GDPにおける設備投資は民間企業設備と呼ばれ、企業が製品やサービスを提供するために購入する機械や建築物、ソフトウェアなどが該当する。GDPの中でも個人消費に次ぐ民間需要の項目であり、2016年度の名目GDPのうち15.8%を占め、その規模は80兆円にも上る。

IT化で短縮する受注から投資への期間

機械受注統計,統計
(画像=PIXTA ※写真はイメージです)

個人消費に比べれば規模は小さいが、変動が大きいことから景気に及ぼす影響力が大きいことが特徴である。例えば、実質GDPが前年比▲2.2%減少した2009年度には民間企業設備が同▲11.9%落ち込み、これが▲1.8%ポイントのマイナス寄与となった。逆に2013年度には、実質GDPが同+2.6%拡大した際にも、同+7.0%拡大した設備投資が+1.0%ポイント押し上げに寄与している。

永濱氏図1
(画像=筆者作成)

このように、日本の景気動向を占う上で設備投資の重要性は極めて高いことから、設備投資の動向をいち早くとらえようとする経済指標は多数存在する。しかし、その中でも内閣府が発表する『機械受注統計』が、月次の設備投資先行指標として最も注目されている。

この指標は280社の機械メーカーの受注を集計したものであり、受注額には民間需要以外にも外需や官公需、代理店経由の受注が含まれている。その中でも設備投資の先行指標として最も注目されるのが「船舶・電力を除く民需」である。船舶と電力が除かれるのは、それらの受注が大口であることが多く、変動を極端に大きくすることでデータのかく乱要因となるためである。

ただ、それでも受注統計は季節調整値の前月比が大きく振れやすいことから、3ヶ月移動平均などを用いて判断することが一般的である。また、機械受注はGDPベースの民間設備投資に1~2四半期先行する性質を持つ。これは、機械の受注から生産、納品段階までに時間を要するためである。なお、機械受注の外需は最終的に輸出となるが、海外企業が機械メーカーに発注した段階で機械受注に含まれるため、輸出の先行指標としても重宝される。

永濱氏図2
(画像=筆者作成)

投資の多様化で変わる手持ち資金との関係