今年の秋ごろから、中国の不動産バブルが再熱しているとの指摘が増えている。バブルは膨れ上がっても、はじけてしまっても経済成長には大きなマイナス。中国政府も手をこまねいているわけではないが、うまく制御できていないようだ。2017年中にもはじけるのではないかとの指摘もある。

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経済成長で生まれた不動産バブル

中国は、2010年に日本のGDPを抜き、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となった。その前年ごろから住宅価格が高騰し、バブルのような様相を見せていた。

バブルとは、簡単に言えば、資産価格が通常の賃料や金利などから大幅に乖離して形成されてしまう現象のこと。1980年代の日本の「不動産バブル」が世界初とされる。その後、90年代の「アメリカITバブル」、2008年の「コモディティバブル」を経て、中国の「住宅バブル」は世界4番目と位置付けられた。

世界的な金融危機に対応するため、中国当局は銀行に融資拡大を奨励して景気を刺激したり、貸出総量規制を撤廃するなどして大幅な金融緩和を実施。不動産市場に資金が大量に流れ込んだ。また、経済成長に伴う労働力不足を解消するため、農村部から都市部へ人口を移動させたことで、住宅需要が一気に高まった。

結果、中国主要70都市の住宅価格は2010年、前年同期比で12.8%アップを記録。北京や上海の一部では、住宅価格が普通の世帯の年間可処分所得の20〜30倍にもなったところもあった。

ただ、実体経済と価格が乖離すれば経済に悪影響を及ぼすため、政府にはソフトランディングのための政策に乗り出した。購入する住宅の頭金を2割から3割に引き上げたり、3軒目の住宅購入には銀行に融資させないようにするなど、大胆な抑制策を展開。中国の経済成長は好調を続ける一方で、諸外国では実体経済を怪しむ声が絶えないのだが、この間、不動産バブルに関してはこれといって崩壊現象はみられなかった。

この秋、再燃した不動産バブル

今年7月18日付の日経新聞電子版は「中国の不動産市場の局所バブルに一服感が出てきた」「背景にあるのは当局によるバブル退治の動き」と報じた。主要70都市の新築住宅価格動向では、上昇した都市の数が62(3月)→65(4月)→60(5月)→55(6月)と減ったことなどが根拠だった。

ところが9月、その報道とは真逆の動きが伝えられた。9月26日付のBloomberg Newsによると、同紙が政府統計に基づいて試算したところ、8月の新築住宅価格は前月比1.2%増と、約6年ぶりの大きな値上がりになったというのだ。

先述の主要70都市の新築住宅価格動向では、7月の51都市から64都市に上昇。上海では新築価格が前月比4.4%増、前年同月比では31%と記録的な伸びとなっている。北京でも前年同月比で24%となった。

こうした住宅価格急騰の主な原因として、「不動産市場に投資資金が集中したため」とされる。ここ最近の中国実体経済の低迷で株や債券やファンドなど金融商品の収益率が低下している。このため、投資家の運用先が高い収益を得られる不動産市場に向かったのだ。また、供給過多で生じた住宅在庫を削減するため、政府が住宅ローンの優遇措置を出したため、不動産界隈が活気づくとの観測もその動きを後押しした。

こうした動きに対し、政府も手をこまねいているわけではない。ただ、抑制策はあまり効いていないようだ。

政府は9月、北京や上海など20都市で住宅購入や住宅ローンに制限をかけた。結果、多くの都市で価格が下落。江蘇州蘇州市の住宅価格は4日間で1平方メートルあたり2万2000元(約34万円)から1万3000元(約20万円)に急落した。

こんな動きに対し、国民からは、自己保有の不動産価値が下落するのを不安視する声が上がった。政府は国民の不安に対処するため、共産党の党員幹部に対し、不動産の売却を禁じた。

中国では古来より役人に対する「わいろ」が文化として存在し、この時代でも共産党内で堂々と横行している。結果、幹部たちは私腹を肥やし、投機目的で所有する住宅を10軒前後も所有している者もいるという。実際、2013年に収賄や職権乱用などの容疑で逮捕され、2年の執行猶予付き死刑判決が出された鉄道部の元部長の収賄総額は6460万元(約10億7000万円)にも上り、世界を驚かせた。

こうした実例をみれば、共産党幹部が保有する資産総額は膨大であることは容易に想像できる。彼らの資産を市場に流出させないことは、「身を切る姿勢」を示して国民のガス抜きにはなったが、経済にとっては、ブレーキの踏み込みを甘くしたようなことになっている。

バブル崩壊はいつ起こる?

そんな経緯で今年、再燃した住宅バブルだが、投資家の関心はいつ、何をきっかけにバブルがはじけるのかの一点だろう。バブルの絶頂期を指摘するのはプロでも難しいとされる。おまけに中国は共産党による一党独裁国家なので、崩壊の時期を読むのはとてつもなく難しい。

ただ、バブルがはじけた順で言うと、アメリカではなく、日本パターンと言えそうだ。すなわち、アメリカでは不動産バブルがはじけた後に株バブルがはじけたのに対し、日本では逆。日経平均株価は1989年12月29日をピークに暴落に転じたが、地価が下落を始めたのは1992年になってから。つまり、2年のブランクがあった。

中国では2015年夏には株バブルがはじけたとされている。日本のケースがそのまま当てはまるかは不明ではあるが、中国の不動産バブル崩壊は2017年になるのではないかという指摘にはある程度の合理性があるといえよう。

今年4月、リーマンショックを予言したとされる資産家で著名投資家のジョージ・ソロス氏は「中国経済は世界的な景気後退に拍車がかかる前の2007〜2008年当時の米国に似ている。皆が予想する時期よりも後に転換点を迎える可能性がある」と指摘した。発言から12月でもう8か月が経過している。2017年の間と考えておいたほうがよいのではないだろうか。(飛鳥一咲 フリーライター)