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アメリカの投資家ウォーレン・バフェットの投資銘柄としても有名なのが、コカ・コーラ(KO)です。米国株は世界的ブランド力を活かし、長期的に利益を生み出す優良株も多いのですが、コカ・コーラは52年連続増配中の記録を誇っています。2014年7月2日時点の株価は42.27ドル、配当利回りは2.86%とかなり魅力的です。今後も世界最大手の清涼飲料メーカーとしてのブランド力を武器に、新興国での成長も期待できそうです。今回はこのコカ・コーラの業績分析と、積極的な株主還元についてレポートしていきたいと思います。

コカ・コーラの業績

コカ・コーラ・カンパニーは米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスによってAa3(ダブルエースリー)、見通しが「安定的」に格付けされている事実上世界NO1の清涼飲料メーカーです。500ブランド、3500品種のノンアルコール飲料をグループで製造し、世界200カ国で事業を展開しています。ヒット商品には「コカ・コーラ」の他、」「スプライト」、「ファンタ」、「アクエリアス」、「ミニッツメイド」などがあります。全世界で消費される清涼飲料水の約3%がコカ・コーラのもので、1時間あたりに販売される本数は7500万本とのことです。

2014年4月に発表された第1・四半期決算は減収減益となったものの、売上高は105億8000万ドルで市場予想を上回りました。グローバル企業として世界各地でマーケティングを行い、特に今期は中国で12%、インドとロシアで6%販売量が増加しました。

コカ・コーラの歴史

コカ・コーラの歴史は19世紀末期のアメリカに遡ります。ジョージア州アトランタの自然療法家ジョン・S・ペンバートン (John S. Pemberton) は、南北戦争で負傷した後モルヒネ中毒にかかっていて、自身の中毒治療にコカインを使った薬用酒の開発を思いつきます。ペンバートンはワインにコカインとコーラのエキスを調合し、1885年に頭痛や精力増強に効く薬用酒として売り出しました。その後ワインの代わりに炭酸水を用い、「コカコーラ」と名づけて販売します。コカコーラの販売はビジネスとして成功したものの、ペンバートンはその権利をわずか1ドルで売却してしまいます。結局1888年に、後にアトランタ市長となるエイサ・キャンドラーに権利が移り、キャンドラーとペンバートンの息子によってコカ・コーラ・カンパニーが設立されました。そして1919年に投資家のアーネスト・ウッドラフがキャンドラーから会社を買収し、デラウェア州で設立された会社がコカ・コーラ社の商標と事業を引き継ぎ、現在のコカ・コーラカンパニーの創業とされています。

そのような歴史を経て今や巨大企業と成長したコカ・コーラですが、投資家バフェットがコカコーラ株を最初に買ったのは1988年のことでした。当時のコカコーラの会長はロベルト・ゴイズエタで、その任期中に彼は会社の時価総額を40億ドルから1500億ドルまで増大させました。バフェットの機を捉える目もなかなかですが、ゴイズエタの経営手腕あってこそ50年以上に渡って増配を続ける企業へと成長できたといえます。

コカ・コーラの株主還元

もしも1919年のウッドラフが創業した時の株式を1株所有し、その配当を再投資し続けていたら現在の価値は1000万ドル(約10億2000万円)と計算されています。通年業績で見ると、2014年の第1・四半期決算は減収減益となってしまいましたが、コカ・コーラは2013年に約80億ドルのフリーキャッシュフローを生み出し、ほぼ同額の株主還元を果たしています。この50年以上に渡る増配と、株主への還元は多くの投資家にとって魅力的です。

懸念としては減収減益の他に、株価収益率(PER)の縮小もあげられます。コカ・コーラのPERは10年前に23倍、15年前には40倍もありましたが現在は17.5倍に留まっています。単に現金による還元だけでは納得しない投資家も増えているのも現状です。

今後のコカ・コーラの成長戦略は?

今年2月にコカ・コーラはコーヒーメーカー大手のグリーン・マウンテン・コーヒー・ロースターズの株式の10%を取得し、同社の家庭用飲料システム「キューリグ」を使って炭酸飲料を販売する契約を結んでいます。家庭の台所の蛇口をひねればコーラが出てくるという夢物語はともかく、こうした試みはコカ・コーラの成長につながる可能性ありと投資家も歓迎しました。

一方でJPモルガンの飲料業界担当アナリスト、ジョン・フォーチャー氏は、コカ・コーラがもっとM&Aを通じて積極的に多角化すべきとも提言しています。2013年末時点でのコカ・コーラの現金及び短期投資の総額は171億2000万ドルにも達しています。この巨額の資金を企業買収に費やし、出遅れているコーヒーや乳製品、茶といった分野を強化すべきというのです。

コカ・コーラの宣伝文句「キャッシュ、イッツ・ザ・リアル・シング」による、投資家への積極的な現金還元に喜ぶだけでは、投資家として少々リスクを覚えます。健康と肥満に関する懸念がアメリカ、そして同社の世界第二位の市場であるメキシコで広まっていることもあり、砂糖たっぷりの炭酸飲料の販売路線に偏るのも見直さなければいけないでしょう。コカ・コーラも買収を検討していることは表明してはいますが、ターゲットとなる企業名は目下のところ正式に聞かれません。コカ・コーラが今後、現金還元だけにとどまらず、どう成長戦略を打ち出していくか、同社のM&Aの動向もあわせて注視しておきたいところです。