病気やケガで入院した場合、退院してすぐに仕事に復帰できるケースもあれば、しばらくの間自宅療養が必要になるケースもあります。自宅療養の期間によっては収入がなくなってしまい、生活に影響が出てくることもあるでしょう。

就業不能保険とは、そのようなケースを保障する保険ですが、公的保障で補えるなら、加入は必要ないと考える人もいるのではないでしょうか。本記事では、就業不能保険の概要やメリット・デメリット、加入しておいた方がいい人の特徴などについて解説します。

就業不能保険とは? 

就業不能保険とは?加入する前に理解しておきたいメリット・デメリット
(画像=Mizkit/stock.adobe.com)

就業不能保険とは、生命保険の1つで、病気やケガが原因で働けなくなった際の収入を保障する保険です。なお、病気やケガが原因で働けなくなった状態を就業不能状態といいますが、何をもって就業不能状態というのかは、保険会社によって異なります。約款にて所定の就業不能状態の要件が明記されていますので、加入の際には必ず確認しておきましょう。

また、就業不能保険では所定の就業不能の状態が一定期間以上継続している場合に給付金が支払われる仕組みになっています。そして、定められた一定期間については、給付金の支払い対象外であるとともに、日数についても保険会社で30日や60日などと異なりますので、就業不能状態と認められる要件と合わせて確認しておくことが大切です。

収入保障保険との違いは?

就業不能保険と似た保険に、「収入保障保険」があります。

就業不能保険は病気やケガで働けなくなった際の収入を保障する保険です。一方、収入保障保険では被保険者が死亡もしくは高度障害の状態になった際に、残された家族に対して保険金が支払われます。

また、収入保障保険は死亡保険と異なり、保険金が年金のように毎月支払われる点が特徴となっています。

就業不能保険のメリット・デメリット 

就業不能保険のメリットそしてデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

就業不能保険のメリット

就業不能保険のメリットは、働けない期間の収入を確保できる点です。病気やケガの内容によっては、入院や自宅療養が長期におよぶケースもあり得ます。そのような時、就業不能保険に加入していることにより、毎月給付金を受け取れるため、その間の収入減少による家計への負担をカバーすることができます。

もちろん、人によっては公的保障を受けられるケースもあります。ただ、働けなくなる状態になる前の収入全額を保障してくれるものではないため、どうしても家計への負担は避けられません。その差額を補填する目的で就業不能保険への加入を考えてもいいでしょう。

収入が減少するということは、精神的な不安につながります。就業不能保険によって、そのような精神的不安もカバーできる点もメリットといえるでしょう。

就業不能保険のデメリット

就業不能の状態になった後、一定の待機期間(免責期間)が設けられている点がデメリットとして挙げられます。さらに、就業不能状態の定義や給付金が支払われない待機期間(免責期間)が保険会社によって異なるため、加入前にしっかりと調べておく必要があります。

また、精神疾患については就業不能状態の対象外とする保険会社もありますので、事前に保障内容を細かく把握し、自分に合った商品を用意している保険会社を選ぶことが大切です。

公的な保障の存在 

会社員や公務員などの社会保険加入者であれば、病気やケガで休業せざるを得なくなった際には、公的な保障を受けることができます。また、社会保険の加入に関係なく、全ての人が受けられる公的保障
もあります。

社会保険加入者が受けられる公的保障

社会保険加入者が受け取れる公的保障の代表的なものに傷病手当金があります。加入している健康保険組合から支給されるもので、病気やケガなどの理由で休業した場合、申請することで休業前の収入のおよそ3分の2の額が最大1年6ヵ月支給されます。

ちなみに、病気やケガの原因が業務上のものである場合は、要件を満たせば労災保険から休業給付および休業特別支給金を受けられます。要件は以下の通りです。

・業務上の事由または通勤時におけるケガや病気を理由とした療養であること
・労働することができないため、賃金を受けていないこと

出典:厚生労働省 労災保険 休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続

休業給付の額は、「給付基礎日額×60%×休業日数」で計算された額で、休業特別支給金の額は、「給付基礎日額×20%×休業日数」で計算された額となります。

全ての人が受けられる公的保障

社会保険に加入していなくても、全ての人が受けられる公的保障もあります。その一つが高額療養費制度です。高額療養費制度とは、ひと月(その月の1日から月末まで)にかかった医療費(自己負担額)が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えた場合、その超えた部分を還付してくれる制度です。

さらに、病気やケガが原因で一定の障害の状態になった際には、障害年金を受給できます。国民年金に加入している間に初診日がある病気やケガによって、所定の障害の状態になった際には、障害基礎年金が支給され、さらに、初診日が厚生年金加入期間内にある場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受け取れます。

就業不能保険の必要保障額 

就業不能の状態になった場合でも、公的保障によって一定額の保障を受けられます。そのため、就業不能保険の加入を考える際の必要保障額については、公的保障によっても補えない額に留めておくことが大切です。

もちろん保障が多ければ安心しますが、その分保険料が高くなることを忘れてはいけません。働けなくなり、収入が得られなくなった場合に得られる公的保障額を計算し、それでも不足する額を把握したうえで、保険金額を決めるようにしましょう。

就業不能保険への加入を検討しておくべき人 

社会保険加入者であれば、公的保障が用意されているため、就業不能保険の必要性をあまり感じない方もおられるかもしれません。

ただし、傷病手当金は最長で1年6ヵ月の支給ですし、障害年金を受け取れる障害の状態の要件に該当するかどうかはその時にならないと分かりません。不安であれば、公的保障で補えない部分については、就業不能保険でカバーできるようにしておくことをおすすめします。

自営業者

公的保障が高額療養費制度および障害年金しか用意されていない自営業者の場合は、就業不能保険の必要性は会社員や公務員の人よりも高くなります。

働けなくなって収入が入らなくなった場合の生活費を確保するためにも、どのくらいの保障額が必要かを計算し、病気やケガで収入がなくなっても生活に支障が出ないように準備しておくべきです。

就業不能保険や公的保障だけに頼らない準備も必要 

就業不能保険には一定の免責期間が設けられています。また、公的保障も申請して実際に入金されるまで2ヵ月程度の時間がかかります。さらに、障害年金の場合は、初診日から1年6ヵ月後に障害認定がなされることから、障害の状態になったからといってすぐに年金が支払われるわけではありません。

そのため、緊急資金として、毎月の生活費の3~4ヵ月分は預貯金として現金で確保しておくようにしましょう。そうすることで一時的なまとまった出費にも耐えることができます。

また、就業不能保険の保障内容は保険会社によって異なりますので、複数社の商品を比較し、給付金が支給される要件を確認してから、自分にあった就業不能保険に加入することが大切です。

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。