さまざまな経済、産業の中核に食い込んでいる日本の国産技術。その一つが、特殊な技術が要求される紙幣の印刷だ。ニセ札を生ませないための偽造防止技術など非常に高度な印刷が必要で、日系企業の強みを活かせる一つの分野でもある。その中で、海外進出を図りながら、気を吐いているのが小森コーポレーション(小森コーポ) <6349> だ。

紙幣の偽造については、各国当局が神経質になるのはもちろん、偽造を困難にするために、さまざまな技術を応用しなければならず、非常に専門性の高い小森コーポのような企業の技術が求められる。例えば、人が読みとれないほど小さいマイクロ文字を印刷したり、角度によって見える像が変化するホログラムの大量印刷が求められたりする高度な製品分野だ。


着々と積み上げる海外での実績

小森コーポではすでにベトナムなどの通貨当局に紙幣の印刷機を納品しており、同社製の紙幣印刷機が稼働開始済みだ。同国では、紙幣を印刷する国立印刷局に、印刷版に彫り込んだ窪みにインクを保持させ台紙に転写する凹版印刷と呼ばれる方式の印刷機を納品した経緯がある。2009年の納品に続き、2014年の今年、2台目を納めた。

ほかにも、2014年8月にはシンガポールの同社販売代理店 KMLink 社の全株式を取得し子会社化。成長するアジアの新興国の増加する包装印刷などの分野でもさらなる市場の拡大が見込んだ取り組みが進められている。


ウェアラブル端末製造向け製造機など開拓も積極的

小森コーポが取り組みを進めるのは、伝統的な分野とも言える紙幣の印刷分野だけではない。その一つが、最先端の技術を結集して作られるウェアラブル端末だ。

ウェアラブル端末と呼ばれる身につけられるデジタルデバイスについては、国内外の各エレクトロニクスメーカーが取り組みを進めるが、小森コーポが提供する印刷技術も必要とされる。着用できる端末を実現するためには、折り曲げや屈曲に耐える素材のプリント基板(フレキシブル回路基板)を作成する必要があり、電気回路を製造するために印刷技術が使われることもある。

小森コーポでは、ウェアラブル端末用のフレキシブル基板を製造するために、電気回路を印刷するグラビアオフセット型の印刷機「PEPIO」を開発し、2014年の8月に発売している。台湾の先端技術研究所である工業技術研究院(ITRI、Industrial Technology Research Institute)と共に開発した極細の回路を印刷する技術を活かし、フレキシブル回路基板の製造に向けて着々と準備を進める。

とりわけ、ウェアラブル端末が一般に普及する際に必要となる大量生産のためには、大量に、安定的に回路基板を製造しなければならない。そのため印刷技術による製造装置で主要な地位を占めれば、競争優位の確保も容易になるため、覇権を握れるか否かが重要な分岐点だとなりそうだ。


実績からも、将来に期待がかかる

日本国内ではすでに、小森コーポの取り組みも公に認められつつあり、同社は2014年には、狭い分野ながら大きく成果を上げている企業を表彰するグローバルニッチトップ企業に選定された。国際市場の開拓に取り組んでいる企業のうち、ニッチ分野において高いシェアを確保し、良好な経営を実践していることが認められた格好だ。

紙幣用の印刷機などで培った高度な専門技術を武器に、ウェアラブル端末製造用のグラビアオフセット印刷機などでさらに取り組みが進められそうだ。実際の売り上げなどの実績や、財務状況に今後、どれだけ反映されていくか注目が集まりそうだ。

(ZUU online)

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