ジム・ロジャーズ

2014年は、国内外の経済ともに話題が豊富で目まぐるしい1年となった。

日本の株式市場は、アベノミクス相場とも呼べる上昇トレンドが継続した。4月に消費税率が引き上げられ、さらに12月にも消費税率が8%から10%へと引き上げられると思われていたが、2017年4月に先送りが決まった。これにより冷え込んでいた消費者マインドがさらに悪化するのは回避された。また、為替市場では年後半から円安ドル高が進行し、特に10月31日、日本銀行がサプライズで追加金融緩和策を発表してから急激な円安・株高が加速、 12月半ばには約7年4カ月ぶりの1ドル121円台をつけた。

世界経済をみると、米国が堅調に推移した一方で、欧州は低成長にあえぎ、中国は減速となった。11月末にOPECが原油産出量の減産見送りを決定後、原油価格の下落が加速した。特に、原油が主な輸出品でありGDPの半分近くを占めるロシアでは、通貨ルーブルが叩き売られ暴落した。為替価格の乱高下は、為替だけに留まらず為替と原油の関係のようにグローバル化が進展した現在では各所に瞬く間に影響が広がってしまう。

また、1人勝ちとも言われる好調な米国経済のリスクは、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ時期が近いと予想されていることだ。FRBの利上げにより米国は景気悪化に陥るとも限らないが、世界全体で景気が好調な国は米国のみとなっている現在、リスク要因の一つである。

それでは、2015年の株式市場、為替市場、世界経済はどうなるのだろうか。予測困難な経済見通しを、世界3大投資家と称される、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス、ジム・ロジャーズはどのように考えているか、見解をまとめてみた。


ジョージ・ソロス

まずはジョージ・ソロス氏の見解を見てみよう。米ウェブサイト『Market Leader』によると、同氏は「原油の急落、欧米の経済制裁により、ロシアはデフォルトに近づいており、そうなった場合は1998年の再来、あるいはそれ以上になる」と予測。

その上で「ロシアがデフォルトした際には、ロシア経済は壊滅的な打撃を受けることになる。欧州経済も同様に影響を受け、世界経済にも悪影響を及ぼす」とし、「プーチン大統領とメドベージェフ首相が、経済金融のルールを無視し、目先の利益を求めすぎた。その結果深刻な影響が起きている」と同氏は指摘する。

ソロス氏によれば、2015年2月頃にはロシア国内でインフレが加速し、場合によっては政権交代の可能性も有り得るとのことだ。


ウォーレン・バフェット

世界最大の投資持株会社「バークシャー・ハサウェイ」のオーナーとしても有名なウォーレン・バフェット氏の見通しはどうだろうか。経営権を握ってから50周年を迎えた「オマハの賢人」の見解は普段は公になりにくいが、最近の投資先から、同氏の見方も垣間見える。

例えば、バークシャー・ハサウェイ社は昨年末に、石油関連事業への投資を拡大。具体的には、同社の子会社がスイスに拠点をおく企業からシェールガス開発で使用される油田向け化学事業を買収することで合意。米国内の石油・化学事業者向けの貿易会社チャーター・ブローカレッジの買収も公表されている。原油価格の下落でエネルギー関連株が下がっていることなどから、同分野の優良事業への投資をさらに進める好機とバフェット氏がみている様子が窺われる。


ジム・ロジャーズ

最後に忘れてはならないのは、投資の神様の異名を持つジム・ロジャーズ氏だ。同氏は1942年にアメリカ合衆国で生まれの投資家で、クォンタム・ファンドをジョージ・ソロス氏と設立し、10年間で3,365%ものリターンを上げるという実績をあげ、現在はRogers Holdingsの会長としてシンガポールに居所を構えている。

そんな同氏が2015年を見通す上で注目しているのは、実物資産の"金"を持つことと、投資対象先としての"ロシア”だ。

同氏は、「実物資産を持つことは重要だ。売ってはいけない。私は(金相場が1オンス)1000ドルを下回った頃に買い増そうかと思っている」と発言している。また、「ロシアは、原油安を機に通貨ルーブルが急落した。しかし巨額の外貨準備を蓄えており、対外支払い能力は高い。原油安も長続きするとは見ていない。ロシアはむしろ、来年屈指の投資対象になる」とコメントした。

他方で、ロジャーズ氏の日本経済の見通しも無視できそうにない。というのも、彼が大きな潜在リスクを指摘しているからだ。同氏の見解によれば、日本銀行の追加金融緩和を好意的に評価し、日経平均株価に連動する上場投資信託や大型株を購入したことを明かしながら、他方でこのままお金を刷り続けるなら潜在的には2~4年以内にバブルが起こる可能性もあるという。

さらに、景況の先行きについても同氏は、否定的な見方を示す。具体的には、「東京オリンピック前に状況が悪化し始め、日本のみならず、世界のほぼ全土で経済が破綻するでしょう。2020年までに、少なくとも1回は世界規模の破綻が起こる」とロジャーズ氏。さらに、「正確な時期はわからないが、たぶん16年か17年だろう」「国債が大暴落し金利が上がり」「株価も暴落」する可能性があるという。

1月17日には、親日家でも有名なジム・ロジャーズが金融経済特別講演のため来日する予定だ。昨今の予測困難な世界経済がカリスマの目にはどのように映っているのか注目だ。


(ZUU online)