ひとくちに30代といっても、独身、共働き、専業主婦、個人事業主などによってライフスタイルは異なり、今後予想されるライフイベントも変わってきます。そのため、30代が将来に向けた資産形成を考える際には、それぞれのライフイベントに応じた資金計画を立てることが重要です。

また、今後予想されるライフイベントで必要になる資金ごとの注意点を押さえておくことも、30代が資産形成を考える上で重要なポイントとなるでしょう。

そこで本記事では、30代のライフイベント別にみる資産形成のポイントや、ライフイベントごとに必要になる資金別の注意点などについて解説します。

ライフイベント別にみる30代の資産形成のポイント 

30代のライフイベントごとみる資産形成のポイントや資金別の注意点
(画像=thodonal/stock.adobe.com)

30代には、住宅購入や転職・退職、結婚など、さまざまなライフイベントが予想されますが、そのイベントごとに資産形成のポイントが異なります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

住宅購入

将来、住宅購入を考えているならば、住宅購入に向けた資金準備が必須となります。例えば4,000万円の住宅を購入する場合、大半はローンを利用するとしても、その際には1~2割(400万円~800万円)程度の自己資金を準備することで、将来的な返済負担を軽減することができます。

また、現在賃貸暮らしで、「賃料を払うくらいなら早めに住宅を購入した方がいい」と考える人も少なくありません。その際も自己資金の準備を念頭においた資金準備を計画していきましょう。

【資産形成を考える際のポイント】
中古物件を購入した場合、入居時にかけるリフォーム費用は初期費用として用意することが多いですが、 入居後しばらくした後に出る設備故障によるリフォーム、経年劣化による全面リフォームなどは入居後から積立したほうが好ましいです。

まだ新築の住居であれば、しばらくはメンテナンスの必要はないでしょう。しかし、中古物件でも戸建て住宅の場合は建ててから20年を超えると、屋根や外壁などのメンテナンス工事が必要になってきます。さらに、水回り(給排水)の工事も考えなければなりません。

住宅購入の予定が無くても、メンテナンス費用が必要になること、そして、それにどのくらいの費用がかかるのかを把握しておくことが、住宅購入における資産形成を考える際のポイントです。

転職・退職

現在、30代での転職は珍しいことではなくなってきています。職業への価値観が多様化し、仕事と生活のバランス(ライフ・ワーク・バランス)が意識されるようになっていることから、必ずしも年収が上がる転職を選択するとは限らなくなっているともいえます。さらには、転職を機にUターン・Iターンとして、居住地域が変化するケースも見受けられます。

また、転職の内容によっては医療保障や住居手当などの福利厚生が期待できなくなるケースもあります。大企業であれば、団体契約で医療保険やがん保険などに一律で加入している場合もありますが、転職により、こうした保障を受けられなくなり、資金的に余裕が無いことから、後回しにしてしまう人も見られます。

【資産形成を考える際のポイント】
保険料は年齢とともに増加します。もし、「大きな病気をした時に、貯蓄だけでは対応できない」、「若いうちから万が一の際に備えたい」という希望があるのなら、最低限の保障を継続していけるよう、早い段階で保険の加入や見直しを行っておきましょう。

また、病気になり働けなくなった時のことを想定して、収入保障保険などにも加入しておくと安心です。家計を圧迫してしまわない保険料内で、将来へのリスク対策を行っておくようにしましょう。

結婚

結婚を意識しているなら、結婚資金を準備しなくてはなりません。また、結婚後の子どもの予定や住宅購入の予定によっては、結婚直後から資産形成を考える必要があります。

【資産形成を考える際のポイント】
結婚後の資産形成については、夫と妻のそれぞれが行っていくことが望ましいといえますが、夫婦の意識としては共同財産を増やしていくという感覚が強いかもしれません。その場合は、「妻の収入は預金中心に、夫の収入は運用中心に」という形で分けることも1つの手段です。

一方、片働き世帯の場合は、どのくらいの資金を積み立てていくかがポイントになります。夫婦間の資金のやりとりだけでなく、実家からの資金贈与が予定されているかどうかも考慮しながら、最終的には夫婦それぞれがどのくらいの比率で資産形成していくべきかを考える必要があるでしょう。

起業

個人事業主として仕事を進めていくためには、さまざまな保障を用意しておく必要があります。例えば、病気になった際に備えた医療保険や所得補償保険を準備しておくことも大切ですし、業種によっては店舗などに対する火災保険も必要です。

【資産形成を考える際のポイント】
上記に挙げたような保険は、想定外の事態に備えられる保険です。事業を長く続けていくためにも、これらにかかる保険料は必要経費として資金計画に組み込んでおくようにしましょう。

また、個人事業主は老後に受け取れる年金額が少ないため、自助努力で老後資金を蓄えておく必要性が高まります。そのためにも、個人事業主向けの資産形成制度(年金基金や拠出年金制度)を活用することを考えましょう。

