キティ

5月22日の株式市場でサンリオが一時ストップ安の水準まで売られ、2012年8月以来の安値を付けました。安値の原因は、決算発表時の中期経営計画の説明で、店舗ベースの小売事業を柱に据える他、今年秋に上海にテーマパークを開設するなど、従来のライセンス事業中心の中期戦略の転換、アジア重視の戦略が投資家に支持されなかった形です。 サンリオの中期戦略の転換は投資家にとってネガティヴサプライズとして受け入れられた可能性があります。当稿では、4月28日に発表したオリエンタルランドの中期戦略と比較し、なぜ受け入れなかったかの原因を探ります。

今回発表したオリエンタルランドの中期経営計画の骨子は、①コア事業である東京ディズニーリゾート事業の長期持続的な成長 ②新規事業によるさらなる成長の二本柱となっています。東京ディズニーリゾートについては10年間で総額5,000億円の投資を行う予定であり、現行から入場者数を約10%増加させ、年間平均入場者数を3000万人レベルにすることを計画しています。また、東京ディズニーリゾート事業で得たキャッシュフローを新規事業の投資に充てる計画です。

資本市場もこの計画を好意的に受け止めています。中期経営計画発表後の4月30日の株価は15,500円でしたが、5月26日の終値では16,690円と7.6%の上昇率です。この間の日経平均の上昇率は1.5%ですから、オリエンタルランドは平均を大きく上回るパフォーマンスを見せています。

サンリオの現行の業績は好調ですが、その要因はライセンス事業です。サンリオの営業利益率は、2011年3月期は19.6%だったのが、2014年3月期には27.3%と上昇しています。この要因はライセンス収入率の増加によるものです。ライセンス収入率は2011年3月期の35.1%から2014年3月期の45.4%と割合が大きく増大しており、特に海外でのライセンス事業が中国、香港を中心に伸びています。このように、サンリオでのライセンス事業は主力事業となっていますが、今回の中期経営計画でライセンスから物販への戦略転換を掲げたため、株価の大幅な下落につながったと考えられます。

顧客へのブランドロイヤリティーが収益の源泉となるキャラクター事業では、従来のブランド価値を継続して活かすのが重要であることを、サンリオとオリエンタルランドの例が改めて示しています。

photo credit: ハローキティ via Wikipedia cc