確定拠出年金で大切なのは、自分のライフプランにふさわしい「ポートフォリオ」を組むことである。しかし、一口にライフプランといっても、年齢や環境によってそれぞれだ。ここでは20代の夫婦をモデルに筆者がお勧めする「DCポートフォリオ」を紹介しよう。

20代の「DCポートフォリオ」づくりのポイント

今回、筆者のFP事務所へ相談に訪れた荒田大輔さん(仮名、27歳)は、妻の理絵さん(同25歳)と二人世帯。子供はまだいないが、数年後にはほしいと考えている。

二人とも会社員で、世帯年収は750万円である。住居は持ち家ではなく賃貸、将来的にローンを組んで住宅を購入するかどうかはまだ考えていない。二人とも勤め先には企業年金がないこともあり、確定拠出年金で老後の資産形成をと相談に訪れた。

最初のポイントは、許容できるリスクの度合いだ。二人とも20代で、受取の60歳までは35年ほど時間がある。時間は資産形成をするうえで、もっとも大きな財産といってもいい。リスクをとって大きなリターンを期待することも、若いからこそできることだ。

上記を踏まえ二人のDCポートフォリオは、ある程度リスクを取れる商品構成を考えるとして、次に決めなければならないのは拠出額である。いまは子供がおらず、夫婦ともに働いて、貯蓄も比較的余裕をもってできている。しかし、今後出産・子育を想定しており、妻の理絵さんの収入が、今後10年間現状の水準を維持できるとは考えにくい。加えて住宅を購入もすることになると、頭金で大きな出費と、固定資産税や修繕積立などもコンスタントにかかってくる費用になる。

以上を考慮したうえで、商品構成を考えよう。

運用期間の長さを武器に商品構成を構築

それでは、筆者が推奨する「DCポートフォリオ」を紹介しよう。

(1) 年金保険 10%
(2) 投資信託(日本株型) 20%
(3) 投資信託(海外株型) 30%
(3) REIT(国内型) 20%
(4) 投資信託(新興国債券型) 20%

元本保証商品は保険の10%で、残り90%は元本保証のないリスク商品である。債券は新興国型なので、同じ債券のなかでも比較的リスクを取った形になる。ちなみに、現在の確定拠出年金の運用商品選択状況(運営管理協議会資料より)を見ると約6割が預金や保険など、元本保証型の商品に偏っている。そうした状況を鑑みると、筆者が提案した商品構成は、少しパンチの利いたポートフォリオに映るかもしれない。

しかし、20代(運用時間)という武器を最大限に活用するためにも、ぜひ積極的に各商品を組み入れることを勧めたい。というのも、自身が購入した商品であれば、その分野の状況、関係情勢など、知らず知らずのうちに興味を持って学ぶことができるからだ。よほど大きな環境変化がなければ、5年後あたりにリバランスを考える際、今よりもずっと商品構成に積極的な意見を組み入れることになるだろう。

DCポートフォリオ運用の留意点

商品構成を考える際には、同じ株式・債券・REITのなかでも「パッシブ型」と「アクティブ型」という表記の違いに注意してほしい。これは運用方法の違いで、TOPIXや米国のS&P500のような指数に連動して運用しているか、それを上回るリスクで運用しているかの違いである。前者がパッシブで、後者がアクティブだ。

確定拠出年金は長期運用なので、高い手数料を払ってアクティブ運用のファンドマネージャーに期待するよりも、そこにかかるコストを低く抑えることが賢明と筆者は考える。

また市場の情勢が大きく変わった時など、あわてて資産を売却することが無い様に、日ごろから投資に対する知識を積み上げておくことも大切だ。たとえば、昨年2015年はチャイナショックや原油安の影響で、一次市場は混乱を見せたが、今はどうだろう。中国の伸び率は以前ほどとはいかなくても、成長していることに変わりはない。原油もそうだ。原油安は現在も進行中であるが、下値不安を残すなかで安値を淡々と買い続けることは生身の人間では、なかなか出来ないものである。機械的に毎月決まった額を買い付けるDCのような仕組みであるからこそ、振り返った時の成果が大きい。

とはいえ、確定拠出年金はあくまで自己責任で運用(指図)をするもの。ポートフォリオをリバランスするのは、1年間の運用結果を確認するうえでも有効なことと言える。必要なときはスイッチングや配分変更といった方法もとれる。

スイッチングは、当初の配分からずれた分を修正することで、資産を一部または全部売却・解約し、新たな商品を購入することだ。ただし、短期間での解約には「控除」がかかったり、売却も「信託財産留保額」が差し引かれたりする場合があるので、あまり頻繁なスイッチングは勧められない。DCポートフォリオは、短期間で結果を求めるものではなく、あくまで定年退職後を見据えた長期で運用するものであることを忘れてはならない。

今回紹介した荒田さん夫婦のようなディンクス世帯や、独身者は比較的時間に余裕がある世代である。日ごろからの知識取得はもちろんのこと、実践を積み重ねるなかで感覚を鍛え、35年先の未来をイメージしながら、腰を据えたDCポートフォリオ運用に取り組んでほしい。

佐々木 愛子
ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅱ種、相続診断士
国内外の保険会社で8年以上営業を経験。リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして独立し、販売から相談業務へ移行。10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。 FP Café 登録FP。