先日、起業を目指すなら、最低限知っておきたい法律のことという記事を掲載し、特に会社の創業期や、M&Aなどの節目のタイミングでの、法律や専門家との関わりを述べました。
本日はIT企業家、企業法務を担当される弁護士の方々が、2012年に特に注目した案件について、日経新聞12月19日朝刊【2012年企業法務・弁護士調査】を参考に、付加情報を交えつつその要点をお届けしたいと思います。
◉近年の企業間法律紛争のトレンド
現在、世界的に経済の低成長が続いており、先進国か新興国かを問わず、限られたパイの中での企業間のシェア争いが熾烈を極めています。そしてその競争は、価格や品質などの競い合いだけではなく、知財の保護やその活用、また独占禁止法などに基づいた訴訟など、場外戦も活発になってきています。
日本企業も成長を求めて海外への進出を加速させているため、国内企業が関わる海外での紛争も増えてきています。
低成長が続く日本国内では、コスト削減のひずみが契約関連や労働関連の紛争となって噴出しています。
例えば製造業を中心とした解雇にまつわる訴訟、他にも業務委託やアウトソーシングの中途解約などに関わる損害賠償請求訴訟などです。
結果、日本経済新聞社が実施した「第8回企業法務・弁護士調査」では、回答した企業の8割近くが、訴訟などの法律のトラブルを抱えていると答えるようになりました。
そしてこの様な問題を解決、あるいは予防をするために、法律面での専門家のより一層の活躍が期待されています。
◉企業法務を担当する弁護士が注目した案件
日経新聞が行ったアンケートに対して、以下のような回答が集まっています。(弁護士376人を対象に、254人が回答(回答率68%))
【国内】
1位 グリー対DeNA「釣ゲーム」知財高裁判決(12票)
2位 米アップル対韓サムスンのスマホ特許訴訟(7票)
3位 ピンク・レディーのパブリシティー権をめぐる最高裁判決(6票)
3位 スルガ銀行対日本IBMのシステム開発を巡る東京地裁判決(6票)
3位 新日鉄と住友金属鉱業の合併(6票)
【海外】
1位 Apple対SAMSUNGのスマートフォン特許訴訟(48票)
2位 ソフトバンクの米スプリント買収(8票)
2位 米司法省による日本企業へのカルテル捜査(8票)
4位 ロンドン銀行間金利(LIBOR)不正操作問題(7票)
5位 英ボーダフォングループによるインド企業買収を巡り、ボーダンフォン側の租税回避行為を否定したインド最高裁判決(4票)
特許や知財に関連した訴訟案件や、独占禁止法などによる当局からの捜査が注目を集めています。特に高成長が続く通信関連分野では、利益を生み出す知財を巡る争いが多発しました。