相続財産の中に株式がある場合、その相続税評価額はどのように計算するのでしょうか。また、相続の際にどのような手続きが必要なのか、さらには有効な節税方法はあるのかについても知っておくことは大切です。

本記事では、相続財産の中に株式がある場合の、一般的な相続手続きの流れを解説するとともに、株式の相続税評価額の求め方や節税方法についても紹介します。

株式を相続した際の手続き 

株式を相続する際の手続きや相続税評価額の求め方。有効な節税方法も紹介
(画像=H_Ko/stock.adobe.com)

株式を相続した際に必要な手続きは、「名義変更」です。現在被相続人の名義になっている株式を、相続人の名義に変えなければなりません。

上場株式

相続人が、証券会社の口座を持っていない場合は、証券口座の開設が必要です。相続人本人の名義で口座を開設しましょう。そして、被相続人が口座を開設していた証券会社に対して、名義変更の手続きを行います。名義変更の際には、相続の決定方法に応じて以下の書類が必要になります。

(遺言)
・遺言書および検認調書
・被相続人の死亡が確認できる書類(戸籍謄本や除籍謄本、死亡証明書など)

(遺産分割協議)
・遺産分割協議書
・被相続人の出生から死亡までの流れが分かる戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本および印鑑証明書

必要書類や手続きの詳細については、証券会社によって異なります。事前に問い合わせて確認しておきましょう。また、被相続人がどこの証券会社で口座を開設していたか分からない場合は、証券保管振替機構に開示請求手続きを行うことで、知ることができます。開示請求手続きを行う人が法定相続人の場合、以下の書類が必要です。

・開示請求書
・法定相続人の本人確認書類(運転免許証や個人番号カードなど)
・法定相続情報一覧図(法務局が発行する原本)
・被相続人の住所が確認できる書類

なお、法定相続情報一覧図が用意できない場合は、相続人と被相続人の関係が分かる戸籍などが必要になります。具体的には以下の書類です。

・相続人の現在の戸籍謄本(被相続人が亡くなった後に発行されたもの)
・被相続人の改製原戸籍謄本、除籍謄本、戸籍謄本(出生から死亡までが確認できるもの)

非上場株式

非上場株式の名義変更は、その株式を発行している会社に連絡をし、名義変更の手続きを依頼します。なぜなら、非上場株式の場合、株式の管理はその株式を発行している会社が行っているためです。

株式の相続税評価額の求め方 

株式を相続した際の相続税は、その株式の評価方法を用いて算出した額を使用します。

上場株式

上場株式の評価は、取引所にて公表されている金額を用います。評価額は、原則として被相続人が亡くなった日の最終価格ですが、それ以外に以下の価格を調べ、その中で一番低い額を当てはめます。なお、ここでいう課税時期とは、被相続人の死亡日を指します。

・課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
・課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
・課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

出典:2級FP過去問解説 問20 2011年1月実技(資産設計)

非上場株式

非上場株式については、相続人がその株式の発行会社の同族株主かどうかや、会社の規模によってその評価方法が異なります。

1. 原則的評価方式
株式を発行している会社の規模によって「大会社」、「中会社」、「小会社」の3つに分け、それぞれについて以下の方法で評価を行います。

・大会社:原則として「類似業種比準方式」(類似業種の株価を基に評価する方法)
・中会社:大会社と子会社の評価方法を併用
・小会社:原則として「純資産価格方式」(会社の総資産や負債などを相続税評価額に置き換えて評価する方法)

2. 配当還元方式
同族株主以外の株主が取得した株式における、特例的な評価方法です。その株式を所有することにより受け取る1年間の配当金額を、10%で還元して求めます。

株式の相続に有効な節税方法とは? 

株式の相続に有効な節税方法は以下の通りです。

売却

上場株式の場合、相続発生の前にその株式を売却することでその株式に対する相続税を抑える効果を得られます。売却することで現金の割合が増えることになりますが、その分納税資金が確保できると考えると有効な相続税対策といえるでしょう。

贈与

一定の条件を満たすことで、非上場株式を相続した際の相続税の猶予もしくは免除を受けることができます。この制度を「事業承継税制」といいます。

事業承継税制では、中小企業において、後継者が先代経営者から贈与もしくは相続によって非上場株式などを取得した際、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けることにより、贈与税もしくは相続税の猶予もしくは免除が受けられます。

株式の相続発生から相続税申告までの流れ 

株式の相続発生から相続税申告までの流れは以下の通りです。

1. 遺言書の有無の確認
遺言書があれば、その内容の通りに相続を行いますので、まず遺言書があるかどうかを確認します

2. 相続人および相続財産の調査
遺言書がない場合、相続人および相続財産の調査が必要になります。一般的には、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの流れが分かるもの)を取得し、その内容を基に、相続人を調査します。同時に、相続財産の中に株式があるかどうかを調査する必要があります。

上場株式なら、証券保管振替機構に情報開示請求手続きを行うことで判明しますが、非上場株式の場合は発行会社に直接問い合わせて調べます。

3. 遺産分割協議
遺言書がない場合は、遺産分割協議によって誰が株式を相続するかを決めなければなりません。遺産分割協議にて決定した内容については、遺産分割協議書にまとめておきましょう。

4. 株式の名義変更手続き
遺産分割協議によって株式の相続人が決定したら、その相続人が株式の名義変更手続きを行います。

5. 相続税の申告
相続税の申告は、相続が開始してから10ヵ月以内に行わなければなりません。もし、それまでに遺産分割協議が終了していない場合は、いったん法定相続分で按分したものとして相続税額を計算し、申告および納税を行います。

株式の相続は慎重に行おう

相続において遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って相続が行われます。逆に、遺言書がなければ、遺産分割協議を行い、各々の相続人の相続分を決定する必要があります。

株式の相続手続きは、それが上場株式か非上場株式かで異なり、また評価額の計算方法も異なります。特に非上場の株式を相続する場合、相続人がその株式の発行会社の経営権を取得しているかどうかで評価方法が異なることもあり、評価額の計算については専門家に相談することをおすすめします。

また、株式は売却や生前贈与によって相続税を抑えることができます。相続税の節税対策を考えているなら、早めの売却や良きタイミングでの生前贈与を考えておきましょう。

さらに、非上場株式については、発行会社の財産状況などを見直すことにより評価額を下げることも可能です。事業承継税制の適用も視野に入れながら、相続手続きおよび節税対策を行うようにしてください。

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。