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序章

不動産を賃貸して得た利益を分配金として受け取ることができる金融商品「J-REIT」は、2008年に起きたリーマンショック以降、停滞期を迎えましたが、ここ1~2年で不動産取引が活発化し、7月末には時価総額が8兆6200億円と月末ベースで過去最高を更新するなど、緩やかな回復期に入りました。この背景には第2次安倍内閣(2012年12月26日~2014年9月3日)が提唱していた一連の経済政策「アベノミクス」による期待感があったとされています。実際にアベノミクスでは不動産市場関連の政策や制度が多数盛り込まれており、2%の物価上昇率を目指す「インフレターゲットの導入」や4月から8%に、2015年10月には10%になる「消費税増税」などもその中の1つと言えます。

アベノミクスに掲げられた不動産市場関連の政策や制度のうち、成長戦略の目玉とされているのが5月に内閣総理大臣決定もされた「国家戦略特区」です。これは都市再生、医療、観光、農業などの分野で規制緩和をはかるものですが、この特区を設けることによって、不動産市場には今後どのような影響が想定されるのでしょうか?ここでは国家戦略特区によって生じる不動産市場への影響と国家戦略特区をどういう形で投資戦略にいかせばいいのかを紹介したいと思います。


東京圏はゼネコン、人材派遣、オフィス、住居などの銘柄が有望

国家戦略特区は東京圏(東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区、神奈川県、千葉県成田市)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、新潟県新潟市、兵庫県義父市、福岡県福岡市、沖縄県で設定されています。主な政策としては、東京圏では2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから、容積率の規制緩和などを行うことで、世界で一番ビジネスのしやすい環境の整備と、世界中から資金や人材などが集まる国際的ビジネス拠点を形成することを目標にしています。

では、具体的にはどのような投資が見込まれるのでしょうか?あくまでもこれは一例になりますが、オリンピックの開催を見込み、それらの整備を請け負う建設会社が絡んだ銘柄や、グローバルな企業・人材・資金などの受け入れを促進している点から、人材派遣会社関連の銘柄、オフィスビルを中心とした銘柄への投資は安定した収益が期待できそうです。また、外国人居住者向けを含め、ビジネスを支える生活環境の整備を促進している点から、外国人向けのマンションなどを取得しているレジデンス系の銘柄や、オフィスビルと住居の複合型を扱った銘柄に投資するのも有効な手立ての1つと言えるのではないでしょうか。同時に、外国人の滞在に対応した宿泊施設の提供もうたっていますので、ホテル関連の銘柄は要注目と言えます。加えて、東京圏では創薬分野などで中枢となるような地域を目指すということですので、医薬品メーカーなどの銘柄を狙う方法もあります。