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ユーチューブ動画で楽しむ時代は終わり、クロームキャストの時代がくる?

現在世界最大のインターネット動画サイトである「ユーチューブ(YouTube)」は1年に約3億5000万本もの動画を集め約60カ国で10億人以上が視聴しています。 最近ではスマートフォンやタブレットといったモバイル端末で簡単に操作ができることもあり、小さな子供からお年寄りまで幅広い年代から親しまれています。 もしそのユーチューブ動画を、仮に自宅の大画面テレビに映して楽しむとしたら、高価な機器を購入したり、設定が面倒でしかも複雑ということから一部の人にしかそういった利用方法は行われていませんでした。

しかし今回、米グーグルが日本でも販売を開始した「クロームキャスト」と呼ぶまったく新しいデバイスを利用することで、スマホやタブレット、パソコンなどネットに接続できる端末と連動させ、動画や音楽、映画、ゲームなどのネットコンテンツなどを、テレビで簡単に映し出せるようになります。 その価格も税抜きで4,200円という比較的手頃な値段で設定されており、グーグルプレイやアマゾンなどのネット通販のほか、家電量販チェーンであるヤマダ電機グループ、ビックカメラグループなどでも購入できます。 このクロームキャストはどういったものかをご紹介いたします。

①優れたストリーミング機能

クロームキャストの大きさは手のひらに収まるくらいとコンパクトで、無線LANによってネットに接続するWi-Fi(ワイファイ)環境で使用します。 クロームキャスト自体がネット接続し、音声や動画データの受信を行いながら同時に再生するという「ストリーミング」機能も内蔵されています。

②シンプルと言える操作方法

その操作はとてもシンプルで誰でもできる簡単なものです。 最近のテレビならたいてい付いているHDMI端子に差し込んでWi-Fiネットワークに接続すると、スマホやタブレット、パソコンをあたかもリモコンのように使って、さまざまなネットコンテンツをテレビで視聴できます。 スマホやタブレット向けのアプリとしては、まずユーチューブやグーグルプレイ、NTTドコモの定額制ビデオ配信サービス「dビデオ」、KDDIの「auビデオパス」などに対応しており、クロームキャストにネットコンテンツを送ることで操作する端末としては、グーグルのアンドロイド、アップルのアイフォン、アイパッドやマック、またパソコンでは、グーグルのネット閲覧ソフト「クローム(Chrome)」とも連動します。 今後、クロームキャスト向けのウェブサイトやアプリが開発されることでそれらにも順に対応し、次々とコンテンツが追加される見通しとなっているようです。

③テレビを通信がジャックし融合する

どちらにしても、これまでは切り離しが比較的明確にされていた放送・通信業界とネットの世界が少しずつ近づいて融合していく一方で、本格的な競合関係に入り始めていることは確かと言えます。放送業界であるテレビ局にしてみれば、牙城だったリビング娯楽の王様という地位はもう守れなくなるかもしれないからです。 また、ネット動画の周辺で広告市場をはじめとして新たなビジネスチャンスが勃興しつつあります。

市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングによると、日本で昨年(2013年)、ユーチューブが主体となるネット動画広告市場が前年比の3倍となる132億円に急拡大したということです。 電通の調べによると全体では9,381億円程度という数字が出ており、ネット広告に占める割合はまだ数%ですが、シード・プランニングは2017年に日本の動画広告市場が640億円まで拡大すると予想しています。

さらに電通の調べによると1兆7,913億円という数字が出ているテレビ広告市場を少しずつ侵食していくことが予想されます。 通信がテレビをジャックすることで、結果として通信の広告が伸びていくという形になるわけです。テレビ放送業界側は、この攻勢に今後どういった対応をするかが問われることになるでしょう。


日本でも消費者に受け入れられる可能性が高い

このクロームキャストは2013年7月にまず米国で発売、その後、欧州などにも展開し、日本での発売は14カ国目となります。 米国ではアマゾンで売り切れ状態が続く人気を呼んでいるようです。 これまでもテレビでネット上の動画を視聴することは可能でしたが、そのための初期投資が比較的高くかかる上、色々と制約もあったりと不便でした。 例を上げると主要テレビメーカーでネットに対応しているスマートテレビなどは、普通のテレビよりも価格設定が高くその製品を買わなければ機能は使えないというデメリットがありました。 アップルのiTunesが搭載され、ネット動画をテレビに再生できる機器である「アップルTV」は99ドルと比較的安いのですが、アップル端末からの利用に限られています。

また、家電量販チェーンであるノジマはが2013年から2万円で販売している「スマテレスティック」と呼ぶアンドロイドスマホのアプリをテレビに映す機器もありますが、これらと比べると、クロームキャストの値段は半分以下で、しかも幅広い端末にも対応した上、ネットコンテンツをテレビで楽しめるようにする点で、今後消費者に受け入れられる可能性高いと言えます。

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