住宅ローンを契約する際には、団体信用生命保険への加入が必須です。一般の団体信用生命保険では、住宅ローンの契約者が死亡もしくは高度障害の状態になった際に保険金が支払われ、住宅ローン残債が完済される仕組みですが、けがや病気で働けなくなった際の保障はありません。

そのため、最近ではさまざまな「特約付団体信用生命保険商品」が多く販売されています。本記事では、住宅ローンの団体信用生命保険として、どのような特約付商品があるのかについて保障内容ごとに解説します。

団体信用生命保険の特約付商品の内容

住宅ローンにおける団体信用生命保険の保障とは?保障内容ごとに解説
(画像=StudioRomantic/stock.adobe.com)

住宅ローンにおける団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者に万が一のことがあった場合に保険金が支払われ、住宅ローンの残債にあてられます。最近では、団体信用生命保険の保障内容が充実し、けがや疾病の際にも保障されるものや、災害時や介護状態になった際の保障が用意されている商品もあります。

疾病等に対する保障

いわゆる「3大疾病保障特約付団体信用生命保険」や「7大疾病保障付団体信用生命保険」、「8大疾病保障付団体信用生命保険」と言われるもので、このタイプの団体信用生命保険は所定の状態になった際に住宅ローンの残債が完済されるケースと、一定期間、住宅ローンの返済を支援してくれるケースがあるため、条件をきちんと把握しておくことが大切です。

3大疾病保障特約付団体信用生命保険は、一般的に「急性心筋梗塞」、「悪性新生物(がん、ただし上皮内がんは除く)」、「脳卒中」と診断された場合に保険金が支払われ、住宅ローンの残債が完済されます。ただし、がんには融資実行日からその日を含めて90日の免責期間が設けられていることや、過去にがんに罹患したことがある人は加入できない点に注意が必要です。

さらに、心筋梗塞および脳卒中の場合は、初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上の所定の状態が続いていることなど、加入条件や支払い要件が細かく決っています。

ここでいう所定の状態とは、急性心筋梗塞の場合、軽い家事などの軽労働や事務など座った作業が可能だが、それ以上の活動が制限される状態をいい、脳卒中の場合、言語障害や運動失調、麻痺などの他覚的な神経学的後遺症がある状態を指します。ただし、金融機関によって取り扱いが異なるため、必ず事前に確認するようにしてください。

他にも、高血圧性疾患や糖尿病、肝硬変といった生活習慣病を原因として就業不能の状態が所定期間を超えた場合に、超えた日からの毎月のローン返済金額が保険金額として1年間支払われるなどの団体信用生命保険商品を取扱っている金融機関もあり、バリエーションは多岐にわたります。

ちなみに就業不能の認定については、会社員であれば全日出社できない状態、医師であれば全日休診の状態をいい、入院の有無は問われません。自宅療養であっても就業不能であることが医師の診断書などで証明されるか、医師の指示による自宅療養であれば問題ないとされています。

一般的にこれらのタイプの団体信用生命保険は、保険料については金利に上乗せされるケースが多く、上乗せ金利は0.2~0.3%程度となっています。

なお、加入者の年齢要件が51歳未満に設定されていたり、融資金額が3,000万円を超えていたりする場合は、所定の医師の診断書が必要となる場合もありますので、あらかじめ内容をしっかり確認しておきましょう。

がんや障害に対する保障

がん特約付団体信用生命保険は、がん(悪性新生物)と診断された場合に診断給付金が支払われ、その時点での住宅ローン残債が保険金で完済される仕組みです。

ほとんどのがん特約付団体信用生命保険では、「皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん」および「上皮内がん(上皮内新生物)」は保障の対象外となっており、保障の開始についても融資実行日からその日を含めて90日の免責期間が設けられています。

なお、余命6ヵ月と診断されたら住宅ローンの残債が0円になる商品や、保険料が金利込みとなっている商品があるほか、借入金額によって医師の診断書が必要な場合など、細かい部分については金融機関によって異なるため、利用の際には確認することが大切です。

団体信用生命保険商品の中には、3大疾病保障特約付団体信用生命保険や一般団体信用生命保険に傷害特約が付帯されているものもあります。この特約では、被保険者が保障開始日以降に発生した傷害または疾病により、保障期間中に所定の身体障害状態になった時でも保険金が支払われ、住宅ローン残債が完済される仕組みになっています。

