前回(1月12日)掲載した、 意外と地味?超富裕層の姿とは[前編] の続きとなります。
前回は、PRESIDENT 2012.4.2に掲載された、船井総合研究所小林昇太郎氏の書かれた、「資産10億円超!メガ富豪の職業、学歴、住まい」という記事を参考に、資産5億〜10億円以上の超富裕層と呼ばれる方々の特徴や属性などをお届けしました。
大まかにまとめますと、日本の超富裕層は3万人前後存在し、その年齢は70代など退職者世代が中心。現役、もしくは引退した法人のオーナー経営者が多く、東名坂といわれる地域、中でも優良企業の多い地域に多く住んでいるというものです。
後編の本日は、そんな特徴を持つ超富裕層の方々が、消費に対してどのような振る舞いをするのかについてお届けしたいと思います。
◉超富裕層の消費の特徴は割と控えめ?
日経ビジネス2012年12月10日号に、非常に面白い特集記事がありました。
『富裕層の正体 彼らが消費をやめた理由』というタイトルで、日本の超富裕層や富裕層の消費の減退現象と、その理由を追うという特集です。
この特集、冒頭部分からとてもショッキングな事実が記されています。
年収1500万円以上の高額所得者世帯の名目国内家計消費支出の合計は、総務省などによれば2000年頃は総額で20兆円程度ありました。しかしその数字が、2011年には12兆円程度と、約40%も下落しているというのです。この間の全世帯の消費支出の合計が、230兆円から240兆円の間で安定している事を考えると、高額所得世帯の消費の減退スピードは凄まじい速さといえます。
なぜこれほど、超富裕層や富裕層の間で消費の減退が起きてしまったのでしょうか。日経ビジネスの記事では、その理由を「①超富裕層は金持ち歴が浅い」「②超富裕層は目立ちたがらない」「③超富裕層は忙しい」「④超富裕層は資産を換金しにくい」という4点にあると分析しています。
以下、順番に見ていきましょう。
①超富裕層は金持ち歴が浅い
前回の記事で述べましたように、富裕層、特に超富裕層の方は高齢の企業オーナーの方が中心です。そしてこの様な方々の大半は、戦後の経済復興の過程でその業績を伸ばした企業の経営者の方に、多くいらっしゃいます。
実は日本には、戦前には多くの歴史の長い名家があったのですが、敗戦を期にその多くが没落したと言われています。
空襲などによる社会インフラの破壊、戦後の占領体制の中で導入された華族制度の廃止や財閥の解体、財産税の導入などの諸政策、加えてインフレなどの出来事は、戦前から続くような多くの名家の没落を招きました。
そして、それと前後するように、戦後の経済成長の中で新たな富裕層が誕生しました。そのため、日本の富裕層の顔ぶれは、戦前と戦後で大きく入れ替わりました。
つまり、現状の日本の富裕層は、生まれながらの資産家ではなく、ご自身の力でのし上がられた方が多いのです。
この様な方の場合、資産を築いた直後は派手に使う事も多いのですが、円熟して来るに従い、派手な消費を嫌い慣れ親しんだ一般的なレベルの生活で満足できることが多いそうです。
(豪勢な消費は年齢を重ねる毎に心が向かわなくなるという話は、富裕層向けビジネスなどをされている方がよく指摘するポイントです。)
ちなみにこれは欧米の富裕層にはない特徴です。
欧米、特にアメリカには技術革新によって新たな産業を興し成功を収めた「若い」富裕層が大勢います。
参考: 2002年、グローバル化とIT革命が生んだ大富豪〜この20年、億万長者の世界にはどんな変化があったのか2/3〜
しかし同時に、欧米には遡れば中世の王侯貴族や大商人、国際金融家などにそのルーツを持つ、代々の富裕層もまた多いと言われています。
そのような方々は生まれながらに大金持ちであるため、豪勢な消費をすることに慣れ親しみ、その生活が継続するようです。
②超富裕層は目立ちたがらない
一般的なイメージですと、大金持ちほど見栄を張りたがり、目立ちたがるものというイメージがあるかもしれません。しかし今回の記事では、財産規模の大きな超富裕層になればなるほど、それは錯覚であるといっています。
理由として上げているのは、目立つ事のデメリットです。
様々なセールスや投資、それに寄付などの勧誘攻勢は煩わしいでしょう。また超富裕層であることが知れ渡れば、金銭狙いでの犯罪や反社会勢力の対象に成りやすくなってしまいます。
一方、目立つことのメリットは、他人からの羨望の目線などなのでしょうが、オーナー経営者などの立場で自身の仕事に充実感があるのであれば、他人からの目線はそれ程気にならなくなるのかもしれません。これは個人的な印象ですが、サラリーマンとして組織の中で競い合わなければならない立場の方のほうが、目立つことを重視し、ステータスを気にされる例が多いように感じます。
また、特に超富裕層程ご年配の方が多いので、若い方に比べて目立つこと、羨望の眼差しを浴びることにそれ程魅力を感じないのかもしれません。
参考:お勧め雑誌記事の紹介〜PRESIDENT【金持ち老後、貧乏老後】2/2〜