勤務先で行われる年1回の定期健康診断は、労働安全衛生規則第44条によって義務づけられています。それとあわせて任意で受ける健康診断が「人間ドック」です。人間ドックは、健康診断に位置付けられるため、健康保険の適用とはなりません。費用は、原則全額自己負担です。

本記事では、人間ドックの費用相場や補助制度を解説しつつ医療費控除の対象となるケースについて紹介します。

人間ドックの検査内容

人間ドックの費用は保険適用できる?費用相場や補助制度、医療費控除となるケースを紹介
(画像=fpdress/stock.adobe.com)

人間ドックの検査内容の必須項目は、身長や体重を計測する身体測定、心電図やレントゲン検査、血液検査や尿検査などがあります。またオプション項目としては「胃カメラ」「マンモグラフィー」などの選択が可能です。また近年は、人間ドックと脳ドックを一緒に受けられる検査機関も登場しています。

ちなみに公益社団法人日本人間ドック学会が公表している2022年の人間ドック(1日)の基本検査項目は、以下の通りです。

【人間ドックの必須項目例】

区分項目備考
身体測定身長
体重
肥満度
BMI
腹囲
生理血圧測定原則2回測定値と平均値
心電図
心拍数
眼底両眼撮り
眼圧
視力
聴力簡易聴力
呼吸機能1秒率、%肺活量、%1秒量(対標準1秒量)
X線・超音波胸部X線2方向
上部消化器官X線食道・胃・十二指腸。4ツ切等8枚以上
腹部超音波検査対象臓器:肝臓(脾臓を含む)・胆のう・膵臓・腎臓・腹部大動脈
生化学総蛋白
アルブミン
クレアチニン
eGFR
尿酸
総コレステロール
HDLコレステロール
LDLコレステロール
Non-HDLコレステロール
中性脂肪
総ビリルビン
AST(GOT)
ALT(GPT)
γ-GT(γ-GTP)
ALP
血糖(空腹時)
HbAlc
血液学赤血球
白血球
血色素
ヘマトクリット
MCV
MCH
MCHC
血小板数
血清学CRP定量法
血液型(ABO Rh)本人の申し出によって省略可能
HBs抗原本人の申し出によって省略可能
尿尿一般・沈渣蛋白・尿糖・潜血など
便潜血免疫法で実施(2日法)
問診・診察医療面接原則として、医師・保健師・看護師が行う
医師診察胸部聴診、頸部・腹部触診など
判定・指導結果説明医師が行う
保健指導原則として、医師・保健師・看護師が行う

【人間ドックのオプション項目例】

上部消化管内視鏡別途、十分な説明のもとに本人から文書同意を取得。
原則として、鎮痛および鎮静薬は使用しない。
乳房診察+マンモグラフィー乳房の診察については、医師の判断により省略可能
乳房診察+乳房超音波
婦人科診察+子宮頸部細胞診検体採取は医師が行う
PSA
HCV抗体未実施の場合は実施を推奨

人間ドックにかかる費用の相場

人間ドックは、個人もしくは職場などの団体で受けるかで費用相場が異なります。公益社団法人日本人間ドック学会が公表している「平成29年度(2017年度)実態調査」によると、費用相場の割合が高いトップ3は以下の通りです。

個人で1日ドック検診を受ける際の費用相場

費用割合
4万~4万4,999円31.7%
3万5,000~3万9,999円29.6%
4万5,000~4万9,999円10.7%

一番多いのは4万~4万4,999円で全体の31.7%を占めています。次いで3万5,000~3万9,999円が29.6%となっており、3万5,000~4万5,000円が個人で受ける際の相場と考えていいでしょう。

団体割引で1日ドッグ健診を受ける際の費用相場

費用割合
3万5,000~3万9,999円19.5%
4万~4万4,999円12.7%
3万~3万4,999円6.5%

団体割引料金が適用されるため、3万5,000~3万9,999円が最も多く19.5%を占めており、次いで4万~4万4,999円が12.7%を占めています。

これらを踏まえると相場の目安は、おおむね3万5,000~4万5,000円の価格帯といえるでしょう。

公的な補助制度の存在

上述したように人間ドックは、高額な費用がかかる検査です。しかし病気を早期発見するためにもできるだけ検査を受けることが推奨されています。例えば国民健康保険や加入している健康保険組合などでは、補助制度が用意されているため、確認してみましょう。

自治体による補助

例えば東京都府中市では「人間ドック受診費用助成制度」を設けており条件を満たした人に対して助成を行っています。

助成の対象
(すべての条件を満たす人)
・人間ドックの受診日および助成の申請日において、20歳以上の府中市市民である

・国内の1箇所の医療機関で受診している

・受診した人間ドックの検査項目に、市が指定する検査項目が含まれている

・ほかの助成制度を利用せず、全額自己負担で受診している

・申請日において、未納の市税がない
助成額受診料の2分の1(上限1万円)

さらに国民健康保険に加入している人に対する補助を行っている自治体もあります。東京都小平市の場合、30歳以上の国民健康保険加入者の補助内容は以下の通りです。

・人間ドックを受診した場合:1万円
・人間ドックと脳ドックを受診した場合:2万円

健康保険組合による補助

加入している健康保険組合などで補助制度が用意されているケースもあります。補助割合は、各健康保険組合で異なりますが、利用料金の50%(上限2万円)の補助を行っていたり、無料で行えたりするなどさまざまです。なかには、家族の受診に対しても補助を行っている健康保険組合もあります。自分の加入している健康保険組合の公式サイトを確認してみましょう。

人間ドックの費用が医療費控除の対象となる要件とは?

人間ドックの費用は、保険適用外のため、原則医療費控除の対象にはなりません。ただし人間ドックを受診した結果、病気が見つかり引き続き治療を行う場合は、病気の治療費と合わせて人間ドックの費用も医療費控除の対象となります。

実際に人間ドックでがんが発見される割合

人間ドックは、病気の早期発見や早期治療が目的です。しかし実際に人間ドックを受診することでがんが発見される割合は、どのくらいなのでしょうか。公益社団法人日本人間ドック学会の発表によると、1,000件以上の確定発見に至ったがん検査は、以下の通りです。

検査検査実施者数発見がん数(疑い含む)確定発見
胃がん273万4,790人1万9,570人2,115人
大腸がん294万5,031人4万154人2,058人
乳がん97万3,615人1万2,730人1,970人
前立腺がん86万5,292人7,421人1,157人

国立研究開発法人国立がん研究センターの資料では、日本人の罹患数の多い順位が「大腸」「肺」「胃」「乳房」「前立腺」となっていることからも、人間ドックの受診ががんの発見に役立っていることがわかります。

人間ドックの費用は原則自己負担

上述したように人間ドックの費用の目安は、約3万5,000~4万5,000円と高額です。しかし人間ドックは、治療目的ではないため、保険の適用にはならず原則全額自己負担の扱いになります。ただし自治体や加入している健康保険組合などで助成制度を設けているケースがあるため、条件に該当しているならぜひ利用しましょう。

なかには、生命保険などで優遇を受けられる商品もあるため、加入している生命保険会社のサイトを確認してみることをおすすめします。また、人間ドックを受けて病気が見つかり治療につながった場合は、支払った人間ドックの費用が医療費控除の対象となります。

そのため人間ドックを受診した際の領収書については、検査結果が出るまで保管しておくのがおすすめです。病気が発覚して治療につながった場合は、忘れずに医療費控除の確定申告を行うようにしましょう。ただし、人間ドックの費用を合わせた医療費が医療費控除の申告の条件を満たしている必要がある点には注意が必要です。

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。