個人向け国債は、「日本国」という「国」が発行する債券で、比較的安全性が高く、投資初心者にも購入しやすい商品である。「今さら国債?」と思う人もいるかもしれないが、インフレ対策、ペイオフ対策、安全資産対策として、実は注目すべき商品のひとつだ。個人向け国債の商品性を復習し、今後の資産運用プランを考える際の参考にしていただきたい。

商品は3種類 ほとんどの金融機関で1万円から購入可能

個人向け国債には、満期と金利が異なる「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類がある。3種類とも、年に2回利子が支払われるが、「変動10年」は半年ごとに市場の実勢金利を反映して適用利率が変わり、発行から10年後に償還される。

「固定5年」「固定3年」は、発行時に金利が決まっており、発行からそれぞれ5年後、3年後に償還される。日本のほとんどの銀行や証券会社などで、最低1万円から1万円単位で購入ができ、最近は直接金融機関の窓口に行かず、インターネットや電話でも購入可能だ。

個人向け国債はどのくらい運用パフォーマンスはいいのか?

募集期間が2015年3月5日から3月31日の個人向け国債の場合、税引き前の利率は「変動10年」が0.26%、「固定5年」と「固定3年」が0.05%となっている。例えば、2015年3月に「変動10年」を1,000万円購入した場合、初回の利払いは13,000円となる。

変動金利なので今後どのくらい儲かるかは不明だが、2005年4月に発行され2015年4月に償還される「変動10年」は、発行時に1,000万円を投資していた場合、合計で453,000円の利子を受け取ることができた。財務省のホームページでは、個人向け国債を購入した場合の「購入シミュレーション」ができるので、どのくらいで運用できるか計算してみるのもいいだろう。

個人向け国債「変動10年」でインフレ対策

IMF(国際通貨基金)によると、日本の年間平均インフレ率は、2012年が-0.037%、2013年が0.357%、2014年が2.655%となっている。アベノミクスによって、日本は今後もインフレが進むことが予想されているが、インフレ経済の中、資産をタンス預金のままにしていると、資産の価値が自然と下がってしまう。そこで、インフレ対策として、個人向け国債の「変動10年」は有効な商品だ。半年ごとに、市場の実勢金利によって利率が変わるため、インフレ経済を反映した金利が受け取れる。

ただし、インフレ率が「変動10年」の金利よりも高い水準で上昇し続けた時は、インフレの流れに追いつけない。また「固定5年」や「固定3年」はインフレ対策にはならず、むしろ固定金利がインフレ率よりも低い場合は、タンス預金同様に資産の価値を減らしてしまう。金など現物資産に投資する、外貨商品に投資するなど、その他対策も併せて検討することが大切だが、市場の実勢金利によって利率が変わるという点において、個人向け国債「変動10年」はインフレ対策にお勧めの商品である。

2015年3月18日現在の日本銀行の統計によると、日本における銀行の普通預金の平均利率は0.02%、1,000万円を10年間定期預金で預けた場合の平均利率は0.147%となっている。キャンペーンを行っているネット銀行など、なかには国債よりも高い利率で運用できる定期預金もあるが、平均値で比べてみると、個人向け国債の利率は決して悪い数字ではない。

また、銀行預金は万が一銀行が破綻した場合、1,000万円までしか保護されない。国債で運用することで、ペイオフ対策として金融資産を守ることができるのだ。もちろん、日本が財政破綻した場合には、国債も元本保証されないというリスクもあるのだが、その時は銀行も破綻している可能性が高い。1,000万円以上を銀行預金で預けている場合には、国債の購入を検討することもお勧めだ。

いざというときの安全資産対策

個人向け国債は、発行から1年経過すると、中途換金が可能だ。中途換金には、中途換金調整額という過去2回分(1年分)の利子相当額をペナルティとして支払わなければならないが、これを支払ったとしても、基本的に元本割れをすることはない。

子供の学費や医療費の支払い等、もしもの時には換金することができるし、他に魅力的な投資商品を見つけた場合の購入費用として充てることも可能だ。株式投資などリスクが高い投資を行いつつ、安全資産も確保したいと考えている人にも、国債は有効な商品と言えるだろう。
数ある商品の中で自分の金融ポートフォリオを考える際、個人向け国債は優れた商品のひとつだ。「今さら国債?」と軽視せずに、今後の投資プランを考える際には、個人向け国債を選択肢のひとつとして検討してみてはいかがだろうか。(ZUU online 編集部)