数次相続とは、相続が開始し、遺産分割協議途中に相続人が亡くなってしまい、次の相続が発生することです。例えば祖父が亡くなり、父や父の兄弟が相続人となって遺産分割協議を行っていたところ、父の兄弟が亡くなってしまうようなケースが該当します。

本記事では、数次相続の概要や通常の相続手続きとの違い、確定申告時の注意点などについて解説します。

数次相続とは 

数次相続とは?通常の相続手続きとの違いや流れ、確定申告時の注意点を解説
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

数次相続とは、被相続人が死亡し、相続が開始して遺産分割協議が終らないうちに、相続人が亡くなり、次の相続が発生することをいいます。冒頭のケースだと、祖父が亡くなった時点が一次相続、父の兄弟が亡くなった時点が二次相続にあたります。

父に兄弟が2人いた場合、一次相続の時点での相続人は祖父の子ども3人(父と父の兄弟2人)ですが、二次相続時点の相続人は、父の兄弟の配偶者そして父の兄弟の子どもが相続人となります。

そのため、二次相続では、相続人は父、父の兄弟の配偶者、父の兄弟の子どもとなり、相続人全員で祖父の遺産相続分の遺産分割協議、相続税の申告、納税までを行う必要があります。

通常の相続手続きとの違い 

まずは、通常の相続手続きの流れを把握し、数次相続との違いを確認していきましょう。

通常の相続手続きの流れ

相続が開始されると、死亡から3ヵ月以内に遺言書がある場合は検認および内容を確認します。また、同時期に相続人や相続財産の調査を行い、遺産分割協議が開始されます。相続放棄もしくは限定承認を行う場合の期日もこのタイミングです。

被相続人が事業を行っていた場合や一定以上の給与所得がある場合は、死亡してから4ヵ月以内に所得税の準確定申告を行わなければなりません。同時に所得税の納税も必要になります。

さらに、死亡してから10ヵ月以内に遺産分割協議書を作成して相続の手続きを行う必要があり、その後相続税の申告と納付を行います。 

相次相続の手続きの流れ

相次相続とは、10年以内に2回以上相続が発生することです。相次相続の場合、一次相続そして二次相続において、まず誰が相続人となるのか、そして相続財産はどれかを把握しなければなりません。遺産分割協議は相続人全員で行わなければならないため、相続人の把握は重要なポイントです。

相続人同士で話し合い、遺産分割協議書を作成しますが、その際、一次相続と二次相続の内容をまとめて作成するケースと、一次相続と二次相続について分けて遺産分割協議書を作成するケースがあります。

もし、分けて作成する場合、遺産分割協議書の冒頭部分に被相続人の情報が記載され、一次相続の被相続人の次に二次相続の被相続人の情報を記載することになります。ただし、その肩書きは「相続人兼被相続人」となります。これは冒頭部分だけでなく、署名欄においても同じです。

なお、被相続人が不動産を所有していた場合、不動産を相続した人が不動産の名義変更のための相続登記を行わなければなりません。数次相続においては、原則として一次相続における相続登記をまず行い、その後二次相続の相続登記を行うことになっています。

ただし、中間の相続人が1人のみの場合は、相続登記を省略し、1度の申請でまとめて行うことも可能です。これを中間省略登記といいます。

相続登記を行う際には以下の書類を準備しておきましょう。

・被相続人の戸籍謄本および除籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本と住民票
・相続人全員の押印がある遺産分割協議書
・相続する物件野登記簿謄本
・固定資産税の評価証明書 など

確定申告時における注意点 

数次相続においては、以下のように通常の確定申告手続きと異なる点があるため注意が必要です。

期間の延長

相続税の申告期限は、原則として被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヵ月以内です。ただし、数次相続の場合、一次相続で申告しようとしていた相続人の死亡を知った翌日から10ヵ月以内に延長されます。

ただし、延長されるのは一次相続、そして二次相続両方において相続人になる人のみです。例えば、一次相続発生時は相続人ではないけれど、二次相続発生時に相続人になった場合は、二次相続の被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヵ月以内となります。

また、数次相続によって相続人が増えた場合でも、基礎控除額は変わらないことを覚えておきましょう。 なぜなら、数次相続においては、一次相続発生時の基礎控除額を用いて計算するからです。

新たな控除を受けられる可能性

現在、相続においては「相次相続控除」という制度が設けられています。これは、相続の開始10年以内に、被相続人が相続や遺贈などによって財産を取得し、相続税を納税していた場合、その被相続人から相続や遺贈によって財産を取得した人の相続税額から一定の金額を控除するというものです。

相次相続控除の対象者は、以下の条件全てに当てはまる人です。

・被相続人の相続人(相続放棄や相続権を失った人は対象外)
・その相続の開始前10年以内に開始した相続によって被相続人が財産を取得している
・その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されている

【相次相続控除の額】
前回の相続において課税された相続税額のうち、年10%の割合で逓減した後の金額が、今回の相続に係る相続税額から控除されます。

各相続人の相次相続控除額の計算方法は以下の通りです。

A✕C/(B-A)✕D/C✕(10-E)/10

A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
B:今回の被相続人が前の相続時に取得した純資産価額
C:今回の相続や遺贈などにより財産を取得した全ての人の純資産価額合計額
D:今回の相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満切り捨て)

出典:国税庁 相次相続控除

数次相続における相続放棄

通常の相続時と同様に、数次相続においても相続放棄を行うことは可能です。また、数次相続における相続放棄は、一次相続そして二次相続それぞれについて相続放棄および限定承認を行えます。

通常では、相続放棄は自分が相続人であると知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申し述べることになっていますが、被相続人や他の親族と疎遠になっていたなど、相続の存在を知ることができない状態にあった場合は、そのことを証明できれば、3ヵ月を過ぎた場合でも相続放棄が認められるケースもあります。

相次相続と代襲相続を混同しないように注意が必要

相次相続の相続人を確定する際に代襲相続と混乱してしまうケースがよく見られます。代襲相続で相続人となるのは、被相続人の子どもや孫といった直系卑属ですが、相次相続において相続人となるのは被相続人の相続人です。

相続人をきちんと把握するためには、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)を取得し、それをもとに確認する方法が確実です。

さらに相次相続では、申告および納税義務も次の相続人に引き継がれますので、相続人の役割についても把握しておかなければなりません。数次相続の相続税の申告や、相続登記を自分たちで行うことはできますが、かなり複雑で時間もかかります。仮に相続人の中に未成年者がいる場合、親以外の特別代理人をつける必要もあります。

できるだけスムーズに手続きを終了させるためにも、全部自分たちで行おうとするのではなく、数次相続は特別なケースであることを理解し、できれば専門知識を持っている弁護士や税理士といった専門家に手続きを依頼することをおすすめします。

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。