LVMHの経営戦略

LVMHの経営戦略においては、何よりも先にあげなければならないのが「ポートフォリオマネジメント」でしょう。あわせて、LVMHの事業をより強固としていますのが、「ブランドミックス、事業ミックス」による相互補完性だといえるでしょう。

LVMH の 2013 年度の売上構成をみてみると、ワイン・スピリッツ事業による売上高が約14%、またファッション・レザーグッズが約34%、パヒューム・コスメティックスが約13%と相当程度バランスの取れた構成となっているのです。LVMHの経営戦略においては、異色の事業の組み合わせではあるものの、全体的にみると「安定している」ワイン・スピリッツの事業が、「リスクを伴う」新製品を必要とする他の事業とが相互補完的に組み合わさっていることがよくわかります。

また、面白いことに、このバランスは2009年度から多少の上下はあるものの、大きく変わっていないのです。このポートフォリオのバランスがどれほど業績面における安定性を持っているかが裏付けられるようですね。

LVMH のポートフォリオ戦略においては、取り扱い事業のみではなく、地域バランスの最適化においてもとても興味深いものがあるといえるでしょう。主要市場におきましては安定した売上高のバランスを保っており、しっかりとした地域基盤を持つことで、新興国で大きく勝負が出来る準備が整っているのです。それぞれのグループによるこれまでの積極的な国際化の賜物であるといえるでしょう。詳細を見ると、主要国の売上構成比は2009年から大きく変化は無く、日本を除くアジアでの積極展開によりこの地域での売上伸張率のみが伸びているのです。

リシュモンの経営戦略

リシュモンの経営戦略において、上述の2つのブランド以上に強いと言えるのが競争戦略の核心が「選択と集中」だということです。リシュモンという単語を聞き、この企業がどのようなブランドを有している答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。本社はスイスにあり、傘下に擁しているブランドには、「カルティエ」「ダンヒル」「モンブラン」「クロエ」などがあります。ブランド名からお分かりの通り、時計、ジュエリー、衣服、高級筆記具などを取り扱っているのです。

その取り扱っている商品の中でも、売上高の約半分の49%を占めているのが高級時計なのです。また、高級時計における世界シェアは22%とも言われており、同スイス企業のスウォッチにつぎ2位となっています。ケリング、LVMHとの違いを「選択と集中」といったが、まさに一事業に大きく集中しているのがリシュモンの戦略といえるでしょう。

「国土が小さい・資源が乏しい」という日本と同じような環境に置かれているスイス企業は海外での活路を見出す必要があったため「付加価値の高い商品」「ブランド力での価格競争からの回避」により高い成長を実現してきたと考えられるでしょう。

この点、かつての日本メーカーと重ねてみると大変面白いですね。例えば家電メーカーにおいては、各メーカーともに、選択と集中ができずに、冷蔵庫も洗濯機もクーラーも掃除機もクーラーもとにかくなんでもかんでも製造、販売していたのです。どこからも同じような品ぞろえ、何ら差別化がされていない、ただただ総花的な事業展開だったのですね。それではダイソンのようにまずは一極集中で掃除機参入してきた企業に対して、日本メーカーの掃除機が勝てるわけがありません。

まとめと今後の動向

同じブランド業界といえども、また扱っている商品群は似ているとはいえ、戦略が大きく異なっていることが分かります。どの企業も現在は、アジアでの低迷が大きく影響していますが、どの企業が現状をいち早く脱するのか、またこの業界においてどの戦略が正しかったのかというのがわかってくるとは思いますが、これだけ各々が違う戦略をとっているのです。各社ともに設備投資への意欲もまだまだ見せているようですし、きっと活路を見出し、数年後には全く違う顔を見せていると思います。

また、リシュモンでは日本のメーカーと照らし合わせてみましたが、他業種であれども、業界の雄に学ぶことは多いはずです。自身の置かれている業種のみでは見えない視点を得るためにも、このように他の業種の分析をしてみてはいかがでしょうか。きっと足りない部分が見えてくるのではと思います。