数年前までは、大手牛丼チェーンがシーズンを迎えたうなぎ丼をワンコイン、500円で販売していたこともあったが、ここ数年は土用の丑の日になると、毎年のようにうなぎの値上げが話題となっている。

背景にあるのは、漁獲量の減少だ。そのような状況を変えようと、マイクロ投資によるウナギ養殖ファンドが立ち上がった。

絶滅の危機に瀕するうなぎ

水産庁の調べによると、直近10年のニホンウナギ稚魚国内採捕量は、2006年27.5トンをピークに、2013年には5.2トンまで落ち込んだ。

昨年は17.3トンと採捕量が回復したが、半世紀前ほどには200トンを超えていたことと比較するとその激減は明らかで、まさに絶滅の危機に瀕しているともいえる。

実際に、うなぎの蒲焼きの小売価格にも影響が出ており、2010年に100グラムあたり850円ほどだった価格が、2012年には一時1,250円近くまで上昇し、文字通り“うなぎのぼり”の高騰を見せた。

こうした状況のなか、個人からの小口投資、いわゆるマイクロ投資による出資でうなぎ養殖に乗り出す動きも出始めている。

「うなぎ養殖ファンド」応募殺到のワケ

ジャパンマリンポニックス(岡山市)は、マイクロ投資の募集・運営を手掛けるミュージックセキュリティーズと連携して『鳥取境港 うなぎ養殖ファンド』を立ち上げた。

同社は環境保全循環型水産や農林システム販売及び魚の養殖を行う会社で、2012年から養殖実験に取り組み、2014年にうなぎの養殖を始めた。

うなぎは成長が早く8ヶ月ほどで出荷できる大きさとなる上、体積が小さいため水槽内で数多く養殖できるというメリットがある。さらに、価格面での高騰はあっても、国産うなぎの需要には根強いものがある。

同ファンドでは、1万5,000匹のうなぎを養殖できる水槽を製作し、育ったうなぎを販売するというプロジェクトが計画されている。境港市と協力して、『境港うなぎ』として全国へ発信する予定だ。

第1回目の募集時は、約1週間で満額の資金が集まり話題となった。第2弾では資金募集を3月16日から始め9月末までを受付期間としていたが、すでに事業に必要な1,575万円の資金が集まり、募集は打ち切られた。

ここまで人気を集める要因としては、投資の手軽さに加え、投資家に対する特典が手厚いことも挙げられる。

1口の投資(5万2,850円)に対し、特典としてうなぎの蒲焼きが年に一度5年間送付されてくる(計1万2,500円相当)。投資額が4口以上の場合は、うなぎの蒲焼きが年2回に分けられて5年間届くのに加え、境港に併設するレストランでのうなぎ食べ放題(1万円相当)の特典も付いてくる。

こうした魅力的な配当も大きく影響してか、これまでのところ同ファンドには応募が殺到しているという状況だ。うなぎ養殖ビジネスが軌道にのれば、価格も安定し、消費者の財布にも優しいより魅力的なグルメになることが期待できる。

さらにその先には、うなぎを絶滅危機から救うという可能性も秘めているかもしれない。(ZUU online 編集部)