2017年から新しくリニューアルしたiDeCo(個人型確定拠出年金)は、原則として60歳未満の全ての人が加入対象になっている。iDeCoは、税制メリットがとても大きいのが特徴だが、一方で、収入のない主婦にとってはその効果は乏しいとの指摘もあるが、果たして本当だろうか。本稿では、主婦がiDeCoに加入するメリット・デメリットを検証してみたい。

なお、本稿でいう「主婦」とは、第3号被保険者(専業主婦、もしくは年収130万円以下の人)とする。

(写真=pikselstock/Shutterstock.com)
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拠出時の節税効果は少ない

iDeCoの税制メリットとしては、掛金の全額が所得控除の対象になることと、運用益が非課税になることが挙げられる。まず、掛金の拠出時の節税効果だが、iDeCoにお金を拠出すると、その拠出額が課税所得から控除され、そのぶん課税所得が小さくなるため、結果として所得税・住民税が軽減される。

しかし、iDeCoではまったく税金がかからないかというと、そうではない。60歳以降で一括(一時金)または分割(年金)で受け取る時に、その受取金額に応じて課税される。要するに、iDeCoでは60歳以降まで課税が繰り延べ(先送り)されるわけだが、その際も、一括(一時金)で受け取る時には「退職所得控除」、分割(年金)で受け取る場合には「公的年金控除」という優遇制度が受けられるので、一般的にはやはり有利と言えるだろう。

さて、主婦の場合はどうだろうか。主婦の場合、そもそも収入が無ければそれに対して所得税がかからないので、iDeCoの掛金の所得控除による節税効果は乏しい。それどころか、年金または一時金を受け取る際に課税される点には注意が必要だ。もっとも、退職所得控除などは控除枠も大きいので、今のところ、現実的に課税される心配をする必要はないだろう。

年収が130万円ある主婦の場合、130万円から103万円を引いた27万円の部分に関して、iDeCoによる節税のメリットがある。しかし、27万円全額をiDeCoに拠出しても、もともとかかる所得税・住民税が少額なので、その恩恵は微々たるものである。なお、60歳以降に年金または一時金を受け取る際に課税対象になるのは、上記の場合と同じだ。

結論として、iDeCoの拠出時における節税効果は、主婦にはあまりメリットにならないと言えそうだ。

運用益が非課税になるメリットは大きい

次に、運用益が非課税になる税制メリットについてはどうだろうか。これは、会社員や自営業者等と同等の効果が期待できる。運用益が非課税になるとは、例えば、100万円のお金を投資で120万円に増やした場合、本来なら増えた20万円に対して約20%にあたる4万円ほどの税金がかかるが、iDeCoならこれが全額非課税になるということである。

また、毎月1万円を20年間積み立て、その間年率3%で運用したとする。この場合、手数料などを考慮せずに計算すると、20年後には年金資産は328万3,020円になる。自分が支払った元本は1万円×12×20=240万円なので、運用益は88万3,020円。本来ならこの約20%に当たる18万円弱の税金がかかるが、この額が節税できると思えば、メリットは決して小さくない。

ただし、ここで気を付けなければならないのは、そもそも運用益が出なければ非課税のメリットを受けられないということである。

iDeCoに加入している人の中には、リスクを恐れ、元本確保型商品を中心にしている人がいる。定期預金や保険などの元本確保型商品は、受け取る時に今まで払った元本より減ることは基本的にないが、大きな利益も望めない。運用益を稼がなければ、運用時非課税のメリットは得られないのである。

さらに、iDeCoには毎月手数料が発生するので、利益がない場合、手数料分だけ損をすることにもなる。一般的なサラリーマンの場合、前述の所得控除のメリットが非常に大きいので、手数料がかかってもトータルで損をすることはほとんどない。しかし、主婦の場合は、元本確保型商品ではなく投資信託などのリスク性商品で利益を求めなければ、結果的に損をしてしまう恐れがあるのだ。

結論としては、主婦であっても、投資信託などで利益を出せば税制メリットの恩恵を受けることはできる。しかし、他の運用方法として、「夫が会社で確定拠出年金に加入しているか」「夫の確定拠出年金の掛金枠にまだ余裕はないか」「2018年から始まる『つみたてNISA』と比べてどうか」などと比較検討してみてもいいだろう。

(提供: 確定拠出年金スタートクラブ

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