相続税対策として生前贈与を検討している人もいるかもしれません。しかし生前贈与のやり方を間違えてしまうと贈与を行った際に贈与税の対象となってしまう可能性があります。生前贈与を行うにあたっては、生前贈与の概要と注意点をしっかりと理解しておくことが大切です。

本記事では、生前贈与の概要と活用するうえでの注意点について解説します。

贈与税の仕組み

贈与税が非課税になる生前贈与とは?活用するうえでの注意点も解説
(画像=78art/stock.adobe.com)

贈与税の対象となるのは、「個人から財産をもらったとき」です。法人から財産をもらったときは、贈与税の対象とはならず、所得税(一時所得)の対象となります。贈与税には「暦年贈与」を代表とする非課税枠が設けられており、基礎控除額を超えた金額に対して税金がかかる仕組みです。ちなみに納税者は贈与した側ではなく、贈与を受けた側となるため注意しましょう。

ただし納税額が10万円超で納付期限までに金銭納付が困難な理由がある場合は、延納申請書や担保提供関係書類を提出することで5年以内に分けて納める延納制度を利用することも可能です。利用の際には担保の提供が原則として必要になるほか、利子税がかかる点は押さえておきましょう。また贈与税の納付は、贈与した側と贈与を受けた側で連帯納付を行う義務があります。

贈与税がかからない贈与とは?

上述したように、法人から財産をもらった場合は贈与税がかからず一時所得となり所得税の対象となります。また扶養義務者(夫婦、親子、兄弟姉妹など)が生活費や教育費として必要な都度充当した財産の贈与も贈与税がかかりません。そのため生活に必要な治療費など子育てに関する費用のほか、学費や教材購入費などの教育費は、年間110万円を超えたとしても贈与税の納付は不要です。

ただし、贈与を受けた側が生活費や教育費とは異なる目的で利用したり通常必要と認められなかったりする場合は、贈与税の課税対象となります。

生前贈与の活用

生前贈与として利用できるのは「暦年贈与」だけではありません。ここからは、暦年贈与以外に認められている贈与税に関する非課税の特例について紹介します。

住宅資金等の取得費用

2022年1月1日~2023年12月31日の間に直系尊属(父母や祖父母など)から住宅用の家屋の取得や新築、もしくは増改築などに利用する費用として金銭の贈与を受けた場合に非課税枠を利用できる特例です。

一定の要件を満たせば贈与を受けた人ごとに500万円、その住宅が省エネ等住宅の場合は1,000万円までの贈与税が非課税となります。この適用を受けるための主な要件は、以下の通りです。

・贈与を受けた人が、贈与を受けた年の1月1日の時点において18歳以上
(贈与を受けた時期が2022年3月31日以前の場合は20歳以上)

・贈与を受けた人の合計所得金額が2,000万円以下
(対象となる住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル以下の場合は1,000万円以下)

・直系尊属から受けた贈与

・対象となる住宅が日本国内にあり、床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下

・贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与額全部を住宅の取得や新築、増改築の費用に充てる

・贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅に居住している
(以後遅滞なく居住することが確実である)

また本特例は、要件を満たせば後述する「相続税精算課税」と重複して適用を受けることが可能です。

結婚・子育て資金の一括贈与

2015年4月1日~2023年3月31日までの間に利用できる贈与制度の特例です。20歳以上50歳未満(2022年4月1日以降は18歳以上)の人が、直系尊属から結婚や子育ての資金に充てるために金融機関などとの一定の契約に基づいて贈与を受けた場合、1,000万円までは贈与税がかかりません。ただし本特例の適用は、贈与を受けた年の前年の合計所得金額が1,000万円以下である必要があります。

さらにほかにも結婚資金は、限度額が300万円など細かく規定されているため、事前に税務署などに用意されているパンフレットで詳細を確認しておきましょう。

教育資金の一括贈与

2013年4月1日~2023年3月31日までの間に30歳未満の人へ教育資金として贈与した場合に一定額が非課税となる特例です。本特例では、金融機関などと一定の契約に基づいて贈与を受けることで1,500万円までは贈与税が非課税となります。教育資金には「学校などに支払われるもの」「学校以外に支払うもの」がありますが、後者については500万円が限度です。

上述した結婚・子育て資金の一括贈与と教育資金の一括贈与は、金融機関経由で「非課税申告書」を税務署へ提出する必要があります。さらに贈与を受けた資金を口座から引き出す場合は、該当する資金に利用したことが分かる領収書など保管し、決められた期日までに金融機関などの営業所に提出しなければなりません。

相続時精算課税制度

相続税精算課税制度とは、贈与を受けた人が相続時精算課税を選択した贈与者ごとに1年間の間に贈与を受けた財産の課税価格合計額から2,500万円を差し引くことができる制度です。最終的に贈与を受けた財産の課税価格合計額が2,500万円を超えた場合は、超えた部分に対して20%の贈与税がかかります。

この相続税精算課税制度は、贈与を受けたときに2,500万円特別控除額および20%の税率を用いて贈与税を計算し、贈与者が亡くなったときに相続税で精算する点が特徴です。本制度を利用するためには、贈与者そして贈与を受ける人両方が以下の要件を満たしていなければなりません。なお相続時精算課税制度を選択した場合、暦年贈与には戻せないことを押さえておきましょう。

贈与者の要件贈与をした年の1月1日において60歳以上の直系尊属である
受贈者の要件贈与を受けた年の1月1日において18歳以上(2022年3月31日以前の贈与については20歳以上)で、贈与者の直系卑属である推定相続人もしくは孫である

2003年1月1日~2023年12月31日までに住宅の新築などのための金銭贈与を受けた場合、住宅資金の取得費用と同様の要件を満たせば「住宅資金等の取得費用」と「相続税精算課税制度」の重複適用を受けられます。しかもその際の贈与者の要件は、60歳未満であっても適用可能です。

生前贈与を活用する際の注意点

生前贈与には、さまざまな特例がありますが「暦年贈与」を利用する場合には注意が必要です。例えば毎年同額を同時期に贈与すると「定額贈与」とみなされて贈与額全体が課税対象となる可能性があります。また名義預金(本人以外が預金通帳を作ったり管理したりしている)とみなされると生前贈与に該当しません。贈与した人が亡くなった際には、贈与した分が相続税の対象となるため注意しましょう。

このような自体を避けるためにも贈与の際は、贈与ごとに贈与契約書の作成を心がけたいところです。なお相続開始前3年以内の贈与については、相続税の対象となる点も覚えておきましょう。

さまざまな特例を有効に活用しよう

生前贈与には「暦年贈与」「相続税精算課税制度」以外にも住宅取得や結婚・子育て資金、教育資金などの贈与特例があります。それぞれの利用にあたっては、所定の手続きや贈与を行う期限が定められていたり受贈する人の合計所得金額などの要件があったりするため、税務署や税理士などにしっかりと確認してから利用を検討しましょう。

※本記事で記載している内容は2022年11月時点の情報です

新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。