退職金の制度には、従来のように退職時に受け取るものもあれば、確定拠出年金のように一時金で受け取ることにより退職金として取り扱われるものもあります。

一般的に退職金を受け取った際には、勤務年数に応じた退職所得控除が適用されますが、受け取り方によって節税効果が異なるため、退職金を受け取る際の税金額の計算方法については、しっかりと理解しておきましょう。また、注意点についても解説しますので、参考にしてください。

退職金を受け取った際の税金額の計算方法 

退職金にかかる税金の計算方法は?確定拠出年金を受け取る際の注意点も解説
(画像=MontriThipsorn/stock.adobe.com)

受け取った退職金は退職所得とみなされ、勤続年数に応じた退職所得控除が適用されます。

退職所得とは

退職所得とは退職の際に一時的に支払われる特別な賃金のことで、「勤務先から受け取る退職手当」、「適格退職年金規約に基づく退職一時金」、さらには「社会保険制度などで退職によって支給される一時金」などが該当します。このように、在職期間中に受け取る賞与のような一時的に支払われる特別な賃金は給与所得になります。

退職所得を求める際には、以下の計算式を利用します。

退職所得金額=(退職金の額(源泉徴収前)-退職所得控除額)×2分の1

そして、ここで利用する退職所得控除額は以下の表に基づいて計算します。

勤続年数(A)退職所得控除額
20年超800万円+70万円×(A-20年)
20年以下40万円×A
(計算結果が80万円に満たない場合は80万円として計算)

また、障害者になったことが直接の原因で退職した場合、上の表で求めた退職所得控除額にさらに100万円が上乗せされます。

退職所得は、原則としてほかの所得と分けて所得税額を計算します。また、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかで、確定申告の要否が異なります。

1.「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合

会社側が、所得税額を計算し、退職金の支払いの際に、退職所得の金額に応じた所得税額を源泉徴収するため、確定申告は不要です。

2.「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

支払われる退職金の20.42%の所得税額(復興特別所得税額含む)が源泉徴収されます。この場合、退職金を受け取った本人が確定申告を行うことによって所得税額などが最終的に精算されます。

確定申告を行わなければ精算されませんので、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、必ず確定申告を行い、精算するようにしてください。

複数回にわたって退職金を受け取った場合の計算方法 

人によっては、複数回にわたって退職金を受け取ることもあるでしょう。その際の計算方法はその受け取った時期や、退職金の種類によって異なりますので、注意しておきましょう。

みなし勤続年数とは

退職金を受け取った年の前年以前4年以内に退職手当などを受け取っている場合で、2つの退職金にかかる勤続年数に重複する期間がある場合の退職控除額は、以下で計算した額になります。

「その年の退職金にかかる勤続年数によって計算した退職所得控除額」-「重複した期間を勤続年数と見なして計算した退職所得控除額」

(例)
A社にて21年勤務し、退職金を受け取った。また、その間B社にも10年勤務しており、A社を退職後3年してからB社を退職しその際も退職金を受けとった。2社に重複して務めていた期間は7年である。

このようなケースの場合、B社から受け取った退職金にかかる退職所得控除額を求める際の勤続年数は、2社の重複期間を基に計算します。

まず、B社から受け取った退職金にかかる退職所得控除額を計算します。B社での勤務年数は10年ですので、退職所得控除額は「40万円×10年=400万円」です。

そして、次にA社の退職金額とそれに対応する控除額を求めます。A社での勤続年数は21年ですので、退職所得控除額は「800万円+70万円=870万円」です。

仮にA社から受け取った退職金が1,200万円だった場合、退職所得金額は退職所得控除額が全額適用され、「(1,200万円-870万円)×2分の1」で求められます。この場合、退職所得控除額を全てここで使い切っているため、B社で受け取った退職金にかかる退職所得控除額は、重複期間を勤続年数とみなして計算します。

そうなると、退職所得控除額は「40万円×7年=280万円」となり、本来の退職所得控除額400万円から重複期間に係る退職控除額を差し引いた「400万円-280万円=120万円」が、B社の退職所得を求める際の退職所得控除額になります。

このように4年以内に2度目の退職金を受け取ると、実際にB社に勤務していた期間を基に計算した退職所得控除額よりも少なくなってしまう点に注意が必要です、

また、1回目の退職所得控除で引ききれなかった額がある場合は、その額に応じたみなし勤続年数を計算し、重複期間を算出して最終的な退職所得控除額を求めることになります。

確定拠出年金の受け取りに注意

確定拠出年金の受け取りにはさらに注意しなければなりません。なぜなら、確定拠出年金を一時金で受け取る場合は、退職金として取り扱われ、さらに受け取る前年以前19年以内にほかの退職金を受け取っている場合は、確定拠出年金の加入期間と勤続年数が重複していた期間を用いて計算するからです。

確定拠出年金の受け取り方は一時金のほかに、分割(年金)も用意されています。年金で受け取った場合は雑所得として取り扱われ、所得税および住民税の課税対象になりますので、節税効果も考えながら、受け取り方法を選ぶ必要があります。

退職手当金制度の新設 

2022年1月1日より、勤務年数が5年以下の人に対する退職手当などの規定が新設されました。これは「短期退職手当」などに対する規定で、勤続年数が5年以下(役員などは除く)の人に対する退職金については、その退職所得を計算するうえで、300万円を超える部分について、退職所得控除額を差し引いた後の金額に2分の1を乗じないとするものです。

そのため、5年以下の人に対する退職所得については、収入金額から退職所得控除額を差し引き、その額が300万円以下の部分についてのみ2分の1を乗じ、300万円を超える部分については2分の1を乗じない方法で計算します。退職所得の金額は、以下の計算式で求められます。

退職所得金額=150万円+{退職金額-(300万円+退職所得控除)}

ライフプランを考慮しながら受け取り方法を考えることが大切 

現在の退職金制度は、多くの企業が確定拠出年金制度を取り入れるなど、自分で運用して退職金および年金を作るシステムに変わってきています。

さらに、年金制度改正法の施行により、企業型確定拠出年金制度に加入している人も、iDeCoに加入できる要件の緩和が予定されていることや、拠出期間が現在の60歳から65歳に延長されるなど、今後長期化するリタイア後の期間における経済基盤の充実を図る施策が実施されています。

老後の資産形成においては、どのような方法で資産を形成していくのかを考えることも大切ですが、同時に形成した資産をどのように活用していくのかを考える必要があります。

例えば一時金で一括受け取りし、それをさらに自分で運用していく考え方もあれば、公的年金の上乗せ分として年金形式で受け取る考え方もあるでしょう。ただ、注意しておかなければならないのは、確定拠出年金制度で形成した資産の受け取りには限りがあることです。公的年金のように一生涯受け取れるものではありません。

そのためにも、退職金をどのように受け取り、それを切り崩していくのか、さらに切り崩すなかで運用も取り入れるのか、その際のリスクはどのくらい取れるのかについて、リタイア後に予定されているライフイベントや考えているライフプランを考慮しながら、最適な受け取り時期および受け取り方法を選択する必要があります。

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。