新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

平成19年3月に成立した「住宅瑕疵担保履行法」により、平成21年10月1日以降に新築住宅を提供する事業者は住宅瑕疵担保責任保険への加入が義務付けられることになりました。

この住宅瑕疵担保責任保険の保証内容とはどのようなものなのでしょうか。また、住宅瑕疵担保責任保険にはどのような種類があるのかについても解説します。

住宅瑕疵担保責任保険とは?

住宅瑕疵担保責任保険とは?その仕組みを徹底解説
(画像=kai/stock.adobe.com)

住宅瑕疵担保責任保険とは、新築で購入した住宅においてその引き渡しを受けた後10年間に見つかった瑕疵に対して、購入者側から事業者に対してその補修費用を保証してもらえる保険です。

新築で購入する住宅とは、新たに建設される住宅のことをいい、建設工事が完了してから1年以内で人が居住していない住宅を指します。また、住宅とは人が居住の用に供する家屋もしくは家屋の部分をいいます。そのため、賃貸住宅も対象です。

住宅瑕疵担保責任保険の保証の対象となる瑕疵とは、その住宅の構造耐力上主要な部分、そして雨水の浸水を防止する部分の欠陥をいいます。具体的には以下の部分が該当します。

(木造住宅の場合)
・構造耐力上主要な部分:小屋組、屋根版、斜材、壁、横架材、柱、床板、土台、基礎
・雨水の浸水を防止する部分:屋根、開口部、外壁

(鉄筋コンクリート住宅の場合)
・構造耐力上主要な部分:屋根版、床板、外壁、壁、基礎、基礎杭
・雨水の浸水を防止する部分:排水管、屋根、開口部、外壁

ちなみに保険期間は10年ですが、加入する保険の種類によってはそれ以降も必要に応じて延長できるケースもあります。また、支払われる保険金は2,000万円が上限となっていますが、特約で2,000万円超となることもあります。

加入するのは事業者側

住宅瑕疵担保責任保険に加入するのは、購入者ではなく、住宅を提供する事業者です。そのため、新築住宅を購入する際には、事業者に対して住宅瑕疵担保責任保険に加入しているかどうか、もしくは保証金供託なのかを確認しておく必要があります。保険加入の流れについては、以下のとおりです。

(戸建て注文住宅の場合)

  1. 着工前準備:現地調査が行われる。
  2. 設計:保険法人から提供される「設計施工基準」に適合するよう設計。
  3. 契約:ここでいう契約とは、請負工事の契約。この請負工事契約締結の際に、事業者側は瑕疵担保責任を定めて契約を行う。
  4. 確認申請:申請後、確認通知を受け取る。
  5. 保険申し込み:事業者側が申し込み手続きを行う。
  6. 工事着工:施工基準に合った施工を行う。
  7. 現場検査:申し込んだ保険法人の規定によって現場検査が行われる。
  8. 保険証券の発行申請:引き渡し日が決定すると、事業者側が保険証書発行申請を行う。
  9. 引き渡し:事業者側から購入者に対して保険証書が手渡される。

(分譲住宅の場合)

  1. 保険申し込み:事業者側が申し込み手続きを行う。
  2. 契約:売買契約時に事業者側が保険内容の説明を行うとともに、契約書面にその内容を記載する。
  3. 工事着工:施工基準にあった工事を行う。
  4. 現場検査:申し込んだ保険法人の規定によって現場検査が行われる。
  5. 引き渡し:事業者側から購入者に対して保険証書が手渡される。

保険料の支払いはもちろん加入する事業者側が行いますが、住宅の価格や建築費用にその保険料が含まれているケースが多く、実際の負担者は最終的には購入者となります。

また、加入する保険はどの会社の保険でもいいというわけではなく、国土交通大臣が指定した「住宅瑕疵担保責任保険法人」が提供する保険に限られます。現時点で指定されている「住宅瑕疵担保責任保険法人」は次の5社です。

・株式会社住宅あんしん保証
・住宅保証機構株式会社
・株式会社日本住宅保証検査機構
・株式会社ハウスジーメン
・ハウスプラス住宅保証株式会社

住宅瑕疵担保責任保険が設立された背景

平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、新築住宅を提供する事業者はその住宅の引き渡しから10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務付けられました。そのため、事業者には引き渡しから10年間は引き渡し後に見つかった瑕疵について保証する責任が発生します。

しかし、事業者のなかには資金力がなく、その責任を果たせないケースも考えられます。そうなると、引き渡し後10年以内に瑕疵が見つかったとしても、その住宅の購入者は保証を受けられなくなってしまいます。このような事態を解消するために施行されたのが、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」です。

そして、この法律によって事業者は瑕疵担保責任を負うための資金力を確保するための措置を講じる必要に迫られることになりました。その措置の1つが住宅瑕疵担保責任保険への加入というわけです。

事業者だけでなく消費者側も保証される 

一見、事業者を守るために加入する保険のように見えますが、実際には事業者側だけではなく、住宅の購入者も守られる内容となっています。そのうちの1つが以下に挙げる直接請求制度です。

直接請求制度

新築住宅を購入し10年以内に瑕疵が見つかった場合、その住宅を提供した事業者に連絡しようとした際に、その事業者が倒産していたなどで連絡および請求ができないケースも考えられます。そのような場合、購入者は保険法人に対して瑕疵の補修費用を直接請求することができる制度が設けられています。

供託制度の活用

さらに、事業者が倒産しており、保証してもらえないといったケースに備え、事業者側があらかじめ法務局などに保証金を供託しておく制度もあります。

供託する額は法律で定められた額となりますが、事業者側がこの制度を利用している場合であれば、消費者側は瑕疵を補修するために必要な金額を保証金からの還付として供託先(法務局など)に請求できることになっています。

トラブルに発展した場合の救済措置 

瑕疵の補修を巡って消費者側と事業者側とのトラブルに発展した際には、紛争処理機関を利用できる事になっています。住宅瑕疵担保責任保険の保険金は瑕疵の補修のみならず、その瑕疵によって受けた損害賠償費用や裁判になった際の裁判費用、補修を受ける際に仮住まいが必要になった場合はその費用も含まれます。

住宅購入時には加入している保険内容を確認しておこう 

引き渡し後に瑕疵を発見した場合は、まず購入した事業者に連絡をしますが、事業者が倒産している場合は、保険証券に記載されている保険法人に連絡しましょう。そうすることで、瑕疵の状況を調査したうえで補修に必要な費用が支払われます。

自分が購入する住宅がどのような保険に入っているかは、戸建て注文住宅であれば請負工事契約締結時に、分譲住宅であれば売買契約締結時に事業者側からの説明や契約書への記載などで確認可能です。さらに、引き渡し時には保険証書を必ず受け取り、契約締結時の説明と間違いがないかを確認しておきましょう。

ちなみに、住宅瑕疵担保責任保険を締結する事業者は、基準日である毎年3月31日時点での保険や供託の状況について、基準日から3週間以内に建設業の許可や宅地建物取引業の免許を受けた国土交通大臣もしくは都道府県知事に届け出る必要があります。

もし届け出を行わなかった場合には罰則の規定があるほか、基準日の翌日から50日を経過した日からは新たな工事請負契約や売買契約を締結できなくなる点も知っておくとよいでしょう。