(この記事は2015年4月28日に掲載されたものです。提供: Leeways Online

2014 年の「空家等対策の推進に関する特別措置法」成立に見られるように、全国の空き家率は 13 %を超え(総務省「平成 25 年住宅・土地統計調査」)、不動産オーナーは空室対策に手を焼いている。このような状況のなか、供給が極端に少なく、賃借人がオーナーを探し求めているアセットタイプがあるのをご存じだろうか?コレクティブハウスがそれである。今回はこのコレクティブハウスに焦点を当て、その現状と将来性を探っていくことにしよう。


コレクティブハウスとは

聞きなれない方も多いと思われるため、まずは定義を見てみる。コレクティブハウスとは「独立した各専用個室に加え、住宅内に共用のキッチン、食堂、居間、テラス等の設備、施設があり、居住者はそれらを活用して生活を創り上げていく」というスウェーデンが発祥の賃貸住宅だ。近い概念としては、コーポラティブハウスやシェアハウスがある。


コーポラティブハウスやシェアハウスとの違い

コーポラティブハウスが分譲住宅なのに対して、コレクティブハウスは賃貸住宅だ。またシェアハウスは運営管理者が存在するのに対して、コレクティブハウスは住民による自主運営となる。さらに、シェアハウスは各個室にバスやトイレがないのが一般的だが、コレクティブハウスは専有部内に完備しており、生活は専有部内で完結できる。


設計は自分たちで

コレクティブハウスは賃借人が居住者組合を作り、オーナーとともにスケルトン(構造躯体)から設計に関わっていく。例えば、「洗濯機は 1 日数十分しか使わないので、共用部分に置き場を作ろう」とか、収納についても「 1 年に 1 回しか取り出さないものを専有部分に置くのも無駄だから共用部分にまとめてしまおう」といった内容を決定する。管理区分、修繕区分、資産区分は最初に取り決められ、オーナーと居住者組合の費用負担が決定される。


管理も自分たちで

コレクティブハウスは建物の設計と同様、管理も賃借人が一から決める。管理の内容を居住者組合が決め、管理費は居住者組合がビルメンテナンス会社等に支払う。例えば管理費を下げたいからと自分たちで清掃を行う例もある。最初に決めた管理の内容も、不都合が生じればその都度変えていく。こういった部分は管理会社が管理を行うシェアハウスと大きく異なるところである。


居住者はどのような人か

シェアハウスの入居者は独身の若者に限られる場合が多いが、コレクティブハウスは専有部内で生活の完結が可能なため、 30 ~ 40 代の子育てファミリーを中心に、高齢者や独身女性等、幅が広い。コレクティブハウス内では皆で子育てに協力する雰囲気があり、子供の運動会にコレクティブハウスの皆で応援に行くような例もあるようだ。またコレクティブハウスは全員が顔見知りのためセキュリティが非常に高い。住民の間に問題が起きた場合も住民同士で解決を図るため、トラブルに発展するケースはほとんどないようだ。この部分も管理会社が仲裁する形を取るシェアハウスと異なる。


どのような共同生活をするのか

コレクティブハウスでは、当番制で食事を作りあう「コモンミール」というものが行われる。例えば各入居者が月 1 回、 10 人分程度の食事を作り、事前に予約を入れた人に食事を振る舞う。 10 人分程度なら素人でも作れる範囲であり、 15 世帯ほどのコレクティブハウスでは 2 日に 1 回のペースで食事会が開催されることになる。このように住民たちは普段から顔を合わせながら共同生活をしており、退去者が出た場合も、次の入居者を自分たちで探してくることが多いようだ。


コレクティブハウスの今後

最近では、シェアハウスで出会って結婚したカップルが、それまでのような共同生活が可能な物件が見つからず困っているというケースもあるようだ。このような人たちは共同生活の良さを知っているため、結婚してもコレクティブハウスのような物件に住みたいと思っているが、まだオーナー側の認知度が低いことに加え、コレクティブハウスに対する理解もないことから、都内でもほとんど物件がない。もし空室に頭を抱えているのであれば、コレクティブハウスへのリノベーションも検討の価値がありそうだ。シェアハウスの次のステージの住宅として、可能性を秘めたコレクティブハウスに注目してみたい。

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