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住友商事の株価下落が止まらない。9月29日、住友商事株式会社はシェールオイルの開発失敗などにより、約2400億円の損失が発生する見通しを発表した。その翌日同社株価は12.1%下落。その後、10月17日終値で1072円と下落基調をたどり、未だ反発の兆しは見えない。それどころか、同社はまだ抱えているリスクがあるのだ。

住友商事だけではない?商社各社がシェールガス開発事業で損失続出

近年、世界的なエネルギー需要の高まりを背景に、商社などは「シェール革命」の追い風に乗って、新型天然ガスであるシェールガスやシェールオイルの開発の権益獲得を競っていたが、この度の住友商事の失敗で、リスクの高さが改めて認識される形となった。

実はシェールオイル・ガス開発事業では住友商事以外の総合商社でも減損を余儀なくされている状況だ。例えば伊藤忠商事では今年4月に米オクラホマ州の権益で、290億円を超える減損損失を発表している。また、大阪ガスは米テキサス州のシェールガス開発で、2014年3月期に290億円の特別損失を計上して事業の大半から撤退している。三井物産も同時期に損失を出している。いわゆる、シェールの高値掴みが業界で発生しているのである。それでも今回の住友商事の損失額の大きさは特筆される。特に同社は、アジアの企業としては最も早くからシェール事業に参入しており、経験も豊富だった。シェールオイル・ガス開発事業がいかにリスクが大きいか、各社も事業参画計画の見直しが迫られる事態となっている。

もう一段の株価下落リスクも 同社のリスク管理体制の機能強化求められる

住友商事は、今回最も大きな損失を出した米テキサス州でのシェールオイル・ガス開発事業の他にも損失を出している。鉄鉱石や石炭の価格下落を受けて、2012年に投資したオーストラリアの石炭開発では300億円、2010年に投資したブラジルの鉄鉱石開発では500億円、さらに米国のタイヤ小売り事業では200億円の減損を行う。特にオーストラリアの石炭鉱山については2015年1月末で操業停止にすることになっている。

しかし、同社は、実は他にも潜在的リスクを抱えている。それは、アフリカのマダガスカルでの「アンバトビー・プロジェクト」である。同プロジェクトは2007年に計画が打ち上げられ、カナダ、韓国の企業と共同開発の、世界最大級のニッケル開発事業を示す。同事業では当初、2010年後半から生産を開始すると発表していたが、ニッケル価格が低下したことや、現地の政権交代、生産技術の複雑さなどが重なり、遅れが発生していた。2014年に入ってようやく生産を開始したが、その生産量は計画していたより3~4割低いという現状である。2016年6月には90%稼働を見込んでいるが、このプロジェクトは大きな減損を出す可能性があるとされている。

同社では資源関連での失敗の再発防止策として社内に資源関連戦略を見直し検討するチームも立ち上げ、投資リスク管理を徹底するとしているが、この間R&I(格付投資情報センター)は住友商事の格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げている。その理由として、利益蓄積が進まない一方、今期の新規投資は計画通り行う方針でリスク耐久力の低下が避けられない、としている。今後同社のリスク管理態勢が機能しなければ、格付けがさらに下がる可能性も指摘されている。

中村社長は、これらのここ数年での減損処理を出した経営責任について「もとの成長軌道に戻すこと」と語っており辞任は考えていないようだ。住友商事は、2019年度に創立100周年を迎える。その大きな節目をどう迎えるのか、中村社長の経営手腕が試されるだろう。

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