本記事は、ディーン・グラジオーシ氏の著書『億万長者に学ぶ 自分の磨き方』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています

第2の人生で成功を収めた女性のストーリー

ネガティブ,ポジティブ
(画像=moonship/stock.adobe.com)

セミナーの受講者だったジーナは素晴らしい女性で、私の大切な友人になった。ジーナと初めて出会ったとき、彼女はその時点での自分と将来の自分について、あるストーリーを自身に言い聞かせていた。だがそれについて述べる前に、ジーナがどんな人物だったのかを簡単に紹介しよう。

彼女は立派な専業主婦だった。夫が家の外で仕事に励んでいる間、ジーナは一生懸命に家庭を守った。家計を助けるためにピアノを教え、夫の世話をし、母親としても優秀だった。ジーナはその役割を楽しんでいたが、一方で家庭を優先するために自分の夢や目標を犠牲にしていると感じていた。誰でも時には自分の選択を疑問に思うものだが、それまでジーナは自分が選んだ役割にある程度満足していた。

ジーナが不幸な気分になったのは、内なる悪魔がネガティブなストーリーを言い聞かせたからだ。

子供たちが大学に進学するようになったとき、ジーナの心境に大きな変化が起きた。子供たちが学業で成果を上げ、母親としてとても幸せだったが、心のなかに潜んでいた内なる悪魔がネガティブなストーリーを言い聞かせたために、彼女はすっかり落ち込んでしまった。

そのネガティブなストーリーとは次のようなものだった。

「これまでずっと家族を支えるために全力を尽くしてきたが、60代になってその役割は終わった。今の自分は孤独で、これ以上することはない。友人たちが言うように、そろそろ人生の幕引きをし、過去をなつかしみ、死ぬまでお金がもつように出費を減らすべきだ。

特別なスキルはなかったが、近所の子供たちにピアノを教えるか、地元のデパートで店員として働いて家計の足しになればいいと思っていた。私のような高齢の女性は、もうたいしたことができない。しかし、少なくとも母親として立派な仕事をしてきたつもりだ」

一見、このストーリーはそんなに悪くないように思えるかもしれない。だが実際には悪いどころではない。ひどすぎる。彼女はこのストーリーのせいで、自分にはもう価値がないと思い込み、抑うつ状態に陥っていた。

彼女のストーリーの内容はフィクションだったにもかかわらず、本人がそれをたびたび自分に言い聞かせたため現実になり始めた。心のなかで何度も繰り返したので、真実であると受け止めてしまったのだ。不幸なことに、これはよくあることだ。

私が伝えたいメッセージを簡潔にまとめるとこうなる。ふだんから自分に言い聞かせているストーリーが、やがてその人の人生になる。私たちは自分のストーリーに付随する感情を人生のあらゆることに投影する。ジーナの場合、「年をとって役割を終えたので、もうたいしたことはできない。人生の幕引きをする時期なので、そろそろ夢をあきらめよう」というストーリーを自分に言い聞かせていた。

実際、これがジーナの当時の状態だった。だが、彼女は私と力を合わせてそのストーリーを打破することにした。彼女は私の本を読んで、自分のストーリーがつくり話だということを理解した。

ジーナは自分の心のなかに潜む内なる悪魔に気づいたとき、それを撃退することを決意した。彼女はこの悪魔を単なる象徴ではなく、実在の敵とみなした。この悪魔について知れば知るほど、それが語りかける有害無益なストーリーを打破したいと強く思うようになった。

ジーナは、心のなかで自分に言い聞かせているストーリーを変えれば、現在と未来を変えることができると確信した。

そして、彼女はまさにそれをやってのけた。人生を切り開く新しいストーリーを自分に言い聞かせるようにしたのだ。その内容を紹介しよう。

「私は前途有望な60代の女性で、人生の次の局面を発見したばかりだ。何歳になろうと、その気になればできないことは何もない。年齢を重ねるにつれて、より賢くなるための知恵を授かる。私は喜びや幸せ、豊かさをいくらでも手に入れることができる。そしてそれを実現するために才能を活用する」

これは「人生のいい時期はもう終わったから身をひこう」と思い込んでいたときとはまったく正反対の考え方だ。

ジーナは新しいストーリーを自分に言い聞かせることによって道を切り開いた。彼女は成功習慣を身につけることによって、この5年間で多くの成果を上げることができた。それを列挙しよう。

・新規事業を立ち上げて理想のライフスタイルを実現した
・高収入を得ているので、夫に働いてもらう必要がなくなった
・全米25都市と諸外国を旅行した
・自分の変身ぶりについて何度も講演で話した
・自分の経験について本を書いた
・シアトルの海を眺められる素敵な家を買った
・子供たちの大学の奨学金を完済した
・家族で休暇を過ごすための資金を得た
・かつてなかったくらい最高の体調を維持している
・息子に過酷な労働を辞めさせて自分の会社で働かせている
・高級ワインを飲みながらおいしい料理を楽しんでいる
・自由な生活を楽しんでいる
・いつも満面の笑みを浮かべている
・自分の子供たちに夢をかなえるお手本を示している

ここで少し考えてほしい。ジーナの新しい現実は外部の変化によってもたらされたのではない。宝くじに当たったとか莫大な遺産を相続したのでもない。たまたま幸運に恵まれたのでもない。

彼女は古いストーリーを変えることによって新しい習慣を身につけ、理想の人生を実現したのだ。彼女の変身ぶりに触発されて自分のストーリーを変えたいと思わないなら、あなたは古いストーリーに完全に呪縛されている。

ジーナは古いストーリーが足かせになっていることに気づいたとき、一文無しで絶望していたわけではない。現状に甘んじていて、能力を存分に発揮していなかっただけだ。

より多くのことを成し遂げるために外部の力に頼る必要がないことに気づいたとき、彼女は古いストーリーを書き換えた。そうやって初めて心の平安と幸福を手に入れることができた。もちろん、新規事業を立ち上げて資産を築いたことは素晴らしいが、それはおまけのようなものだ。

あなたは「ジーナにはできたが、自分は彼女ほど頭がよくないし、強い人間でもない」と思っているかもしれない。ジーナだけがそういう劇的な変化を経験したのなら、そういう疑念を抱くのは当然だ。だが私の知るかぎり、そういう人は彼女のほかにもたくさんいる。私はあらゆるタイプの人たちのお手伝いをしてきた。その人たちの知能や経歴、性格、能力は多種多様だ。充実感が得られずに悩んでいるとか、お金がなくて困っているなら、自分に言い聞かせているネガティブなストーリーを書き換えなければならない。ふだん自分に言い聞かせているストーリーを変えれば、人生は変わる。

ジーナのエピソードに触発されて自分のストーリーを変えたくなったとしても、1日か2日もすれば元に戻り、古いストーリーがぶり返すかもしれない。

億万長者に学ぶ 自分の磨き方
ディーン・グラジオーシ(Dean Graziosi)
アメリカの実業家、セミナー講師、テレビタレント。不動産業界で頭角を現し、自己啓発の分野でも活躍している。「伝説のサクセスコーチ」として知られ、約15年にわたってテレビのトーク番組に出演するだけでなく、世界中でセミナーを開催し、オンラインサロンも好評を博す。6冊の著書のうち2冊がニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーとなり、全著作の累計発行部数は100万部を超える。現在、妻と2人の子供と一緒にアリゾナ州フェニックスで暮らす。

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