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今日はオバマケアが為替市場に与えた影響について話をしていきましょう。オバマケア、聞いたことありますか?米国の大統領の名前を冠した何やら大仰なこの名前。そう、アメリカの医療保険制度のことです。私たち日本人は医療機関に行ったとき、支払うべき金額は原則3割です。それは、日本に国民皆保険制度が根付いているからなのです。日本人には当たり前すぎるこの制度、実はアメリカでは当然のことではないのです。


揺れる米国

アメリカに皆保険を導入しようというオバマ大統領の野心。それは、アメリカ世論を二分することとなりました。アメリカには先進国には珍しく、皆保険制度が存在しません。アメリカは建国以来の自助の精神が根付いており、医療は原則自由診療。高額の医療に備えるためには、国民一人一人が自分で民間の保険に入らなければなりません。ただそうなると、低所得者は保険料の支払いが困難なケースが多々発生すること、また、慢性病患者は保険に加入できない等のケースが発生し、アメリカでは度々問題とされてきました。オバマ大統領は、そのようなアメリカの状況を受けて、医療保険改革法を2010年3月に成立させました。この法案によると、国民全てに保険加入が義務づけられます。そして、保険会社は、保険加入者が受け取る保険金額を制限したり、健康状態によって保険料を上げたりすることを禁じられます。

この医療保険改革法、アメリカ社会を前進させる一歩となったのでしょうか?いいえ。実は、保守共和党の大きな反発を招くこととなったのです。


伝統的対立

日本における政党間の対立はどういったものなのでしょうか?理念を見ても、どの政党も然程差異を見出すことは難しいのではないでしょうか。ところがアメリカの民主党、共和党は違います。ちなみにオバマ大統領は民主党です。共和党は、「自助の精神」を大切にします。「自由」を何よりも重んじるのです。民主党は違います。民主党は「平等」に重きをおくのです。「自由」だけでは、実現できないこと、例えば、貧困層へのセーフティネット整備等ですね、そういったことを実現しようとしているわけです。

この理念の違いは自然と支持層の違いにも繋がっていきます。共和党の支持者は殆どが白人です。民主党の支持者は、黒人、ヒスパニックと様々です。いわゆる「マイノリティー」が民主党の支持層です。ただ、今は白人の割合が減少し、その他、ヒスパニック等の人口が増加することにより、どちらが「マイノリティー」なのかという議論はしにくくなりつつあります。

「自由」を重んじる人からすれば、「オバマケア」はとんでもない政策です。「余計なお世話」といったところでしょうか。保険は欲しい人が自分で選んで入るもの。国から押し付けられたくはないわけです。「自由」というのは、まず一義的に「国からの自由」であるわけですから。


オバマケアが為替市場に与えた影響は?

このオバマケア、与野党が折り合うことが出来ずに、政府機関が閉鎖されることとなりました。共和党の議員は、予算案可決と債務上限引き上げの条件として、オバマケア修正を要求し、双方譲れぬ膠着状態となったからです。それを受けて、ドルは売られ、円との関係においても、ドル安円高が進みました。このようにオバマケアは、アメリカ政治において政党の「根幹」にかかわるものである以上、折り合うことが難しい難題として立ちはだかり、そして、国際的な為替市場にも影響を及ぼすものとなっています。

ちなみに、政府機関の閉鎖はもう解除されています。そして、政府機関の閉鎖の最中にも関わらず、オバマケアの一環である保険取引所「エクスチェンジ」は10月1日よりスタートしました。保険取引所「エクスチェンジ」とは、健康保険の売買を行うオンラインの取引所のことです。しかし、保険取引所「エクスチェンジ」において、アクセスが殺到し、中々アクセスできないという不具合が発生しています。また、14年より、保険契約者に不利な保険内容を是正することが保険会社に義務づけられることもあって、既存の保険契約の打ち切り等の加入者に対する不利益が発生しています。それを受けて、オバマ大統領は修正案を容認する等の後退を強いられています。まだまだオバマケアの行方は不透明と言わざると得ません。


おわりに

共和党の「自助の精神」はアメリカ国家成立時から根付くアメリカの根幹ともいうべきものです。そして、理念の対立である以上、その対立が譲れないものになることは必至です。政府機関の閉鎖による米国債のデフォルトが起これば大問題に発展する可能性があります。米国債はやはり、一番人気の高い国債であり、国家や投資家が多く保有しているからです。ただ、今回の政府機関の閉鎖も早々に収束を見せたことから、そういった大問題に発展するまでに、国内で解決させるだけの叡智は備えているとは思われます。

アメリカに存在する伝統的な対立を理解することが、アメリカの政治や経済を理解することにつながるでしょう。今回はオバマケアを取り上げましたが、他にも共和党、民主党の争点は多岐に渡ります。ぜひ、アメリカ政治への理解を深めて、マーケットに臨むようにしてください。

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