30代のライフイベントごとに必要になる資金別の注意点

30代が将来に向けて資産形成を考える場合、注意しておかなければならない点がいくつか存在します。ここでは、ライフイベントごとに必要になる資金別の注意点を紹介します。

住宅購入資金

夫婦で住宅を購入する際に気をつけたいのが「ペアローン」です。ペアローンは、夫婦共有名義にすることで、住宅ローン控除の適用が受けられるほか、売却する際の3,000万円特別控除も2人分使うことができます。

ただし、共有名義とする場合には、その持ち分割合に応じて資金の拠出および借り入れが行われるという点に注意しなければなりません。さらに、どちらか一方が無収入もしくは収入減の状況になった場合でも返済の義務は消えないことから、仮にもう一方が返済を肩代わりした場合には贈与とみなされる可能性があります。

夫婦共有名義にする場合は、このような点を考慮したうえで資金の拠出および借り入れ分を決めることが大切です。

また、将来親と同居する場合でも、親の介護に合わせて住宅をリフォームする必要に迫られる可能性があります。メンテナンス費用も考えると、最終的に1,000万円を超える資金が必要になるケースも考えられるため、将来的にそのような事態に陥ったとしても対応できるような資金計画を考えておく必要があります。

教育資金

教育資金は必要となる時期が明確な資金です。つまり、それに合わせて計画的な準備が可能だといえます。利用するタイミングに合わせて学資保険などで用意する方法が一般的ですが、金額によっては在学中に教育資金の捻出が難しくなる可能性もあります。

そのためにも学資保険以外で資金を確保しておく必要がありますが、それでも不足する場合には、奨学金制度を利用することも検討しましょう。奨学金には給付型(返還不要)のものと貸与型(要返還)があり、貸与型の場合は子どもが返還する必要があります。

そのため、返済が負担にならないよう、「借りられる額を借りる」のではなく「返せる額を借りる」ことを一番に考えることが大切です。さらに、海外留学を視野に入れているなら、留学先でも使えるよう、外貨預金など外貨で運用を行うことも有効な手段といえます。

結婚資金

結婚資金の内訳としては、挙式費用のほか、婚約にかかる費用や結婚式の費用、新婚旅行費用が挙げられます。ただ、それらの費用を全て自分たちで準備しなければならないわけではなく、最終的に必要な金額は、「結婚にかかる費用-(ご祝儀+親からの援助)」です。

先述したゼクシィのデータによると、ご祝儀合計の平均は177万円、親からの援助額平均は179万円となっており、結婚費用の平均額は357万円です。つまり、最終的にはほぼ持ち出し額はないことが分かります。

ただ、結納や結婚式、さらに新婚旅行費用を支払うタイミングは結婚式よりも前になるため、一時的な支出が必要になる点には注意する必要があります。

また、なかには結婚資金を準備できない人もいるでしょう。そのような場合は、ブライダルローンの利用を考えてもいいかもしれません。借入金は挙式を挙げる会場に直接振り込んでもらえるケースがあるほか、金利も比較的低めに設定されているため、ご祝儀などで返済できるなら借入期間も短くて済むことから、利息負担を抑えられます。

起業資金

最近では創業支援としての融資を取り上げる金融機関が多くみられるようになり、さらに、資金使途に対する保障制度も拡充しています。

ただし、融資を受けるためには、あくまでもしっかりとした事業計画が作られていることが必須となります。さらに、ある程度の手持ち資金を用意し、円滑な仕入れや広告宣伝に使用することも考えておかなければなりません。

また、事業を立ち上げた当初は往々にして事業資金とプライベートのお金を混合しがちです。例えば、月末の支払いのために、自分個人の預金を崩して対応するなどです。もちろん、このようなことは資金繰りとしてやむを得ない部分もありますが、常態化しないように心掛けることが大切です。

そして、事業が軌道に乗ってくることで、人を雇う、仕入れを増やすといった前向きな展開も可能になります。そうなった際には、事業における余剰資金を、「個人資産に取り込んでいく部分」と「事業に投資していく部分」に分け、さらにそのバランスをどのように取っていくかを考えることが重要なポイントになります。

30代の資産形成は経済情勢によっても方法が変わる

ウクライナ危機による経済政策が世界経済を下押しているなか、日本では円安が加速し、さらに物価の上昇が懸念されています。これからの資産形成においては、「外貨の保有」や「国際分散投資の見直し」も課題となります。つまり、これまでよりも一層、自分のことを考えた運用が求められる時代になっていくといえるでしょう。

このような時代背景において、目標を明確に設定することはなかなか困難な状況にありますが、自分はどうありたいかを考え、時代の流れに対して柔軟に考え方を変える姿勢を身につけることが大切です。

もちろん、今後における非課税制度の要件見直しや、期限延長などといった改正内容をチェックしておくことも忘れないようにしましょう。

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。