所定の身体障害状態については、国民年金法施行令に規定する障害基礎年金の障害等級1級に相当する障害状態になったときなど商品によって異なり、また保険が付帯できる上限金額についても金融機関によって異なるため注意が必要です。

けがに対する保障

「ローン返済支援保険」では、30日を超える病気かけがによる入院(医師の判断により自宅で療養している場合も含む)の場合に、一定期間住宅ローンの毎月返済額相当額が保険金によって支払われます。一般的に、保険金が支払われる期間は3~5年間、保険金額は年間返済額合計(ボーナス支払い分含む)を12で割った額となっており、就労不能の免責期間は30日としているところが多くみられます。

3大疾病保障特約付団体信用生命保険と比べると取扱っている金融機関は少ないですが、ある金融機関では、地震・噴火・津波によるけがを原因として、いかなる業務にも全く従事できなくなった場合(具体的には入院もしくは医師の指示により自宅療養している状態)でも、最長3年間、毎月の返済額(ボーナス支払い分含む)とほぼ同額のローン返済月額が保険金として支払われるため、ローンの返済に役立てることができます。

他には、引受緩和型団体信用生命保険(ワイド団信)も用意されています。糖尿病、高血圧症、肝機能障害など健康上の理由で通常の団体信用生命保険の審査に通らない場合でも、加入条件が緩和されたこの引受緩和型団体信用生命保険に加入できる可能性があります。

この程度であれば、加入できるという明確なラインはありませんが、「3ヵ月以内に医師の診断を受けていない」、「3年以内に2週間以上の治療歴がない」、「障害がない」といった通常の団信とほぼ同じ告知内容にもかかわらず、引受範囲が広く、審査に通りやすくなっている点が特徴です。

通常、団体信用生命保険の保険料は、金利込みで金融機関が負担しますが、引受緩和型団体信用生命保険の場合は顧客負担となり、住宅ローンの金利に0.2~0.3%程度上乗せして支払う仕組みとなっています。また、申し込みできる年齢の範囲が設定されている点にも注意が必要です。

ちなみに、病歴があるからといって通常の団体信用生命保険の審査に絶対に通らないわけではありません。まずは通常の団体信用生命保険に申し込んでみて、審査に通らなかった場合に引受緩和型団体信用生命保険へ申し込むことを考えましょう。

途中で加入できる団信はある? 

従来、団体信用生命保険は加入時(新規申込時もしくは借換時)のみ契約することができ、中途加入は不可となっていましたが、最近では途中から加入できるタイプも登場しています。

追加型団信

途中加入可能の団体信用生命保険商品には、三大疾病に限らず、「腎臓病で永久的に人工透析を受ける状態」や「不整脈で恒久的に心臓ペースメーカーを装着しなければならない状態」など、16の特定状態になった場合もローンの返済が免除され、さらに一定の条件を満たせば、就労できる状態でも保障が受けられる点が特徴となっています。

30~40代で住宅を購入した世代が、加齢によって将来の健康の不安を抱え、中途加入したいというニーズに合致していると言えます。なお、特約を付加するには、年0.3%をローン金利に上乗せして払う必要があります。

団体信用生命保険のその他の保障内容 

団体信用生命保険商品の中には、病気やけがだけではなく、「失業」や「災害時」、さらには「介護状態になった時」にローン残債を保障してくれるものもあります。

失業等に対する保障

会社の整理解雇や倒産など、自発的ではなく失業した際に、再就職までの毎月の住宅ローン返済額相当額が、保険金として受け取れる団体信用生命保険商品があります。

この特約の目的は、ローン利用者の返済が滞ることのないよう、また再就職までの間に急激な収入の減少で困ることのないように生計の安定を図ることで、利用できる一般的な要件は以下の通りです。

・雇用保険の一般被保険者であること(自営業者、公務員、役員は対象外。ただし、中には自営業者や役員を対象とするものもある)
・他の失業時支援保険に加入していないこと
・一定の待機期間があること
・自己都合や定年退職、事業主からの勧め(早期希望退職)による失業ではないこと(あくまでも倒産や整理解雇が対象)

なお、加入者が退職などで雇用保険から外れた場合には、特約の契約は終了します。

保険期間や保険金額、てん補期間には金融機関ごとに制限が設けられているものの、一般的には、保険期間は1~10年、保険金額については、毎月の住宅ローン返済額相当額(上限を設けている場合は上限10万円)、てん補期間は6ヵ月~1年間としているところが多くみられます。

災害に対する保障

近年、地震や豪雨などの災害が多発していることから、地震や豪雨などで被災した際に、住宅ローンの一部保障を行う特約付の団体信用生命保険商品を取扱う金融機関が増えています。

