険料が大幅に値上げとなっていた背景や、保険料算出の仕組み、さらに今回の値下げが行われる理由についても解説します。

地震保険とは 

2022年10月に0.7%値下げ?地震保険料の算出の仕組みとは
(画像=SUNGYOON/stock.adobe.com)

地震保険とは、地震や噴火もしくはこれらによる津波を原因とする火災や損壊、埋没または流失によって保険の対象物に発生した損害を補償する保険です。地震などによる被災者の生活の安定に寄与することを目的とし、民間保険会社が負担する地震保険責任の一定額以上の巨額な損害額を政府が再保険することによって成り立っており、公共性の高い保険といえます。

保険金額は主契約である火災保険金額の30~50%の範囲内で任意に設定できます。ただし、建物については5,000万円、家財は1,000万円が上限となっており、1個または1組の価額が30万円超の貴金属や宝石などは補償の対象外となる点に注意しておきましょう。

保険料の算出方法の違い

基本的に、損害保険では合理的かつ妥当で、不当に差別的でないという「保険料率の3大原則」を用いて保険料の算出が行われています。しかし、地震保険においては地震の発生数が他の災害に比べて少なく、さらに地震の規模や、どこで発生するかという地域差によって損害の大きさが極端に異なるという特徴があります。

そのため、地震保険料率については、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づき、損害保険料率算出機構が算出した基準料率が用いられており、加入する損害保険会社によって異なることなく、一律に設定されています。

また、地震保険の契約対象は、地震保険法に基づき「居住の用に供する建物または生活用動産」に限られることも覚えておきましょう。

保険金の支払い割合

地震保険では、損害の程度が「全損」「大半損」「小半損」「一部損」のいずれかに該当する場合に保険金が支払われます。

支払いの対象となる損害の形態としては、地震に起因する火災によって生じた焼失や、液化状によって生じた倒壊や破損、地震や噴火に起因する地滑りや山崩れ、がけ崩れまたは泥流や土石流などによって生じた損壊や埋没、流失のほか、地震または噴火による津波に起因する損壊または埋没、流失や浸水の損害等が挙げられます。

支払われる保険金は、損害の状況によって以下のようになっています。

建物の損害額家財の損害額保険金の支払い割合
全損・主要構造部の損害額:建物の時価の50%以上
・焼失および流失した部分の床面積:建物の延べ床面積の70%以上
家財の時価の80%以上契約金額の100%
(時価を上限とする)
大半損・主要構造部の損害額:建物の時価の40~50%未満
・焼失および流失した部分の床面積:建物の延べ床面積の50~70%未満
家財の時価の60~80%未満契約金額の60%
(時価の60%上限とする)
小半損・主要構造部の損害額:建物の時価の20~40%未満
・焼失および流失した部分の床面積:建物の延べ床面積の20~50%未満
家財の時価の30~60%未満契約金額の300%
(時価の30%上限とする)
一部損・主要構造部の損害額:建物の時価の3~20%未満
・全損・大半損・小半損に至らない建物:床上浸水(または地盤面から45㎝を超える浸水)
家財の時価の10~30%未満契約金額の5%
(時価の5%上限とする)

保険料値上げの背景と値下げの理由

これまでの地震保険料値上げの背景には、将来的な災害リスクの高まりがあります。2011年の東日本大震災の影響や南海トラフ巨大地震の被害予測の影響を踏まえて2015年に値上げが決定し、当初は3段階で19%の値上げを見込んでいました。

その後、耐震性の高い住宅の普及や地震リスクなど、地震に関する各種データが更新され、最終的に14.7%の値上げに落ち着いたという経緯があります。

地震保険料の算出の基礎となるデータには、「震源モデル」「地盤データ」「住宅・土地統計調査」「地震保険契約データ」などがありますが、震源モデルについては地震調査研究推進本部が作成する「確率論的地震動予測地図」が採用されています。

保険料の算出方法

保険料算出の基となる基本料率は、「基本料率×割引(100%-割引率)×長期係数」で算出されます。基本料率は、割引および長期係数を適用する前の料率で、建物の所在地(都道府県)や建物構造(イ構造もしくはロ構造)により異なります。

保険料値下げの理由

基本料率を2021年1月と比較してみると、2022年度改定後は全国平均で0.7%の引下げとなります。

【2022年10月以降の保険料】
保険期間1年、地震保険金額1,000万円あたりの保険料額(建物および家財に適用)

都道府県建物の構造区分
イ構造ロ構造
北海道、青森県、岩手県、秋田県、山形県、
栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、
福井県、長野県、岐阜県、滋賀県、京都府、
兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、岡山県、
広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、
熊本県、大分県、鹿児島県
7,300円11,200円
宮城県、福島県、山梨県、愛知県、三重県、
大阪府、和歌山県、香川県、愛媛県、宮崎県、
沖縄県
11,600円19,500円
茨城県、徳島県、高知県23,000円41,100円
埼玉県26,500円
千葉県、東京都、神奈川県、静岡県27,500円
※イ構造:主としてコンクリート造、鉄骨造の建物
※ロ構造:主として木造の建物

都道府県別にみると、最大の引下げ幅となる大分県のロ構造で、マイナス47.2%となります。その一方で、茨城県・埼玉県・徳島県・高知県のイ構造では29.9%の引上げとなっています。

この見直しの背景としては、2017年1月から実施した3段階の改定では、本来必要な保険料水準に徐々に近づけていく方法を取っていたため、その水準に達するまでの期間、保険料の不足が生じていたことが挙げられます。

その不足分を補うためには本来ならば全国平均で1.6%の引上げが必要でしたが、地震調査研究推進本部における評価方法の見直しや、耐震性の高い住宅の普及などの効果によって、全国平均でマイナス2.3%となり、結果として全国平均で0.7%の引下げとなりました。

地震保険料の割引

地震保険には割引制度が設けられており、「免責建築物割引」「耐震等級割引」「耐震診断割引」「建築年割引」の4種類があります。

それぞれに割引率が設定されており、割引の適用を受けるためには「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「住宅性能評価書」や、評価指針に基づく「耐震性能評価書」、公的機関などによって作成された書類の写しなど、割引の対象に該当することを確認するための一定書類が必要です。

長期係数とは

長期係数は、保険期間が2~5年で長期保険 保険料払込特約を付帯した「長期契約」の場合に、保険期間1年の保険料の計算に用いる係数のことです。割引の計算に用いる予定利率を現在の金利状況を踏まえて見直した結果、2022年度には5年契約の割引率が従来の7%から6%へと変更になります。

地震保険への加入の現状

地震保険は、火災保険と合わせて契約する方法で加入することが前提です。既に火災保険を契約している場合でも、契約期間の途中から地震保険に加入することはできます。
地震保険の契約件数と世帯加入率を見てみると、世帯加入率は増加傾向にありますが、全世帯からみるとまだ3分の1程度となっています。

地震保険については、制度としての正しい理解と最新の情報把握が欠かせません。今後の動向に注目するとともに、地震大国といわれる日本において、自分が住んでいる地域の災害リスクを十分に把握しながら地震保険への加入を検討することが大切だといえるでしょう。