◉実質実効為替レートで為替を見よう


日本に対する海外経済の力・重要性を考慮した為替レートに実質実効為替レートがあります。今は米国だけでなく、様々な国との貿易が増え、信用力のある通貨も米ドル以外に沢山増えてきていますので、決済通貨も米ドルだけでなく、様々な通貨が使われます。

そうした様々な通貨との円為替レートを貿易取引額で加重平均して指数化した為替レートを実効為替レートと言います。そして、それをインフレ率で調整したものを実質実効為替レートと言います。

勿論、全ての貿易相手国の通貨を計算に入れるのは計算上の便宜の問題があるので、広域ベースは59カ国で使われる44通貨、狭域ベースは25カ国で使われる15通貨が計算に用いられます。(最新の値、使われている通貨データについては 国際決済銀行のウェブサイト(英語) をご参照下さい。)日本銀行は、その国際決済銀行(BIS)の公表するデータ をインフレ率で調整して公表しています。

さて、以下の図3はその日銀が公表する日本円の実質実効為替レートと米ドル/円レートを比較したグラフになります。(図1に実質実効為替レートを足したものです。)これによると、プラザ合意(1985年)以前は米ドルが圧倒的に強く、実質実効為替レートと米ドル/円レートが殆ど同じ動きをしていたのですが、プラザ合意以降はその動きが大きく乖離を始め、1995年あたりで円高のピークを迎え、その後は大きな変動がありつつも基本的には円安に向かっていくという傾向が見られます。

円3

図3:日本の実質実効為替レート指数と米ドル/円チャートの比較
出典: 時系列統計データ検索サイト(日本銀行) より生成
注1:青線が実質実効為替レート、赤線が米ドル/円レートを表す
注2:灰色部は景気後退局面を表す
注3:縦軸は、左軸が円/米ドル、右軸実質実効為替レート指数、横軸は月次を表す

つまり、プラザ合意以降、円高傾向が続き、2013年になって急に円安になったというのはあくまでの米ドルに対しての話で、日本経済を広く多国関係から見ると、全く違った様相になるのです。そして、現在の日本の実質実効為替レートは円安が問題視されていた1985年当時と同程度に円安である事が分かります。


◉ 実質実効為替レートに合わせたポートフォリオの有効性


さて、投資の指標として為替レートを使う場合、米ドルとの関係だけを見ていても経済状況を見誤る可能性が高いですが、それよりは実質実効為替レートを用いた方が良いと言えるでしょう。また、実質実効為替レートを用いるだけでなく、その元データである貿易額のウェイトなどに合わせて海外分散投資を行うといった事も有力な戦略であると考えられます。

少なくとも、米ドルに対して円安になったから株価が上がるだろうという安易な発想は、どこかでその発想を逆手に取った空売り等に負ける可能性があるでしょう。このように、投資をするに当たって、実質実効為替レートは非常に重要性が高いものといえます。実質実効為替レートに関してのニュースを配信している情報会社としては、GI24、ロイター通信などがあります。また、 DMM FX ワイジェイFX(YJFX!) で口座開設をすると、これらの情報会社のニュースを無料で受け取ることができます。こういった制度も上手く利用してみると良いかもしれません。


◉円安は良い事なのか


最後に、世間一般では円安が良い事と言われる事が多いですが、本当に良い事なのかを考えて終わりにしましょう。輸出業にとって基本的に良いという事に疑いは無いですが、日本の貿易額は2012年度において輸出額が約63.7兆円(GDPの約12.3%)、輸入額が約70.7兆円(13.6%)で、経済に占める貿易の割合は1割強で、圧倒的に内需依存国家です。内需依存国家である以上、輸入品の価格が上がるというのは、財を輸入して加工する企業にとっては損失になりますし、それだけ消費者が安く物を買えなくなるので、経済学的には消費者余剰が下がると言えます。

この数字を見て多くのメディアは「貿易赤字7兆円」と報道するわけですが、貿易統計の結果は本質的に商売の黒字・赤字を表すわけではなく、あくまでも「財を輸出することに対してどれだけの財を輸入できたか」(交易条件)が重要になります(貿易黒字や赤字を重視する見方は重商主義と呼ばれ、現代経済学ではそのような見方をしません)。

交易条件を車と小麦を例に説明すれば、車1台を輸出して小麦が3000トンしか買えないより、車1台を輸出して小麦が4000トン買える方が良いという考え方です。円安になると輸出額が増えるわけですが、安く輸入出来なくなり、同じ量の財を買う為に財がより多く流出するという事になるのです。

日本が内需依存国家である以上、円安で利益が目減りする企業や消費者の実質的な購買力が下がるという問題があるので、円安で輸出の増加で儲かる企業だけを見て円安を喜ぶ事も、また経済の一部分しか見ていないという事になるでしょう。様々な情報を入手し、多様な観点から考察していくことが必要となってきます。


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