5月15日、スマートフォンゲーム業界に衝撃が走りました。ガンホーの「パズル&ドラゴンズ(通称パズドラ)」が約1年半もの間守り続けていたApp Storeトップセールスランキング1位の座を、ミクシィの「モンスターストライク(通称モンスト)」が奪ったのです。モンストの好調により、期中赤字予想だった2014年3月期は通期で営業黒字となり、来期については売上高400億円(当期比229%増)、営業利益100億円(当期比1,982%増)という強気な予想まで飛び出しました。5月14日のこの決算発表後、ミクシィの株価は2日連続のストップ高、5,000円台の株価は翌週には一時10,000円台に届くまで急伸しています。
ガンホーがパズドラで売上高が急拡大し株価が急伸したのは記憶に新しいですが、ひとつのゲームで会社の業績が大きく変わるというのはスマホゲーム市場の特徴と言えるでしょう。パズドラ以降、ガンホーの独り勝ちが続いていましたが、ミクシィがようやくその牙城を崩したということで、 このニュースはガンホー独り勝ちのスマホゲーム市場の様相が変わる象徴となるのかも知れません。下記グラフの取り、3月1日からのCM開始直後からTOP10以内を常にキープしており、その効果が継続的に現れていることが伺えます。ミクシィがモンストでどこまで売上を伸ばしていけるのか、今後のミクシィの業績はスマホゲーム業界全体の動向を占ううえでも注目されます。
国内市場での競争は激しさを増しており、新しい市場を求めて各社の海外展開にも注目が集まります。国内市場を支配したガンホーは、さらなる成長のために海外展開を進めており、既にパズドラを北米市場、韓国市場、香港市場に展開しています。また、ミクシィも今年5月より台湾でモンストの提供を開始しました。海外展開が次々と進められているなかで、特に注目されるのがこれから急拡大が見込まれる中国市場における動向です。オンラインゲーム市場規模では日本よりも大きく、その潜在的な市場規模では日本を越える可能性もあります。この急拡大する市場において早い段階で大きなシェアをとることができれば、国内市場におけるパズドラのように大きな利益を生み出す可能性を秘めているのです。
今年に入ってミクシィはモンストの中国(その他、香港・マカオ)での事業展開について中国テンセント社と合意したと発表しています。一方のガンホーも、現地パートナーは公表されていませんが合意の最終段階で年内に中国展開を開始するとされています。特にガンホーは親会社のソフトバンクとともに中国展開を連携して行っていくことが予想されます。ソフトバンクはフィンランドのスマホゲーム開発会社の「スーパーセル」を買収しており、また、中国最大級のAndroidアプリストア「Wandoujia」の筆頭株主でもあります。ガンホーが中国展開を進めるうえで有利な環境だと言っていいでしょう。スマホゲーム業界での競争は激しくなっており単独で生き残るのは厳しくなってくるため、今後もこういったM&Aの動向は注目されます。
中国市場でどの程度シェアを取れるかは今後の売上拡大のための鍵を握っているといえ、そのための各社の施策には注意が必要です。また、ひとつのゲームで業績が一変するというスマホゲーム業界特有の事情もあり、不確実性が高い環境にあります。そのため、各社による新しい施策が打たれた際には思惑先行で株価が動き、株価が大きく動くために短期的な資金が流入するという流れがよく見られます。ミクシィの株価急伸の裏にはこのような流れもあったのでしょう。需給主導で大きな株価の波が形成されやすいため、個人の投資家としては急伸したところに手を出して高値掴みをすることには注意しておいたほうが良いでしょう。
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Top Photo: AppStore トップセールスランキング(2014年5月15日時点)