SIMロック解除の義務化は、通信キャリアの戦略を個人ユーザーの囲い込みから、IoTを舞台にした企業の囲い込みへと舵を切らせる契機となるだろう。


終わるキャリアの囲い込み戦略

2015年5月より全通信キャリアに対して、SIMロック解除が義務付けされる。ユーザーは通信キャリアを乗り換えるとき、すでに手元にある自分の端末を買い替えなくても、端末内に挿入されたSIMカードを取り替えるだけでいいようになる。

この義務化は長期的にキャリアの収益を圧迫することになる。今までのようにユーザーを囲い込むことができなくなり、ユーザーを引き止めるために様々な値下げなどの施策を行わなければならないからだ。

また、端末の買い替えサイクルの長期化も予想され、これも収益を圧迫する要因となる。内閣府の消費動向調査によると、携帯端末の買い替えサイクルは3.5年だ。「2年縛り」以降も同じ端末を使い続ける人が多い。理由に最新の機種でなくても機能的に十分だということがある。アップルは最新のOSである「iOS8」で2011年発売に発売されたiPhone4sまでサポートしている。4年間は端末を買い換えなくても、最新の機能を使うことができるのだ。


いままでキャリアの囲い込み効果は薄くなる

いままでキャリアは、他のキャリアにはない魅力的な端末でユーザーを引き付け、そしてSIMロックで囲い込み、通信料で収益を上げるというモデルを用いていた。しかしSIMロックの解除によって、SIMカードを取り替えるだけでキャリアを移動できるようになるので、このような囲い込みも効果が薄くなってくるだろう。

SIMロック解除が直ちにキャリアの勢力図に影響は少ないとみられる。少なくとも端末の分割支払いが残っている間は、ユーザーがキャリアを移動することはすくないだろう。また、日本市場で最も人気があるiPhoneは大手キャリアがラインナップに加えており、またSIMフリーの端末も用意されている。魅力的な端末を目当てにしたキャリアの移動もそう増加することも無いだろう。しかし、SIMロックによるユーザーの囲い込みは効果を弱め、これまでのような旨味もなくなっていくことは確かだ。