今年4月からキャッシュレス化計画の一環として、硬貨廃止を検討していた韓国中央銀行(BoK)が12月9日、2020年までに計画を完了させる意向を改めて発表した。英FT紙が報じている。

実現後は硬貨の生産は中止され、代わりにカードへのチャージや口座振替などで流通される。専門家の多くは「韓国経済の成長に貢献する画期的な動き」と、ポジティブな見解を示しているようだ。

過度のキャッシュレス化は混乱をまねく?

インドの高額紙幣廃止が世間を騒がせているが、韓国は少額硬貨を廃棄処分するという方向で大幅なコスト削減を図るようだ。4月の法案発表以来、利便性などを懸念する一部の国民からは反対の声が挙がっていたものの、着実に準備が進められていた。

BoKの報告によると、カード決済システムが確立されている韓国はすでにキャッシュレス化が進んだ国のひとつであり、コインレス社会に最適な環境だという。カードの所有率が国民一人当たり1.9枚に対し、現金決済は全体の2割しかないそうだ。

硬貨の存在価値自体をなくすのではなく、カードなどの代用手段を主流にするという概念であるが、硬貨の流通量を大幅に減らすだけでも、かなりの経済効果が期待できるとされている。

韓国経済研究機関の研究者は「硬貨を廃止するだけで、年間1.2%の経済成長率引きあげるが期待できる」とコメント。韓国では年間4000万ドル(約46億3320万円)が硬貨製造に費やされている。それに回収、管理コストなどが加算されるとなれば、コインレス化がどれほどコスト削減に貢献するかは想像するに容易い。

キャッシュレス化が世界的傾向となりつつある近年、今後各国で同様の動きが活発化する可能性は高い。その反面、「現金決済人気もまだまだ根強い」という事実も無視されるべきではない。キャッシュレス先進国であるスウェーデン中央銀行も、過剰なキャッシュレス社会化に懸念を示しており、本当の意味での金融包括を実現するうえで「現金とオルタナ決済のバランス」が重要となりそうだ。( FinTech online編集部

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