具体的には、自然災害や火災などの一般災害により、住宅ローンの対象となっている建物が損壊し、居住できない状態になった場合に、住宅再建までの居住不能期間の毎月の住宅ローン返済額相当額を保障する内容です。

内閣府の調査によると、被災時には家具や家電製品の購入など、住宅以外にも生活再建に必要な経費が発生し、その総額については、100~300万円と回答した割合が一番多く、全体の20%強となっています。そのような状況を考えると、災害に対する特約を付加することで、生活再建までの住宅ローン返済額相当額が保障され、住宅と生活の再建に注力できるという点でも効果的と言えるでしょう。

住宅ローンが一部免除される安心感に加え、復旧時の生活資金に不安を感じる利用者の共感を得た団体信用生命保険商品ですが、免除期間や保険料条件は各金融機関でことなるため、詳細まで確認しておきましょう。

また、保険料については、一部の金融機関は上乗せ金利の代わりに手数料を徴収する形をとっていますが、多くの金融機関は0.035~0.3%の金利上乗せを行うタイプとしています。一度の被災に対する保障期間も6~24回と分かれており、家屋の被害も全壊と大規模半壊だけを保障対象としている金融機関もあります。

さらに、このような特約は住宅ローンを契約する「新契約者」が対象となっていますが、手数料を払うことで既存の契約者も加入できるケースもあるなど、金融機関によって商品性が異なる点が特徴です。活用する際には、ニーズを踏まえたうえで十分に比較検討するようにしましょう。

保障の方法は、「免除型」と「返済した金額を全て後から払い戻す仕組み(払戻型)」の2通りで、払戻型は罹災証明書を提出することで翌月分までの返済分を一括で受け取り、残りの期間については、毎回返済分を受け取る仕組みです。また当然ですが、これらの保障は住宅ローンの返済を延滞している場合は受けられません。

なお、この特約で受け取った免除金については非課税所得ではなく、雑所得として扱われます。そのため、他の所得と合わせて確定申告を行うことを忘れないようにしてください。

介護に対する保障

介護状態になった場合の備えとして、介護保障特約付団体信用生命保険も注目されています。特定の病気や不慮の事故などにより、介護状態になった場合に、介護保険金で住宅ローンの残債が完済される内容になっています。この特約で保険金の給付が受けられる主な要件は以下の通りです。

1. 公的介護保険制度の要介護3以上に該当したとき
2. 以下のいずれかに該当し、その状態が該当した日から起算して、継続して180日あることを医師によって診断確定されたとき
・「歩行」、「衣服の着脱」、「入浴」、「食物の摂取」、「排泄」の5項目において1項目が全部介助、かつ他の1項目が全部介助もしくは一部介助の状態に該当したとき
・上記5項目のうち、3項目が一部介助の状態に該当したとき
・器質性認知症、かつ意識障害のない状態において、見当識障害があると診断確定されたとき

その他、一定額以上の住宅ローン残高や、一定年数以上の返済期間が必要です。

また、住宅金融支援機構でも介護保障特約付の団体信用生命保険商品を提供しています。具体的には、3代疾病付団体信用生命保険に介護保障が付帯される仕組みで、介護保障による給付条件は以下の2点です。

1. 保障開始日以後の障害または疾病を原因とし、介護保険制度による要介護認定を受け、要介護2以上に該当していると認定されたとき
2. 保障開始日以後の障害または疾病を原因として、所定の要介護状態に該当し、該当した日を含めて180日以上要介護状態が継続したことが医師によって診断確定されたとき

既に加入している保険とのバランスが大切 

各金融機関が、団体信用生命保険の保障内容を充実させるために特約のラインアップを揃えるようになった背景には、超低金利下における契約者獲得のためのツールとしての期待があります。

変動金利は1%以下が主流となっている今、金利だけではなく、付加サービスの充実、さらには団体信用生命保険の保障内容を拡大して販売することで、他社との差別化を図っている現状が見受けられます。

ただ、団体信用生命保険の特約については、金融機関によって加入条件や保険料、保険金が支払われ条件が異なるため、利用にあたっては注意が必要です。

また、これらの特約付団体信用生命保険は住宅ローン完済時もしくはそれ以前に保障が終了するため、民間の医療保険や所得補償保険など、既に加入している保険との兼ね合いを考慮しつつ、特約付の団体信用生命保険に過度に頼らないように気をつけましょう。

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。